NASAの月探査機エルクロス(LCROSS: Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)は、昨日(10月9日)の夜(日本時間)、月の水(氷)を探すため、月の南極に衝突するという実験を行いました。実際に月に水が存在するかどうか、科学者がこの衝突によって得られたデータを解析することになっています。
LCROSSは打ち上げから113日間、合計約90億キロにもわたる旅を経て、10月9日夜、月の南極近くにあるカベウスクレーターに衝突しました。ここは、南極付近にある、永久に光が当たらない領域(永久影)にあたります。
LCROSSの主任科学者であり、NASAのエームズ研究センターのアンソニー・コラプリート氏は、「LCROSSの科学機器は完璧に働き、大量のデータを送ってきた。これらは、私たちの隣人、月に対する理解を大幅に増やすものになるだろう。この大量のデータに取り組むことに、私たちのチームはいまからもうわくわくしている。」と語っています。
衝突に向けて、LCROSSと、それに付随するセントールロケットの第2段は、月上空8万6000キロメートルのところで、午前10時50分(日本時間)に切り離されました。秒速2.5キロというスピードで、まずこのセントールロケット上段が、午後8時31分(同)に月面に衝突。これを、LCROSS本衛星が観測しました。その後、この本衛星自身も、午後8時36分に月面に衝突しました。
「今日は、科学と探査にとってすばらしい日だ。」こう述べたのは、NASA本部の探査システムミッション本部の副部長であるダグ・クック氏です。「LCROSSの探査により得られたデータは、今後数週間にわたる解析を通して、私たちの月に対する理解を大きく変えることになるだろう。LCROSSのチームに対して、そのすばらしい成果に対して心より祝辞を申し上げたい。そして、探査機を低予算で開発し、技術的な困難と運用上の挑戦をいくつも乗り越えたことを賞賛する。」
LCROSSの本衛星、およびセントールロケットの衝突については、他の観測所でもとらえていました。このデータは、LCROSSの科学チームと共有して、解析が行われることになります。LCROSSチームでは、月の表面に氷があるかどうか、詳細な解析にあと数週間かかると見込んでいます。
LCROSSの探査主任で、NASAエームズ研究センターのダニエル・アンドリュース氏は、「LCROSSチームが探査を成功裏に成し遂げたことを誇りに思う。何か障害に突き当たったときも、チームはそれを乗り越えるための手段を考え、最終的に探査を成功に導いた。」
アマチュア天文家や一般の人たちが撮影した写真や映像なども、今後月に関する知識を増やすために使われることになるでしょう。
「探査の早期の目標として、できる限り多くの人々が、できる限り多くの方法でLCROSSの衝突を眺めるということがある。そして、それは成功した。」と、LCROSS観測キャンペーンを展開していたエームズ宇宙センターのジェニファー・ヘルドマン氏は述べています。「いくつもの確認情報があり、それがこの大イベントをより魅力的なものにしている。」
アンドリュース氏はこうも述べています。「LCROSSが探査計画として選定された2006年から考えると、信じられないほど長い旅路だった。LCROSSチームは、野心的なスケジュールと信じられないほどの低予算で、この探査を実施した。LCROSSは、これからどのように小型の無人探査を実施していくべきか、よいモデルとなるだろう。これはまさに、小さな予算で得られた大きな科学成果なのだ。」
・NASAのプレスリリース (英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/oct/HQ_09-236_LCROSS.html
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
http://moon.jaxa.jp/ja/topics/LRO/