今日も、はやぶさ君は地球に向かって順調に航海を続けています。
2005年に行われた、はやぶさ君の観測で明らかになったものの一つに、小惑星イトカワの密度があります。
まず、はやぶさ君はイトカワの形を精密に計測しました。これでイトカワの体積がわかります。
イトカワの質量は次のようにして求めました。まずはイトカワに寄り添うはやぶさ君の軌道を細かく観察して、化学エンジンを吹いていないときのはやぶさ君の加速度を測定します。化学エンジンを吹いていないときには、はやぶさ君に加わる力のうち、太陽や惑星の重力分、太陽光に押される分(太陽輻射圧)を取り除いたものが、イトカワが はやぶさ君を引っ張る力、つまり、イトカワの重力分です。
つまり、はやぶさ君に加わる加速度のうち、イトカワの重力により得られた分を推定することができれば、イトカワの質量がわかるのです。
はやぶさ君の観測から求められたイトカワの密度は1.9g/cm3で、近赤外分光器の観測結果から予想されるイトカワの原材料、LLコンドライトの平均的な密度3.2g/cm3と較べるとずいぶんちいさいです。このことから、小惑星イトカワは、たくさんの隙間がある「がれきの積み重なり」であると考えられました。
また、イトカワ表面からの脱出速度は秒速数十cmしかないにもかかわらず、はやぶさがタッチダウンを行った「ミューゼスの海(正式名称はMUSES-C Regio)」は直径が数mmから数cmの細かい石に覆われていました。秒速数kmの隕石の衝突によって発生する破片の速度は、細かいものほど速いと考えられています。ですから、こんなに細かい石がイトカワ表面に存在するなんて思いもよらなかったことなのです。
こういう細かいことは、やはり実際に近づいて見ないとわかりません。
はやぶさの観測により、多くのなぞが明らかになり、新たななぞがたくさん生まれました。

2009年10月29日00時00分(日本時間では、10月29日の09時00分)現在のはやぶさ君は、地球からの距離171,281,440km、赤経8h15m48s、赤緯19.89度にいます。