共同通信は9日、小惑星探査機「はやぶさ2」が、今年末に予定されている地球帰還後に、再び小惑星探査を行うことを検討していると報じました。

人工クレーターにタッチダウンする「はやぶさ2」

「はやぶさ2」に搭載された衝突装置によって形成されたクレーターにタッチダウンする「はやぶさ2」の想像図 (出典: JAXAデジタルアーカイブス、© 池下章裕)

記事によると、プロジェクトチームでは現在、地球に帰還し、帰還カプセルを切り離したあとの「はやぶさ2」本体について、軌道を替えて再び小惑星観測に向かわせる可能性について検討を行っているとしており、近く対象天体について公表する見込みと報じています。

先代「はやぶさ」は、地球帰還の際に、帰還カプセルだけではなく本体も地球大気圏に突入し、燃え尽きました。多くの人が感動の涙を流したあの燃え尽きる際の明るい光ですが、本来の予定では本体まで大気圏に突入することはありませんでした。しかし、ミッションの途中で制御用の燃料をすべて失い、帰還カプセルを地球帰還軌道に投入するために、本体ごと「突っ込まざるを得なかった」のです。

転じて今回の「はやぶさ2」。ミッション全体は至極順調で、このまま行けば今回はカプセルだけを地球に戻せる予定です。
そうなれば制御用や推進用の燃料にまだ残りが生じます。そこで、記事によると、ミッションチームでは帰還カプセル切り離し後、まだ順調な本体を使用して次の探査に向かわせることを検討しているとのことです。

記事によれば、探査先としては火星と木星の間にある小惑星帯の小惑星を狙うことも可能だそうですが、観測機器や太陽電池の能力なども考え(すでに探査機は打ち上げてから6年以上経過しています)、リュウグウと同様、地球付近の小惑星(地球近傍小惑星)を狙うことを検討しているようです。すでに候補となる354個の天体を抽出しており、その中から科学的価値や到達可能性などを考慮して目的地を選定するようです。

なお、記事で気になる言葉が一つありました。「金星へのスイングバイ」です。上記の354個の小惑星という数値は、実はこの金星へのスイングバイを前提とした数値です。
記事では、2024年に金星へのスイングバイ、2029年に到達可能な小惑星について検討を進めているとあります。また、金星へのスイングバイの際には搭載機器で金星の観測を実施し、いま金星で観測を続けている探査機「あかつき」の観測結果との比較も行うとのことです。

さらに、記事では「小惑星への着陸を含む接近探査」を検討しているという内容がありました。燃料に余裕があれば、サンプル回収(地球へのサンプルリターン)はできないものの、着陸は可能ですから、挑戦する価値は大いにあるでしょう。もし実現すれば、小惑星に複数回着陸した世界初の探査機ということになります。

実は、今回の記事は、編集長(寺薗)が独自に掴んでいた情報(内容はいえませんが)とも合致する部分があります。もともと、「はやぶさ2」が地球帰還後別の小惑星、あるいは天体の探査を行う可能性については、これまでもしばしば言及されてきました。プロジェクトチーム内からもその可能性には言及がありました。
ただ、今回のように「金星をスイングバイし、10年以内に到達可能な小惑星に向かい、可能なら着陸も検討する」という具体的な内容が出てきたのははじめてのことです。

ここまで具体的な内容について検討されていることが記事となった以上、プロジェクトチームからも近いうちに何らかの発表があるかも知れません。ワクワクしながら見守りたいと思います。もちろん、しっかりと地球に帰還カプセルを届けることが、大きな前提ではありますが。