小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析結果について、JAXAは10日記者会見を開催し、その概要を発表しました。また、同じ10日、アメリカ・テキサス州ザ・ウッドランズで開催されている、第42回月惑星科学会議(LPSC: Lunar and Planetary Science Conference)にて、「はやぶさ」の微粒子解析チームが、その内容を発表しました。
現在分析が進められているのは、サンプル格納容器のうち、A室と呼ばれているところに格納されていたものです(格納容器は2つに分かれていて、もう片方はB室と呼ばれています)。
初期的な分析結果からわかることとして、
- 微粒子の3次元構造や主要な元素組成、酸素同位対比の分析結果は、ある種の隕石の特徴と合致する。
- 宇宙風化作用の痕跡が存在したこと、ならびに内部から抽出した希ガスの同位対比組成が地球のものと異なることから、この微粒子はイトカワ起源と認められた。
- 1つの微粒子の中には、カンラン石や斜長石、硫化鉄といった複数の鉱物が存在している。また、3次元構造も複雑な形状となっている。
- 現在のところ有機物は同定されていない。
とのことです。
なお、酸素同位対比の分析結果は極めて重要です。地球外の物質では、酸素同位対比が地球のものとは異なることがわかっていて、その内容によって地球外からの物質であるかどうかを識別することができます(酸素同位体は、通常の酸素である酸素16(16O)以外に、酸素17(17O)と酸素18(18O)があり、両者の存在比(16Oに対して)を調べることで、地球起源の物質かどうかを区別することができます。
また、希ガスについても、火星起源の隕石の同定に使われるように、地球外の物質かどうかを知るために用いられる手法です。
今回の発表は、LPSCで10日午前に催された、「はやぶさ」の特別セッションで行われました。
LPSCは、「世界最大の月・惑星探査、及び月・惑星科学に関する会議」として知られ、世界各国から大勢の科学者が参加します。また、新しい探査計画の発表や、探査におけるデータの解析結果などが最初に発表される場所としても知られています。
今回、編集長は参加していませんが、過去の会議の模様は、月探査情報ステーション「編集長が行く」でご覧下さい。
・JAXAのプレスリリース
http://www.jaxa.jp/press/2011/03/20110311_hayabusa_j.html
・LPSCのページ (月惑星研究所=会議の主催者)(英語)
http://www.lpi.usra.edu/meetings/lpsc2011/
・はやぶさ (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/hayabusa/
・編集長が行く (月探査情報ステーション)
https://moonstation.jp/ja/editor/