3日目を迎えた月惑星科学会議(LPSC)では、最新の探査計画から得られた成果の発表が相次ぎました。とりわけ、昨年3月(まさにこの学会が開催されるタイミング)で水星周回軌道への投入が行われ、今月に1年間の基本探査期間を終了した水星探査機メッセンジャーについては、各種観測機器による探査の成果が発表され、まさに教科書を書き換える成果となっています。
今回発表された探査結果では、まず水星の磁場についての詳細な測定結果が公表されました。また、重力については、水星の慣性能率の比についての詳細な数値が発表されました。その値は0.353プラスマイナス0.00172というものです。なお、この値は、0.4の時が均質な球で、その値を下回るほど、内部に密度差の大きな物質が存在する(すなわち、大きなコアが存在する)ことになります。
この値は、水星の内部に大きなコアが存在することを改めて示したことになります。
また、水星の内部構造についても詳細な分析が行われました。今回の発表によると、水星の内部は、地殻部分を除くと4層に大きく分かれるとのことです。地殻の下はマントル部分、そしてその下に、硫化鉄を主成分とする固体外層コア、液体からなると考えられる中層コア、そして再び固体の下層(中心)コアが存在すると推定されています。
コアの主成分は硫化鉄と二酸化ケイ素と見積もられています。また、マントル部分の厚さは500キロ以内であり、薄いことが推定されます。
このほか、水星でもっとも大きな地形構造であるカロリス盆地の詳細なデータや、水星の極地域に存在するとされている氷の探査結果(どうやら地下…10〜20センチほどの地下に氷の層が存在する模様)なども発表され、これまで謎めいた天体とされてきた水星の姿が一気に明らかになりました。
火星探査では、8年以上にわたって探査が続くマーズ・エクスプロレーション・ローバーの「オポチュニティ」の最新の探査結果が発表されました。現在「オポチュニティ」はエンデバー・クレーターと名付けられたクレーターを探査中で、この中に、石膏をふくむ岩脈が見つかっています。石膏は水が存在することによって生成される鉱物であり、この成果は火星に水が存在した(存在する)証拠を新たに見つけたことになります。
会議では、この石膏についての詳細な発表をはじめ、探査地域についての詳細な地質状況などについても発表が行われました。とりわけ、地表の状況だけでなく、地下の状況についての検討も行われているという点は注目されました。また、探査についてはローバーのデータだけでなく、上空を周回するマーズ・リコネサンス・オービターのデータも利用しており、地上と上空との連携による、まさに地球のような地質探査が行われいるという点は非常に興味深い点でした。
なお、メッセンジャーの成果については、このLPSCの席で記者発表も行われました。月探査情報ステーションでも、後日この内容をこのブログでご紹介したいと思います。
・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/
・マーズ・エクスプロレーション・ローバー (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/mars/exploration/MER/