「はやぶさ」プロジェクトに長年関わって来られた、宇宙科学研究所の吉川真先生より、プロジェクトチーム解散についての文章をいただきました。
6月13日、はやぶさの帰還日に合わせて、公開したいと思います。
吉川先生、ありがとうございました。
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「はやぶさ」プロジェクトの解散
吉川 真(JAXA)
時間の経つのはやはり早いもので、「はやぶさ」プロジェクトが今年の3月末に解散してからもう2ヶ月半となります。5月9日は「はやぶさ」打ち上げ10周年でしたし、本日6月13日は「はやぶさ」地球帰還3周年です。あの感動した地球帰還からもすでに3年が経過してしまったわけです。
「はやぶさ」プロジェクトの解散については、非常に感慨深いものがありました。個人的には1998年に当時の宇宙研に移動したときから本格的に関わってきたミッションですし、思い出すと本当にいろいろなことがあったミッションです。数々の感動を味わいましたし、“生きていてよかった”と何回も思ったミッションです。何事にも終わりはあるとは言え、そのミッションがついに終わってしまったわけで、少し寂しくも思います。
しかし、感慨にゆっくりとひたっている暇はありません。次のミッション「はやぶさ2」が動いているからです。この「はやぶさ2」も関わりだしてからすでに7年が過ぎました。議論を始めて最初に提案書を出したのは2006年、まさに「はやぶさ」が瀕死の状態から立ち上がろうとしていたときでした。その「はやぶさ2」もいよいよ来年が打ち上げです。
目を世界に転じてみれば、世界も大きく動いています。太陽系小天体探査に限ってみても、アメリカやヨーロッパで様々なアイディアが検討されています。また、ロシアに隕石が落ちて大きな被害も出たこともあって、スペースガードもより広く議論されるようになりました。小天体への有人ミッションや資源探査などの言葉も聞こえてきます。そのような状況の中で、日本でも、「ポストはやぶさ2」をにらんで、木星トロヤ群小惑星探査の議論が本格化してきました。
「はやぶさ」を経験した我々は、是非とも次の世代に新たな挑戦を伝えていきたいと思いますし、そうする義務があると思います。ただし、常に謙虚に物事を見つめていくことを忘れてはいけないと思います。肝心なことは心の眼で。
2013年6月13日