NASAは、月探査機ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)を、現地時間6月18日午後5時32分(日本時間19日午前6時32分。以下同)、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、アトラスVロケットにより打ち上げました。
LROはロケット、およびロケットとつながっているエルクロス探査機(LCROSS)から分離されました。LROの太陽電池パネルは午後7時40分(午前8時40分)に展開されていることが確認され、現在オペレーションチームは初期チェックアウト(確認)および最初の軌道修正に向けての準備を進めています。LCROSSとの通信が確立できるのは午後10時半頃(午前11時半)頃になるとみられています。
「今日はNASAにとって重要な日だ。月においてこれまでないような発見の日が訪れることを心待ちにしている。LROは、私たちの将来探査について役立つ情報を送ってくれることになる。」(NASAの探査システムミッション部の副部長、ダグ・クック氏)。
探査機は高度50キロという低高度の極軌道に配置されます。探査は1年間の予定です。LROが搭載している機器は、科学者が3次元地図を作成したり、様々な光の波長により月表面を調べたりするのに役立ちます。探査機は月でもっとも深いクレーターや、極地域にある永遠に光が当たらないクレーター、そして逆に、光が当たり続ける領域も探査します。さらに、月周辺の放射線環境を調べ、人間への影響を調査します。
「私たちの仕事は、7つの強力な探査機器により、月表面を偵察することだ。NASAは、LROが集めたデータを使って、将来有人月探査を行う際の月面車や基地システムのデザインを行い、また月面基地の場所についての選定も行うことになるだろう。」(LROの探査責任者である、NASAゴダード宇宙センターのクレイグ・トゥーリー氏)
LROの高解像度カメラにより、将来の探査における着陸点の選定を行うことができ、また月の地形や表面の鉱物組成などを調べることができます。月の極地域に水素が集まっている場所があるかも知れませんが、それらを詳細に調べることで、極地域に水が存在するかも知れないということを調べることができます。小型のレーダーシステムを使って、極地域の写真を得ることができるほか、通信方法の試験も行えます。
「60日間の初期試験期間中に、探査機の機器の電源を入れ、初期試験を行う。すべての機器の電源は打ち上げから2週間以内に入る。来月には、私たちは月を、これまでにない精度で見ることになる。」(LROの副探査責任者であるゴダード宇宙センターのキャシー・ペディー氏)
「アポロ計画から、私たちは月について多くのことを学んだ。しかし、いまこそ私たちは月に戻り、より詳細にいろいろなことを調べなければならない。それを、LROで行うのだ。」(LROの探査科学者で、ゴダード宇宙センターのリチャード・ボンドラック氏)
LROの初期データセットは、6ヶ月以内に、NASAの探査データアーカイブシステムであるPDS(Planetary Data System: 惑星データシステム)に保管され、誰でもアクセスができるようになる予定です。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2009/jun/HQ_09-142_LRO_Launch_Success.html
・NASA LROのページ (英語)
  http://www.nasa.gov/lro
・NASA LCROSSのページ (英語)
  http://www.nasa.gov/lcross
・ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/LRO/