2014年冬期に打ち上げ予定の「はやぶさ2」と共に打ち上げられる副衛星(サブペイロード、ピギーバック衛星とも)が決定しました。
JAXAに限らず、ロケット打ち上げの際には、打ち上げ重量に余裕がある場合に、小型の衛星を複数機同時に打ち上げることがよく行われます。ロケット打ち上げの側からみれば余った重量を活かすことで宇宙開発コミュニティへの還元や場合によっては副収入を得ることもできます。小型衛星の側からみれば、ただでさえ安いコストで作った衛星を高いお金で打ち上げるのは割に合いませんので、低価格での打ち上げが可能なこのような機会は非常にありがたいことです。

今回、「はやぶさ2」と共に打ち上げられる副衛星とその開発元は以下の通りです。

  • PROCYON (プロキオン) …東京大学/JAXA
  • ARTSAT2-DESPATCH (アートサット・ツー・デスパッチ) …多摩美術大学
  • しんえん2 …九州工業大学

PROCYONは大きさが約55センチくらいの長方体の衛星で、重さは59キログラム。開発にはJAXA宇宙科学研究所に加え、東京理科大学、明星大学、北海道大学などが加わっています。
PROCYONの目的は、このクラス(50キログラム級の衛星)での深宇宙探査機バスの実証です。将来的には超小型衛星による深宇宙探査も盛んになるでしょうから、こういった実証は重要と考えられます。

ARTSAT-2は寸法としては50センチの立方体に入りますが、衛星の形としてはなんとも形容しがたい…らせん形というか巻き貝というか、衛星としては斬新という言葉も陳腐に聞こえるようなすごい形をしています。重さは約30キログラムです。
この衛星の目的はまさに「ARTSAT」であり、ソーシャルネットワークを利用したテレメトリ(信号)の受信や、この受信したテレメトリから自動的に作成した宇宙詩を地上に送信するという実験、さらには3Dプリンターにより作成された物体が宇宙空間で生かせるかどうかの実証も行われます。まさに芸術衛星、野心的な試みといえるでしょう。

「しんえん2」は六角形の立方体をしていますが、ほぼ50センチの立方体の枠に入る設計となっています。重さは15キロほどと、他の衛星に比べるとうんと軽くなっています。
この衛星では深宇宙通信のテストや、熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)が宇宙機素材として使用できることの実証を行います。鹿児島大学との共同計画です。

今回は、2013年4〜5月に搭載ペイロード(副衛星)の募集を実施、4件の提案から、技術的な側面や衛星としての重要性、さらには搭載可否についての判断をJAXA内の委員会で審議し、上位3機を合格としました。ただ、現時点でロケットの余剰重量は200キロで、3機を搭載すると228キロとなることから、3位となっている「しんえん2」は、この228キロの余剰が出た際に搭載できるという「条件付き合格」となっています。