首を長くして待っていた方も多いことでしょう。小惑星探査機「はやぶさ2」が向かう予定となっている小惑星(仮符号 1999 JU3) の名前が決まりました。「リュウグウ」(Ryugu)です。
そう、浦島太郎で出てくる「竜宮城」のリュウグウです。

10月5日、JAXAが発表した資料によりますと、7月22日から8月31日にかけての名称案募集では、合計で7336件もの応募があったとのことです。応募は、以下の方々から構成される名称決定委員会で審査されました(敬称略)。

  • 高柳 雄一 (多摩六都科学館 館長) ※委員長
  • 渡部 潤一 (国立天文台 副台長)
  • 月尾 嘉男 (東京大学 名誉教授)
  • 津田 雄一 (はやぶさ2プロジェクトマネージャ/JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)
  • 吉川 真 (はやぶさ2ミッションマネージャ/JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授

委員会の顔ぶれをみますと、高柳さんは宇宙・天文を含め科学技術全般に詳しく、また広報などにも詳しい方です。渡部潤一さんは天文学者として高名であるばかりか広報のプロフェッショナル。月尾嘉男さんは科学技術全般に詳しいだけでなくそれぞれに対して深い知識をお持ちの方。そして2名のミッション関係者ということで、まさにベストな顔ぶれといえるでしょう。

今回の「リュウグウ」命名について、JAXAでは次のような理由と説明しています。

  • 浦島太郎の物語では、竜宮城から玉手箱を持ち帰ることになっているが、「はやぶさ2」もまさに、玉手箱ならぬ小惑星のサンプルを持ち帰ることを目的としている。
  • 目的地である小惑星 1999 JU3 は水があるとされる「C型小惑星」であるが、この「リュウグウ」も海のものであり、水を連想させるものである。
  • 神話由来の名称の中で比較的多くの提案があった名前であった。
  • 「神話由来の名称が望ましい」(地球近傍小惑星の名前には神話由来の名前をつけるという暗黙のルールがあります)というルールにも合致しており、また、既存の商標などにも抵触しない。

なお、提案についてですが、「リュウグウ」ズバリは30件ですが、類似提案として「リュウグウジョウ」(Ryugujo)が5件、綴りが異なる「Ryuuguu」が5件、「Ryuguu」が3件、「Ryugujyo」が1件とのことでした。合計しますと44件がこの「リュウグウ」に近い名称となったということになります。

なお、この小惑星の命名については、発見者に命名権があります。1999 JU3 を発見したのは、アメリカの小惑星観測プロジェクトのリニア(LINEAR)のチームです。通常、この審査には2〜3ヶ月かかるのですが、今回は命名などを担当する小惑星センター(MPC: Minor Planet Center)が異例の早さで審査を行っています。MPCのページではすでに、1999 JU3で検索すると、「Ryugu」として出るようになっています。
やはり世界的に、この探査への期待度が大きいのかも知れません。

今回の名前、私も予想していませんでしたが、確かに海の底に住むお姫様(乙姫様)も神様と考えれば、これは「あり」ということになります。
どちらかというと1999 JU3と呼んできた期間が長かった私(編集長)にとっても名前に慣れるのにちょっと時間がかかりそうですが、考えてみれば、1998 SF36に「イトカワ」という名前がついたときもそのような気持ちだったような気がします。いずれ…探査機がリュウグウに到着する頃には、普通に私たちは小惑星リュウグウと呼んでいることでしょう。

月探査情報ステーションでは、今後、「はやぶさ2」の目的地の小惑星について、順次標記を「リュウグウ」としてまいります。他の小惑星表記の例にならい、漢字(竜宮)ではなくてカタカナといたします。
記述修正までいましばらくお待ちください。