日本地震学会のウェブサイトに、ルナーA計画が中止されたあとのペネトレーターの開発状況についての記事が掲載されています。
宇宙科学研究所でペネトレーターを開発していた、藤村彰夫、田中智、白石浩章各先生をはじめとした人たちによる記事です。
この記事の中では、ルナーA計画が中止された2007年1月以降のペネトレーターの開発状況が詳細に解説されています。それによると、ルナーA計画中止後もペネトレーターの開発は継続されました。一方ではロシアの月探査機「ルナグローブ」に搭載するという打診がロシア側からあり、2012年打ち上げを前提として搭載への開発継続を決断。2008年2月25日、アメリカ・ニューメキシコ州のサンディア国立研究所での最終確認試験が行われました。
ところが、本来確認の場となるはずであったこの試験ではペネトレーターとの通信ができなかったばかりか地震計にも異常がみられ、とても満足できる内容ではありませんでした。
この試験の失敗の原因を調査した結果、充填剤の不良やハンダ付けの方法などの問題がみつかり、この改良を施した機器を2010年8月に同じサンディア国立研究所で試験。この試験は、もしこれに失敗したら開発が中止されるという、まさに「背水の陣」だったとのことです。
結果として試験に使われた2機の機体には異常がなく、20年に及ぶペネトレーターの開発はこれをもって一つの大きな区切りとなります。
しかし、開発が長引いてしまったことにより、ルナグローブ計画には搭載が間に合わなくなり、ロシア側からは、その次の月着陸・帰還探査に搭載を提案するよう助言されました。
また、規模を小さくしたものを工学実証試験として実施する可能性や、災害時の地震・火山観測への応用の可能性などの検討も始まりました。
・日本地震学会の記事
  http://www.zisin.jp/modules/pico/index.php?content_id=2316
・ルナーA計画 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/LUNAR-A/
・ルナグローブ (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/topics/Luna-Glob/