アメリカ・NASAの月探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が、このほど大変美しい「満地球の出」の撮影に成功し、NASAサイトにてその画像が公開されました。

LROが撮影した満地球の出

ルナー・リコネサンス・オービターが撮影した「満地球の出」。10月12日(アメリカ現地時間)撮影。Photo: NASA/GSFC/Arizona State University

地球の画像の中心点は、アフリカ・リベリア沖の大西洋で、緯度は北緯4.04度、軽度は西経12.44度です。ここまで正確に中心点が出せるというのもすごいものです。
写真右側に大きく写っているのはアフリカ大陸で、特に大陸北部、サハラ砂漠地域が(晴天ということもありますが)よく見えています。また、写真中央の大西洋を挟んで、左側には南アメリカ大陸もみることができます。
一方、月面は、月の裏側にあるコンプトン・クレーターの端が少し写っています。

LROは2009年7月に打ち上げられ、膨大な数の月面の写真を撮ってきました。LROは毎日12回の地球の出を経験していますが、実際のところ、LROの目的は地球をとることではなく月(の表面)をとることですから、こうやって地球の方向にカメラを向けるということはありませんでした。
こうやって地球方向を撮るときの目的は、たいていは非常に薄い月の大気による効果を捉えるためだったりします。従って、これまでせっかくの機会があったのに、このような美しい地球を捉えることがなかなかできていませんでした。

この写真は、コンプトン・クレーターの上空134キロを飛行中の10月12日に撮影されました。LROの月探査カメラ(LROC)により撮影されたのですが、ただ単に「カメラを構えて撮る」という形ではなく、若干複雑な作業を要しました。まず探査機の姿勢を変更し(今回のケースでは67度回転)、次にLROCの狭角カメラで枠いっぱいに捉えるために探査機の姿勢を変更、これを、月上空を秒速1.6キロで飛行しながら行わなければなりませんでした。もっとも、LROはいろいろなケースで姿勢変更はこれまでも行っていますので、事前にしっかりと計画されていれば問題ない作業であったとはいえるでしょう。

また、データの後処理も必要です。そもそも、LROCはモノクロカメラ(白黒のカメラ)です。広角カメラはカラー画像が撮れるのですが、今回は狭角のカメラで挑みました。では、どうやってカラー画像を作るかというと、広角カメラで撮影したカラー画像をもとに、狭角カメラに色をつける、という作業が必要になったのです。
さらに、撮影している間もわずかに地球も月も動いています。狭角カメラと広角カメラ、それぞれで撮影された画像は微妙にずれています。その補正も必要です。このように、複雑な画像処理を経て、ようやく私たちはこの美しい地球の画像を得ることができたのです。

さて、地球の出の写真といえば、この時期、「クリスマスイブの地球の出」の写真を思い浮かべる方も多いでしょう。1968年の12月24日、アポロ8号が撮影した地球の出の写真は、飛行士たちが「はじめに、神は天と地を作られた」という、聖書の「創世記」の一節を読み上げたというエピソードを含め、20世紀を代表する写真、そしてできごととして今でも高い評価を受けています。

アポロ8号の「地球の出」

アポロ8号が撮影した、地球の出の写真。Photo: NASA

またその他にも、1966年のルナーオービター1号でも写真を撮っています。

そして日本人として忘れてはならないのが、日本の月探査衛星「かぐや」のハイビジョンカメラがとらえた、美しい満地球の出の映像です。

「かぐや」がとらえた満地球の出

月探査衛星「かぐや」が2008年4月5日にとらえた満地球の出。出典: JAXAデジタルアーカイブス, © JAXA/NHK

月面から月をみる、ということは、今のところ人類(生身の人間)が地球を眺めることができる範囲としてもっとも遠いところからの地球ということになります。もちろん、いま人類は月面へ到達していません。しかし、いつかは再び人類が月面へ到達し、このような美しい光景を人間の目で捉えることになるでしょう。

NASAゴダード宇宙飛行センターの科学者で、LRO計画の副主任科学者であるノア・ペトロ氏は、「この写真はただただ驚嘆するばかりだ。この写真は、歴史的なアポロ17号の『ザ・ブルー・マーブル』(編集長注: アポロ17号が打ち上げ後に地球を撮影した写真。歴史的な地球の写真として名高い)を思い起こさせるものだ。あの写真も、アフリカがくっきり写っていた。」と、これまで撮られてきた歴史的な地球の写真(でも「かぐや」には言及していませんでしたが)について語っています。

「地球から見れば、月の出と月の入りはいつも美しさが伴う瞬間である。しかし、月にいる宇宙飛行士たちは若干異なった視点から(地球の出・地球の入りを)見ることになる…月の表面からみるときには、地球は決して上ったり沈んだりしない。地球と月は潮汐で一体化していて、常に月は地球と同じ面を向けているので、地球は月の地平線の上、同じ場所にいる。ただ、摂動の効果で若干位置がずれることはある。月では、地球が空を『横切る』ということはなく、ずっと同じ場所にいるというのが特徴的だ。将来月に赴く宇宙飛行士たちは、同じ場所にいる地球が(自転のため)回転していく様子や、地球の上の雲が移り変わっていく様子を眺めることになるだろう(もちろん、月の表側にいれば、という話だが)。空に月や地球がない世界を想像して欲しい…将来月の裏側を探検する宇宙飛行士は、地球の見えない空をみて、何を思うだろうか。」(LROCの主任研究者である、アリゾナ州立大学のマーク・ロビンソン氏)