「はやぶさ2」は現在順調に飛行していますが、その目的地である小惑星1999 JU3の姿をみてみたい、という人も多いでしょう。4日、国立天文台は、ハワイにある大型望遠鏡「すばる望遠鏡」によって撮影された1999 JU3の写真を公開しました。
といいましても、遠くにある小さな天体は、すばる望遠鏡でもなかなか捉えるのは大変です。通常の星の姿を見慣れている人にはちょっと違和感のある画像かも知れません。

すばる望遠鏡がとらえた1999 JU3

すばる望遠鏡がとらえた1999 JU3。画像中央で少しずつ動いている天体が1999 JU3.(画像提供: 国立天文台)

1999 JU3は22.3等というすごい暗さです。これについても少し説明しておきましょう。
星の等級は1等、2等…というふうに、数が大きくなるにつれて暗くなっていきます。この等級による明るさの差には規則があって、1等は6等より100倍明るい、ということになっています。6等は11等より100倍明るく、1等は11等より、100×100=1万倍明るいのです。
なお、1等と2等の明るさの違いを数値で表すと、5回かけて100になる数値…難しくいうと100の5乗根…となり、その値は大体2.5くらいです。
とすると、22.3等の1999 JU3を1等星と比べると、100×100×100×100×約2.5=約2億5000万倍も暗い、ということになります。全天一明るい恒星であるシリウスの明るさは-1.4等ですので、これと比較するためにはさらに、2.5を2回かけて、約15億倍暗い、ということになります。とんでもなく暗い天体を撮影しているということがおわかりかと思います。
ですから、私たちが使うような天体望遠鏡では、1999 JU3を撮影するのは極めて難しいことになります。大きな口径(光を集める鏡)を持つすばる望遠鏡、そしてかすかな星の光を捉える装置であるハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam: 超広視野主焦点カメラ)の威力が、今回の撮影に結びついたといえます。

また、天空上を移動しているという点についても説明が必要でしょう。
皆さんも海辺で、遠くの大きな船がほとんど止まっているようにみえるのに、近くにいる船は速いスピードで動いている、という経験をされたことがないでしょうか。天空上でも、はるか遠くにある恒星(「恒星」という言葉自体、天空上で止まっているように見えるということからキています)に比べて、地球にかなり近いところにある小惑星(「惑星」という言葉は、動くということからキています)は、天空の上で時間とともに刻々と位置を変えます。逆に、何分、何時間かおきに同じ位置で撮影し、恒星が動かないものとして写真を重ね合わせることによって、動いている天体を小惑星や彗星などの天体として観測する、というのが小天体観測の基本的な手法です。
今回の写真では、1分おきに撮影した写真(ハワイ現地時間の5月20日午前4時21分〜24分)を3枚重ね合わせて、コンピューター上のアニメーションとして表現しています。1枚の写真の露光は30秒です。すばる望遠鏡の威力をもってすれば、30秒程度の露光で、こんなかすかな星の光も捉えられるというわけです。

このような観測は、1999 JU3のより正確な軌道の決定に貢献するとともに、自転周期や表面の様子など、この天体のより詳しい姿を、探査機到着前にある程度明らかにするという点でも有意義なものです。