激突の瞬間に閃光などの「派手な」シーンはみられませんでしたが、月探査機エルクロスの衝突の瞬間が、本衛星から捉えられていたことがわかりました。
エルクロスは、打ち上げに使われたセントールロケット2段目と、エルクロスの本衛星からなります。打ち上げの約9時間前に両者が分離され、まずこのロケット2段目が衝突、それを本衛星が撮影しつつ、その4分後に本衛星も月面へ激突する、という探査でした。
上の写真は、セントールロケット2段目が衝突してから約15秒後の噴煙の様子です。エルクロス本衛星に搭載された可視光カメラによって捉えられています(なお、画像は3枚重ねの上強調されています)。衝突後、噴煙は6〜8キロ立ち上っているとみられています。
衝突地点を拡大した写真が上の写真になります。
「データをみてこちらが吹っ飛ぶそうになった」と語っているのは、エルクロスの主任研究者であるアンソニー・コラプリート氏です。「エルクロスチームは、このデータを得るために一生懸命になって働き、高い内容を維持している。」
データを捉えたのは、可視光、近赤外のカメラ及びスペクトロメータだけでした。コラプリート氏によると、「衝突によって発生した噴煙が立ち上る様子や、衝突で発生した細かいちりなどがはっきりと捉えられている。放出物の明るさは、我々がモデル計算で予測していたうちでは最も低い方にあたっていて、これは衝突地点がどのような物質でできているのかについての手がかりを与えてくれることになるだろう。」とのことです。
また、衝突の様子は、本衛星に搭載されていた中間赤外線カメラでも数秒にわたって捉えられていました。この中間赤外線は主に温度データを提供するもので、このデータから、どのくらいの衝突地点の温度がどのくらいだったのかを知ることができます。また、可視光スペクトロメータでは、衝突の閃光のスペクトルを捉えています。これで、その地点でどのような物質があり、それが光を放出、あるいは吸収したのかがわかります。
本衛星が衝突するほんの数秒前に、熱・近赤外線カメラが衝突地点のすばらしい映像を送ってきています。これによると、セントールロケット2段目が衝突してできたクレーターは深さが約2メートル、直径28メートルになるということです。
「カベウスクレーター(衝突地点)の底の部分の写真はすごく面白い。衝突でできたクレーターの写真から衝突の過程をさかのぼることができれば、そこから閃光や噴煙がどのようにして出てきたのかを突き止めることができるだろう。」(コラプリート氏)
今後数週間にわたり、エルクロスチームは、本衛星に加え、他の観測データも加えて衝突についての解析にあたる予定です。
・NASA’S LCROSS Captures All Phases of Centaur Impact (NASA: 英語)
http://www.nasa.gov/mission_pages/LCROSS/main/LCROSS_impact.html
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
http://moon.jaxa.jp/ja/topics/LRO/