NASAのエルクロス(LCROSS)チームは、このほど、LCROSSを衝突させるクレーターについて、従来発表していたカベウスAクレーターから、カベウスクレーターへと変更することにしたと発表しました。
この決定は、LCROSSの科学チームからの助言、衝突現象の専門家、天文学者などからのアドバイス、地上からの観測者、宇宙望遠鏡の観測者、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)、ルナー・プロスペクター、チャンドラヤーン1、かぐやの観測結果などを考慮に入れて行ったものです。また、カベウスクレーター領域に水素が濃集しているという最新のデータ(LROとルナー・プロスペクターによる)もこの決定を後押ししています。
LCROSSの科学チームがまとめた月科学者グループの結論では、カベウスクレーターには、南極地域でもっとも水素が濃集しているという可能性が極めて高いことがわかってきています。かぐや及びLROが取得した地形データもこの決定に重要な役割を果たしています。これらの観測から得られたデータによると、小さな谷がカベウスクレーター周囲の盛り上がった場所に存在しており、そこから光が差し込んで、衝突の際のちりを照らす可能性があるということです。地球から舞い上がったちりが観測されるためには、ちりがかなりの高さまで上昇する必要がありますが、カベウスクレーター周囲の山により、非常によいコントラストが得られ、最適な条件で観測ができるということです。
以上のことから、LCROSSチームでは、カベウスクレーターの衝突がLCROSSとしてもっとも良い成果を得られると結論づけています。この結論は、月前哨無人探査プログラムオフィス (LPRP: Lunar Precursor Robotic Program Office)からも支持されています。また、最新のLCROSSの軌道変更にも反映されました。
LCROSSチームでは、今後も衝突ぎりぎりまで検討を進め、条件がもっとも良くなる場所へ衝突させるようにする予定です。
(編集長注)
昨日の記事にも多少書きましたが、カベウスクレーターは南緯84.9度、経度325.5度にあり、直径は98キロあります。
・LCROSS (NASA: 英語)
  http://www.nasa.gov/lcross
・ルナー・リコネサンス・オービタ/エルクロス (月探査情報ステーション)
  http://moon.jaxa.jp/ja/topics/LRO/