中国宇宙当局は、12月2日午前1時半(中国標準時。日本時間では午前2時半)、月探査機「嫦娥3号」を、四川省にある西昌衛星発射センターから打ち上げました。打ち上げ後ロケットは探査機を無事切り離し、打ち上げは成功しました。打ち上げ成功については中国中央テレビ(CCTV)が伝えているほか、新華社など中国の報道機関は大々的な特集を組み、探査機についての情報を提供しています。

嫦娥3号

四川省・西昌衛星発射センターから、長征3Bロケットで打ち上げられた嫦娥3号 (新華社)

衛星は現在、近地点(地球にもっとも近い点)200キロメートル、遠地点38万キロ(これは地球と月との距離に相当します)の月遷移軌道に乗っており、計画通り進んでいるとのことです。

宇宙センターの打ち上げ担当者である張振中(Zhang Zhenzhong)氏は、「この打ち上げは『宇宙への夢』という、中国再生の夢の1つを大きく飛躍させることになるだろう。」と高らかに宣言しています。

中国科学アカデミーは今回の打ち上げに際してマイクロブログ「微博」(編集長注: 記事では「微博」とは書いてありませんが間違いないでしょう)にアカウントを特設し、26万人以上のフォロワーがお祝いのメッセージを投稿したとのことです。

このあと嫦娥3号は月面着陸、それも無人での着陸という極めて難しいミッションをこなしますが、これについて月探査プログラムの総設計師である呉偉仁(Wu Weiren)氏は、「中国が月面のその場観測を行い、かつ月面探査を行うための第一歩となる」と述べています。また、ウー氏は、嫦娥3号の開発に際して、80パーセントの技術が新規開発であると述べています。

嫦娥3号は、このあと月面「虹の入り江」に着陸し、着陸機と、「玉兎」と名付けられたローバーとで、月面探査を行います。成功すれば、アメリカ、旧ソ連に続いて、月面への着陸(無人着陸)を果たした3番目の国となります。ローバーは月面の物質の組成や構造の探査が主な任務となります。資源探査も目的となっているようです。
着陸機には望遠鏡が装備され、月面探査を実施することになっています。

嫦娥3号の総設計技師である孫沢州(Sun Zezhou)氏は、この月探査プログラムが、科学的な面だけでなく経済的な面でも非常に大きな重要性を持つと指摘しています。

嫦娥3号の打ち上げは、中国の第2段階の月探査が開始されたことを意味します。
中国はこれまで、嫦娥1号、嫦娥2号によって、月周回探査という「第1段階」を達成してきました。嫦娥3号によって、月面に着陸して探査を行うという「第2段階」へと突入しました。これは、次の(2015年に打ち上げられるとみられている)嫦娥4号にも引き継がれます。
このあと、2017年打ち上げとされている嫦娥5号、そして2019年打ち上げとみられている嫦娥6号が、月面からのサンプルリターンを狙う「第3段階」を担うことになります。

この第2段階に関する副総責任者となっている孫輝先(Sun Huixian)氏は、この第2段階が成功すれば、中国は月面における探査能力を手にすることができると述べた上で、「私たちの目標は月で止まることがない。目指すのは深宇宙だ。」と述べています。これは、将来的には火星、小惑星などへの飛行に乗り出す意志の現れと考えてよいでしょう。

新華社の記事では、中国は有人飛行を含む様々な宇宙開発分野で成果を上げてきているものの、未だこの分野では「新参者」であり、中国の科学者は宇宙科学、宇宙探査での協力を、とりわけ隣国のインドと行いたいと考えていると述べています。

中国月探査プログラムの副総指揮者である李本正(Li Benzheng)氏は、中国は宇宙探査について競争をあおるものではないと述べています。「月探査計画に関しては私たちはオープンな姿勢をとっている。私たちは宇宙探査を推し進め、さらには人類の発展のために宇宙資源の利用を行えるようなことを期待している。」(編集長注: ただ、このリー氏の発言を見ると、中国の宇宙開発の目的が、月、あるいは小惑星など天体の資源である可能性が高いことがわかります。)

【12月2日午後2時20分】漢字表記を入れて改訂しました。

  • 新華社の記事 
[英語] http://news.xinhuanet.com/english/china/2013-12/02/c_132932922.htm
  • 新華社の嫦娥3号特集 [英語] http://www.xinhuanet.com/english/special/change3/
  • 人民網日本語版の嫦娥3号特集
    http://j.people.com.cn/95952/206655/208856/index.html
  • 嫦娥計画 (月探査情報ステーション)
    https://moonstation.jp/ja/history/Chang_e/