先日発表されたアメリカの新しい宇宙輸送システムの構想に対し、アメリカの新宇宙探査などを支援している、スペースフロンティア財団(SSF: Space Frontier Foundation)が、「巨大ロケットを温存するものだ」と異議を唱えています。
スペースフロンティア財団が9月15日(アメリカ現地時間)に発表したブログ「お化けロケットがアメリカ宇宙計画をだめにする」(Monster Rocket Will Eat America’s Space Program)の中で、「民間宇宙船を活用し、長期的に探査コストを下げようという革新的な方針は、結局、どん欲で偏狭な視野しか持たない一部の議員による、『巨大ロケットを政府(NASA)で作る』という方針に取って代わられてしまった。」と不満を表明しています。
そして、先日発表されたNASAの新しい輸送システム(Space Launch System: SLS)について、「あれはフランケンシュタインロケットだ。サターンVの栄光の色彩をまとおうとしているが、結局のところそれは議会からの援助に基づく古くさい代物に過ぎない。このロケットが予算を食いつぶして、NASAの有人宇宙飛行プログラムや科学技術探査プログラムをことごとく壊してしまうのではないか。」と懸念を表明しています。
さらに、この新しい宇宙輸送システムはSenate Launch System(「上院」輸送システム)だとして、議会における議論の過程を強く批判しています。ブログの最後はこう結ばれています。
「『上院』輸送システムは破綻するだろう。数十億ドルを無駄遣いしたあげく、結局飛行しない。そして、私たちの宇宙プログラムにほんのわずかでも残されていた可能性をことごとく破壊してしまう。アメリカの民間宇宙飛行会社と協力する、というアメリカらしいチャレンジを行わないことこそ、まさに非アメリカ的である。SLSというモンスターを止められなければ、それはアメリカの偉大な有人飛行の歴史に終わりを告げるものとなるだろう。」
(編集長注) 先日発表されたSLSについて、やはりこのような批判が出てきました。特に、せっかく民間宇宙飛行がこれから進むというときに、それと競合するようなロケットを政府が開発するということには、批判が大きいようです。これは、民間が強く、また「国は小さくあるべき」という考え方が根強いアメリカらしいところでもありますが、今後、こういった人たちを巻き込んでの大論争になっていくことは十分に予想され、それがまたアメリカの宇宙開発を迷走に追い込んでいくおそれは否定できません。
・スペースフロンティア財団のブログ (英語)
  http://spacefrontier.org/2011/09/15/monster-rocket/
・スペースフロンティア財団 (英語)
  http://spacefrontier.org/