新たなる航海が始まります。
4年前に活動を休止し、解散していた日本惑星協会は、本日より新たな陣容にて再スタートを切ることになりました。

この日本惑星協会ですが、その大本は、1980年にアメリカで設立された惑星協会(The Planetary Society。TPSと略す)から始まります。
当時はボイジャーによる木星・土星探査が世界的なブームを巻き起こしており、月・惑星探査の機運が大いに盛り上がった時期でした。
そんな中、これらアメリカの月・惑星探査、とりわけ火星探査を主導し、書籍・テレビ番組「コスモス」で月・惑星探査を一般の人に広く知らせたカール・セーガン博士、NASAジェット推進研究所所長も勤め、月・惑星探査の最前線を知り尽くすとともに、市民への惑星探査への参加を強く訴えていたブルース・マレー博士、JPLで数多くの惑星探査に従事してきたルイス・フリードマン博士の3人により設立されました。

惑星協会設立時の写真

惑星協会設立時の写真。中央に写っているのがカール・セーガン氏、その左隣、青いシャツを着ているのがマレー氏 (Photo: Wikipedia)

TPSはこの3人の創設者のほかにも数多くのアドバイザーを迎え、活動を活発に行ってきました。現在では世界全体に活動の輪が広がっており、会員数は10万人ともいわれています。
活動内容も多彩で、月・惑星探査の最新情報を伝える会報「The Planetary Report」(英語ではありますが、プロジェクトマネージャーや高名な学者などが執筆し、非常に質の高い記事を読むことができます)の発行、インターネットサイト、とりわけブログによる極めて質の高い月・惑星探査情報の発信や解説、アメリカ政府や議会に月・惑星探査の推進を求めるための運動の実施などを行ってきました。そして特筆すべきは自らもミッションを提案・実現させるということで、今年5月にも、光の圧力で推進する機構を持つ「ライトセール」(LightSail)の打ち上げに成功しました。

さて、日本惑星協会(以下TPS/J)は、このようなTPSの理念を受け継ぎ、1999年に設立されました。ちょうど火星探査機「のぞみ」が旅立った翌年にあたります。
TPS/Jは特定非営利活動法人(NPO法人)として、探査の推進や宇宙開発、月・惑星探査についての情報の普及・啓発、さらには「星の王子さまに会いに行こう」キャンペーン(「はやぶさ」打ち上げ時の名前搭載キャンペーン)など、JAXAのミッションとも協力しながらの活動など、幅広い活動を行ってきましたが、諸般の事情により活動が難しくなり、2011年に会は活動停止となりました。
活動停止は2011年7月20日。そこから4年を経て、新たなる日本惑星協会がスタートします。

新生・日本惑星協会は、単にこれまでの日本惑星協会の活動を引き継ぐだけではありません。その間の日本の惑星探査の進展や日本の宇宙開発体制の変化をにらみつつ、将来的には日本の宇宙開発機関への提言や政府への要望、様々な専門を持つ研究者同士の橋渡しなど、「私たち自身で月・惑星探査の成果をつかみとる」ことを目指す団体として活動していきます。

本会につきましては、会長として、JAXA宇宙科学研究所名誉教授であり、現『ニュートン』編集長でもある水谷仁(ひとし)博士が就任します。水谷先生は、実は私の宇宙科学研究所における学生時代(大学院)での指導教員であり、その後のNASDAとの共同月探査計画(後の「かぐや」)でもずっとご一緒してきた先生です。
また、岩波ジュニア文庫『宇宙人はいるだろうか』など、普及啓発活動にも力を注いでこられました(何よりも、いまの『ニュートン編集長』という立場がその活動でもあります)。

また、本会は会の運営について助言・提言する、カウンシラー(評議員)というメンバーがおります。カウンシラーは本日時点で32名で、幅広い分野からの研究者はもちろん、長年宇宙好きとして情報発信を続けてきた方や、宇宙とはやや離れる分野の研究者、メディア関係者など、極めて幅広い人材から構成されています。
私(寺薗)もカウンシラーの1人として、会の運営に貢献いたします。

事務局は、事務長が井本昭さん、そしてその下に、経験豊富な7名のスタッフが就任します(非常勤)。
また新生・惑星協会では、インターネットにおける広報活動を重視し、特別に「ITメディア事業推進室」を設置します。本事業室は事務長が室長を兼任し、コーディネータが、JAXAの月・惑星探査のイラストで有名な池下章裕さん、そしてこれまでインターネットでの情報発信で深い経験と実績を持つ6名のスタッフ(非常勤)が就任します。

月探査情報ステーションは、この日本惑星協会の理念に全面的に賛同するとともに、その活動が日本惑星協会の活動に貢献するものと考え、日本惑星協会の活動に全面的に協力するとともに、一体となって両者の活動を進めていくよう、今後調整を図っていきたいと考えています。具体的には、ウェブ上での記事のやりとりや、新たなるコラム、メールマガジンの執筆などを通じ、より多くの人に良質な月・惑星探査のコンテンツを届けることを使命とし、他のメディアや個人、団体と協力しつつ、新たな体制の構築を検討、実施していきます。
もちろん、月探査情報ステーション自体がなくなるわけではなく、あくまで、新生・日本惑星協会を中心として、ちょうど自転車のスポークのように様々な活動が結びついているようなイメージを想像してみて下さい。

なお、本会ではともにこの壮大なプロジェクトにを推進し、あるいは賛同してくださる個人や企業、団体を募集いたします。また、会員募集も行いますが、9月1日からの予定です。詳細が確定し次第ウェブサイトでアナウンスいたします。もう少々、お待ち下さい。

新たなる航海が、始まります。皆さん、一緒にはるかなる世界への旅に出ましょう!