先頃、アメリカの新たな宇宙探査計画が発表されましたが、異議を唱える意見がいくつか出てきています。アポロ11号に搭乗し、月への第一歩を記した宇宙飛行士、ニール・アームストロング氏は、このほどアメリカの議員と懇談し、その中で、スペースシャトル引退に代表される、ここのところのアメリカの宇宙計画について「恥ずかしい」(embarrassing)と語りました。Space Travelが伝えています。
この中で、アームストロング氏は、議会内の科学宇宙技術委員会に対し、「今やアメリカは、宇宙飛行士を自前で、低軌道にある国際宇宙ステーション(ISS)へ送る、あるいは帰還させる手段を持っていない。しかも、それがいつまでになるのかすらわからない。」と述べています。
アームストロング氏は、議会に対し、NASAをはじめとするアメリカの宇宙計画についてアドバイスする4人のメンバーのうちの1人です。既に81歳となるアームストロング氏は、「失われてしまった優位は、そう簡単には取り戻せない。」と、危機感をあらわにしています。
また、アポロ17号で月面探査を行い、「最後に月を歩いた男」として知られるユージン・サーナン氏も、アメリカのシャトル引退の方針に異議を唱えており、「ケネディ宇宙センターの格納庫にしまわれているシャトルをもう一度引っ張り出し、火を入れ、復帰させるべきだ。ISSに行ける乗り物があるべきだと思わないか? 博物館に入れる前に、十分に活用すべきだ。寿命はまだ十分にあるのになぜ引退させるのか?」と述べています。
サーナン氏はさらに、1960年代にケネディ大統領が下した決断(人間を10年以内に月に送る)を評価した上で、「大胆で勇気ある決断を行うことができる大統領こそが、宇宙への旅を実現させることができるのだ。今や私たちは、衰退への道を突き進んでいる。50年にわたる、輝かしい、宇宙開発のリーダーという本を閉じることになったのだ。」と述べ、さらに、オバマ大統領がコンステレーション計画を中止したことを批判しています。「(計画中止によって)私たちは今や、『どこへも行かないミッション』(mission to nowhere)を選択することになった。今こそ、月へ戻るという道を選ぶべきだ」。
先頃打ち上げられた月探査機グレイルのプロジェクトマネージャーである、マサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、月を研究することは非常に価値のあることであるが、彼女の学生たちは、火星探査の方により興味を持っているということを述べています。
「人間を火星に送り込む、ということは、次世代の挑戦者たちのコンセンサスといってよい。しかし不幸なことに、議会はNASAの先進的な技術開発を削減させる方向に向かっており、今後、新たな革新的技術開発なしに、新しいミッションを実現できるかは非常に不透明だ。」
アラバマ大学で航空宇宙を専攻するマイケル・グリフィン教授は、新たに、中国との宇宙開発競争が起きると指摘。特に、中国が2013年に新たな月着陸機(嫦娥3号)を、そして2015年にも着陸機(嫦娥4号)を送り込むとされていることに触れ、「彼らは私たちに最も近い競争相手だ。もし、中国人が月に到達し、そして私たちにそれができなかったとしたら、他の国の人が、私たち(アメリカ)を世界のリーダーだと見なせるとは思わないだろう。」と述べています。
・Space Travelの記事 (英語)
  http://www.space-travel.com/reports/Neil_Armstrong_says_US_space_program_embarrassing_999.html
・コンステレーション計画 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/topics/Constellation/
・グレイル (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/