今年6月に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセル内からみつかった微粒子について、JAXAは本日、みつかった微粒子の中に、小惑星「イトカワ」起源のものが1500個ほど発見されたと発表しました。
帰還カプセルの中には、「イトカワ」の試料を収めるためのサンプルキャッチャーと呼ばれる格納室があります。今回分析が行われたのは、2つあるサンプルキャッチャー内のA室のサンプルです。
このA室には、肉眼でみえるような岩石の破片や砂などはありませんでした。このため、内部に存在する微粒子をかき集めるため、特殊なへらを使って微粒子サンプルを回収、この結果、微粒子がみつかりました。
この微粒子、「微」粒子というくらいですからもちろん肉眼ではみえません。大きさはなんと10マイクロメートルというものです。1マイクロメートルは100万分の1メートルで、ミリメートルでいえば1000分の1ミリ。0.001ミリメートルです。
地球の砂粒などからすれば100分の1.髪の毛の太さに比べても数十分の1という小ささです。
このため、この微粒子を走査型電子顕微鏡という装置で調べることになりました。
微粒子の中には、衛星などの機器を構成するアルミニウムの金属の微粒子もありましたが、その中には岩石質の微粒子が含まれていることがわかりました。
この岩石質微粒子について、分析の結果

  • 微粒子中の鉱物種の存在割合が地球のものとは異なり、隕石などの特徴と一致する。
  • また、「イトカワ」を「はやぶさ」の搭載機器(赤外線分光計やX線スペクトロメーター)で測定した結果とも一致する。
  • 地球上で一般的な火山岩(玄武岩、安山岩、デイサイトといったもの)が、サンプルの中に含まれていない(このことは、微粒子が地球の火山岩起源ではないということについてさらなる傍証といえるでしょう)。

ということがわかりました。このことから、JAXAは、発見した岩石質の微粒子については、小惑星イトカワ起源であると断定したものです。
今回、「はやぶさ」によって小惑星イトカワからのサンプル回収が成功したことで、日本ではもちろんはじめて、世界では、固体天体表面からのサンプル回収は、月以来2例目となります。無人での回収はもちろん、世界初です。
なお、他の地球外物質のサンプル回収例としては、彗星の尾からの試料を回収したアメリカのスターダスト計画があります。また、その前には太陽風サンプルを回収したジェネシス計画がありますが、このサンプル回収は失敗しています。
JAXAでは、さらなるサンプルの分析のため、現在この微粒子を扱う特殊な技術の開発や、装置の準備などを進めています。
・はやぶさカプセル内の微粒子の起源の判明について (JAXAプレスリリース)
  http://www.jaxa.jp/press/2010/11/20101116_hayabusa_j.html
・はやぶさ (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/hayabusa/