純粋な民間資金によって月着陸機を開発し、月面に到達させることができたチームに賞金を授与するという月到達レース「グーグル・ルナーXプライズ」について、その到達の期限が1年延長されることになりました。本競争を主催するXプライズ財団が16日に発表しました。
同時に、現在参加している18チームのうち、少なくとも1チームは2015年末(つまり、延長される前の期限)までに打ち上げに向けたスケジュールを記した文書を提出しなければならない、としました。つまり、1年期限は延期するが、開発をそれによって遅らせるな、という意味です。
グーグル・ルナーXプライズは、宇宙開発分野における革新的な技術開発を生み出すことを目的に設定された、月面到達競争です。期限までに月面に到達し、所定のミッションを達成したチームに賞金を授与する、という大きな目標を掲げることで、民間分野での宇宙開発を促進し、将来的なビジネスへとつなげていくということが、このレースの大きな目的です。
具体的には、期限となる2016年末までに月面に着陸機を送り込み、月面でその着陸機に搭載されたローバーを500メートル以上走行させ、月面の高解像度の写真または動画を地球に送信することができた最初のチームに対し、2000万ドル(日本円で約24億円)の賞金を授与するというものです。他にも様々な追加ミッション達成に対して賞金が与えられます。
さて、Xプライズ財団では、月面に行く前に、技術的に優れているチームを選び、その進捗に対して表彰するとともに賞金を授与するという「中間賞」(マイルストーン賞)を授与することにしています。2014年9月にアナウンスがありましたが、この中間賞をもらえるチームとして、18チームのうち5チームがアナウンスされています。この5チームは以下の通りです。
- アストロボティック (アメリカ)
- ハクト (日本)
- チーム・インダス (インド)
- ムーン・エクスプレス (アメリカ)
- パートタイム・サイエンティスツ (ドイツ)
日本から唯一参戦している「ハクト」がノミネートされているというのは非常に注目されますし、また日本人としても(日本の月・惑星探査関係者としても)うれしい限りです。
この中間賞は最大600万ドルにも達するというもので(つまり、優勝賞金の3分の1にも達する)、それ自体非常に魅力的な賞です。
中間賞の発表は2015年1月26日、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコにある、カリフォルニア科学アカデミーで発表されます。ただ、既に賞金は一部授与が決まっています。アストロボティックチームには、移動部門で50万ドル(日本円で約6000万円)、写真・動画撮影部門で25万ドル(日本円で約3000万円)が授与されます。ただ、そのほかについてはまだ発表を待たなければなりません。
今回の中間賞の目的の1つは、賞を授与することによって開発資金を提供することにあります。もちろん、賞金自体も重要な開発資金となりますし、受賞したチームであれば技術力にもお墨付きが与えられるわけですから、投資を呼び込めるという点も重要です。
この点について、Xプライズ財団副総裁であるロバート・ワイス氏は、「我々が各チームに求めている目標は非常に困難であるということは私たちもよく承知している。この困難さというのは技術的な面だけではなく、資金確保などの経済的な側面にも当てはまる。私たちは、このグーグル・ルナーXプライズで得られる最大の成果は、低コストでの月へのアクセス手段であると固く信じている。」と、その目標について経済的な側面も絡めながら述べています。
受賞チームの選定について、この選定パネルの座長であるデビッド・スワンソン氏は、「宇宙開発というのはいうまでもなく無数の挑戦から成り立つものである。各チームの熱意とチームワークは互いにどこにも負けないものであるが、最終的に勝利するのは優れた技術である。その意味で、アストロボティックが移動部門と写真・動画撮影部門で受賞したというのは素晴らしいことであり、さらにこの先、中間賞の栄冠を授けることになるチームが出ることを楽しみにしている。」と語っています。