「月面基地」というと、人間が常駐して活動しているものを想像しますが、中国では現在、無人の月面基地についての検討が活発に議論されているとのことです。新華社のニュースを人民網日本語版が伝えています。
記事によると、この議論が行われたのは、23日に上海で開催された第7回「宇宙技術革新国際会議」という会議の場だそうです。発表者は国家航天局月探査・宇宙事業センターの責任者とされていますが、名前などは(少なくとも人民網日本語版の)報道には出てきていません。
この記事では、検討されている無人月面基地は、エネルギーを長期にわたり供給できる前提で、「自主的に運用できる無人月面インフラ」(記事ではこれがどのようなものなのかについては言及されていません)のもとで、ロボットなどが作業を行えるような環境を目指しているようです。
中国の月探査についてもう一度おさらいしておきましょう。
中国は、月探査(無人)を3段階に分けて進めようとしています。第1段階が周回探査、第2段階が着陸(ローバー)探査、第3段階がサンプルリターンです。
第1段階はすでに終了し、現在は第2段階(嫦娥3号)が進行しています。本来であれば今年中に第3段階に当たるサンプルリターン機「嫦娥5号」が打ち上げられる予定でしたが、ロケットの不具合などにより来年前半に延期されています。そして、第2段階の次のステップとなる嫦娥4号は、世界初の月の裏側への無人着陸を果たす構想となっています。
この無人探査が終了した先には、おそらくは有人探査、つまり月面基地を作って人間(=中国人)が常駐し、月面での活動を行うことが想定されます。しかし、月面基地を作る前には、人間が安全に(そしてできれば快適に)過ごすことができるかどうかと行った詳細な検討が必要となるでしょう。
おそらく今回の無人月面基地は、この「無人」から「有人」への橋渡しを行うことを想定したステップ、さらにいえば、この無人から有人へのステップが非常に大きいことを中国が認識して、その中間ステップを踏むことを検討しているとも捉えることができるでしょう。
記事中にも、嫦娥3号における月面活動の実績が書かれていて、中国としては自国の月面でのロボット運用についてかなり自信をみせているようにもみえます。
世界的にも月面基地、あるいは月上空の有人基地(ディープ・スペース・ゲートウェイ、あるいは「深宇宙ゲートウェイ」構想)の検討がアメリカを中心に進められており、日本もそれに参加するかもしれない、という記事も出ていますが、一方で中国は月面基地について比較的「正直に」検討している(つまり、過去の探査を踏まえた上で、しっかりとした技術検討を行っている)ことが、この記事の内容からも伺えます。
日本としてこれから月探査をどのようにしていくのかを考えるときには、他国の状況を踏まえて検討することが必要で、このような中国の姿勢も踏まえていくことが必要でしょう。