昨日打ち上げられたアストロボティック社の月着陸機「ペレグリン」が、推進剤が漏れ出すというトラブルに陥っています。推進剤の大半が漏れ出してしまった模様で、このままですと月面着陸が困難となる可能性があります。

商業月輸送プログラム1号機の打ち上げ

商業月輸送プログラム(CLPS)1号機となる、アストロボティック社の着陸船「ペレグレン」の打ち上げ。
Photo: NASA/ULA

1月8日午前2時18分(アメリカ東部標準時。日本時間では同日午後4時18分)に打ち上げられた月着陸機「ペレグリン」は、ロケットから無事分離され、打ち上げは成功しました。しかしその後、着陸機から推進剤が大量に漏れ出すというトラブルに遭遇しています。

アストロボティック社では自社のX (旧・Twitter)で状況を随時伝えています。時系列でそのポスト(ツイート)を順次貼っていきましょう。

これを追いかけていきますと、以下のようになります。

  • ロケットからの分離後、着陸機からの信号を確認。着陸機のシステム全体が正常であることを確認した。しかし、何らかの原因によって、太陽方向を着陸機が指向できない(=太陽光での発電ができない)ことが確認される。(#1)
  • 一時通信ができなかったが、姿勢を回復することで通信回復に成功。根本原因として燃料系に何らかの不具合があるとの推測に達する。(#3)
  • 調査の結果、推進剤が大量に漏洩していることが判明。「現時点で考えうる代替ミッションの可能性を追求する」(#4)
  • 燃料漏れの結果、着陸機の姿勢を安定させることができていない。現時点の燃料消費量から推測すると、姿勢安定が可能なのはあと40時間。現時点で可能なのは、ペレグリンの燃料が枯渇するまでにできうる限り月へと近づけること。(#6)

ペレグリンから(原因は不明ですが)大量の推進剤が漏洩、このため探査機の姿勢が不安定となり、太陽方向を向けられなくなりました。
そのため、太陽電池での発電ができなくなり、通信が不安定になるだけではなく、探査機の機能全体にも深刻な影響が生じています。

さらに、推進剤は探査機の姿勢安定だけではなく、月周回軌道投入や月面着陸の際にも使用されます。このために必要な燃料が失われたことで、ペレグリンの月面着陸の可能性は非常に厳しくなってきたと考えられます。#4や#6の文面をみても、代替ミッションの可能性(すなわち、月面着陸以外でこの月着陸機を何らかの形で役立てること)を想定するなど、極めて困難な状況に陥っていることがわかります。

願わくは、できるだけ早く推進剤漏出の原因を突き止め、それを停止させることなのですが、それができたとしても、残った燃料が月面着陸ミッション達成に十分かどうかは不明…というよりは悲観的です。

ただ、なにせ相手ははるか彼方の宇宙空間にある物体です。状況をそう簡単につかむことはできません。
もどかしいのは私(編集長=寺薗)も同じですが、いまは状況の好転を祈りつつ、情報を待ちましょう。