アメリカの月探査機、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が取得したデータのうち、最終版が3月15日に公開されました。
今回で5回目となるこのデータ公開では、観測の生データに加え、高次データと呼ばれる、科学的な処理を加えたデータ(モザイク画像など)も公開されています。データ量は192テラバイト(DVD-ROM約41000枚)以上にものぼり、もちろんこれまで月で得られたデータ量としては最大のものといえるでしょう。
今回のデータ公開で特に注目されるのが、LROに搭載されたカメラが撮影した画像を元にした、解像度100メートルの全球地図です。この地図は太陽高度が低いときの画像を使って製作されたので、地形がくっきりとわかるようになっています。この図は、最高の解像度では34748×34748ピクセルという超高解像度のもので、容量は1.1ギガバイトにも達します。
LROの探査科学者であるNASAゴダード宇宙センターのリチャード・ボンドラック氏は、「LROについては、観測している対象が月であり地球に近いこと、また専用の受信局を持っているおかげで、これほど膨大なデータを手に入れることができた。ほかの月・惑星探査で得られたデータすべてを上回る量のデータだ。」と述べています(編集長注: マーズ・リコネサンス・オービターのデータも相当量ですが、私自身は比較はできていません)。
LROに搭載されている月放射測定実験 (Diviner)が観測したデータでは、月表面の可視光、および赤外線での観測データが得られており、表面温度、岩石の種別、夜間の土壌温度や鉱物分布などを知ることができます。このデータは1700枚以上の地図として提供され、ほかのデータとの重ね合わせも簡単にできるようになっています。
また、同じくLRO搭載のライマン−アルファ線マッピング装置 (LAMP) のデータでは、極紫外線による新しい観測データ、アルベド(反射率)や氷の存在のデータなどが新たに公開されています。
レーザー高度計では、34億点ものデータがすでにマッピングされていますが、このデータを利用して、月面の傾斜、粗さ、輝度などについて新たに地図として提供しています。
LROの公開データは、現時点で基本観測期間である2009年9月15日〜2010年9月15日の分すべてが公開されており、これらのデータは「惑星データシステム」(PDS: Planetary Data System)などを通じてダウンロード、あるいは取得することができます。
・NASAのプレスリリース(英語)
http://www.nasa.gov/home/hqnews/2011/mar/HQ_11-076_LRO_Data.html
・月面データの検索サイト (ワシントン大学セントルイス校・PDS惑星地質学部門)
http://ode.rsl.wustl.edu/moon/indexProductSearch.aspx
※研究者向けです。
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/history/LRO/