有志団体TNLが主催し、東海大学建築学部十亀研究室などが支援する賞「宇宙建築賞」の第3回入賞作品が決定しました。
宇宙建築賞は、宇宙における建築についての技術及び認識を深めてもらうことを目的として、2014年より実施されているコンテストです。2015年度からは運営をTNLが引き継ぎ、東海大学の十亀昭人(そがめあきと)准教授の指導のもと実施されています。
審査員には、宇宙飛行士の山崎直子さん(特別審査員)を含め、建築、宇宙科学、宇宙技術などの専門家が加わり、それぞれの視点からの審査を実施しています…実は、編集長(寺薗)も審査員の1人です。

今年のテーマは、月の竪穴、そしてそこへの居住ということで、お題は「UZUMARCH」でした。

第3回宇宙建築賞のテーマ「UZUMARCH」

第3回宇宙建築賞のテーマ「UZUMARCH」 (© TNL/東海大学十亀研究室)

これまで2回の宇宙建築賞とは異なり、今回は前提となるストーリーが設定されており、「10家族が23世紀に月の縦穴に暮らし、地球再生に取り組む」という前提のもと、建築だけでなくストーリーも提示するというかなり大胆な内容になっています。

ストーリー性も含めるという点でかなり困難な部分があったためか、今回はこれまでと比べて応募作品が少なく、全体で21作品の応募がありました。これらを11月27日、東海大学での最終審査会で審査し、最優秀作1点、優秀作5点を選びました。審査員メンバーは以下の通りです(以下、審査員、受賞者を含め敬称略)。

  • 岩岡竜夫 (建築家/東京理科大学理工学部建築学科教授) 審査委員長
  • 春山純一 (JAXA宇宙科学研究所)
  • 寺薗淳也 (会津大学/月探査情報ステーション)
  • 大貫美鈴 (スペースフロンティアファウンデーション アジアリエゾン代表)
  • 佐々島暁 (日本防災研究所)
  • 佐藤実 (東海大学清水教養教育センター)
  • 山崎直子 (宇宙飛行士) 特別審査員

以上のメンバーによる厳正な審査の結果、最優秀作1点、優秀作5点は以下のとおりとなりました。

最優秀作

LUNA’S ARK (坂本陽太郎、竹村健司、四宮駿介、温興文、Patcha Pornpragit)

優秀作(5点)

  • PEACE PLANET project
    中島真理、新井真由美、村川恭介、スティーブ・ヒル、鈴木理之
  • 天上の竹 (ちきゅうのいのち)
    河部卓也、峯村颯、西崎晃平
  • Moon Cavern CELL’ 92
    鈴木晶雄、岡崎雄、佐藤大海
  • 月の華
    澁谷翔、菅野智之、菅原祐也
  • 宇宙銀座商店街
    小林寧々、富田夏乃子、湯口真代

また、一般審査によって選ばれる「TELSTAR賞」は、「海月 -KURAGE-」(岡本俊英、佐野航、大澤真生子)が選定されました。

今回、皆様にはぜひ作品をじっくりみていただきたいという観点から、あえて作品の画像はここに出しておりません。ぜひ下のリンク先のページヘ飛び、1つ1つの作品をじっくりと眺めていただければと思います。

審査員の立場として、今回の選考は非常に大変でした。月という、私たちがすでに足を踏み入れ、膨大なデータが存在し、距離が「たった」38万キロしか離れていない天体での建造物ですから、比較的似たような形の提案が集まるかと思っていたのですが(例えば昨年のように、木星の衛星ガニメデ上の建造物となると、もとのデータも少ないですから相当難儀したのではないかと思います)、実際蓋を開けてみると、多種多様なアイディア、そして非常に多様な視点からの提案が集まっており、私の事前予想はいい意味で裏切られました。
そして、審査も白熱し、審査員の長時間にわたる議論によって、ようやく上記作品が選出されたということをお伝えしておきます。なお、各賞のページには各審査員による講評も書かれています。この講評も合わせてお読みいただくと、月の世界への理解がより深まるのではないかと思います。

今回の名前「UZUMARCH」は、月の縦穴を探査する構想「うずめ(UZUME)計画」からとられたものですし、その代表は、日本の月探査機「かぐや」のデータにより、世界ではじめて月に縦穴を発見した春山純一さん、つまり今回の審査員の1人でもあります。
しかし、いずれの作品も、ただ縦穴に住むというだけではなく、拡がりのあるストーリーを展開していて、非常に楽しく、また審査員も得るところが多くありました。

おそらく来年度も「第4回」の宇宙建築賞が開催されると思います。我こそはという方、来年はぜひ応募されてはいかがでしょうか。月探査情報ステーションでも、募集開始などのアナウンスをしていきますが、まずは柿のTNLのページをチェックしていってください。
皆様の挑戦を、編集長もお待ちしております。