1日遅れの更新となりましたが、ご心配をおかけいたしております。はやぶさ君は、イオンエンジンBのイオン源とイオンエンジンAの中和器を同時に使用することにより、地球帰還に向けての加速を加速を開始しました。詳しくはプレスリリースをご覧ください。
イオンエンジンは、プラスに帯電したキセノンイオンを電気の力で加速し放出するためのイオン源と、負電荷を持つ電子を放出してキセノンイオンを中和するための中和器から成り立っています。
ですので、中和器が働かなくなってしまうと、プラスに帯電した粒子だけを放出するはやぶさ君本体がマイナスに帯電してしまうのです。はやぶさ君本体がマイナスに帯電してしまうと、せっかく加速してイオン源から放出したキセノンイオンが、静電気の力ではやぶさ君に戻ってきてしまいます。
プラスに帯電したキセノンイオンがマイナスに帯電したはやぶさ君にひきつけられてしまうのですね。
ですので、中和器が使えない状態では、はやぶさ君はイオンエンジンを使って加速することができません。
今のところ、はやぶさ君が持っているのは、既に中和器が劣化して使えなくなってしまったイオンエンジンB, Dと、イオン源の調子が悪いイオンエンジンAと、まだ使えるが中和器がやや劣化し無理をさせられないイオンエンジンCです。
そこで、イオンエンジンのイオン源と中和器とを分けて考えることにいたしました。
イオンエンジンAはイオン源の動作が不安定なためにほとんど使用しておりませんので、その中和器は「新品同然」です。
一方、イオンエンジンBとDは中和器が劣化しておりますが、イオン源のほうは動作しております。
そこで、イオンエンジンBのイオン源とイオンエンジンAの中和機を組み合わせたところ、順調に動作し、はやぶさ君が加速する様子も確認されました。
はやぶさのイオンエンジンチームは、打ち上げ前に中和器にバイパスのダイオードを組み込む工夫をしていて、それは地上試験は行ったことは無かったのですが、今回、軌道上で試験をして機能を確認しました。
このバイパス回路によって、別々のエンジンのイオン源と中和機を組み合わせて運転をすることができたのです。
まだまだ、安定な運転には経験を積まなくてはなりませんが、ともかく再起動して地球に向かいはじめました。
未来のことを述べるのに確定はありえませんが、はやぶさ君が来年の6月に地球に帰れる確率を少しでも高めるために、日々精進しております。
2009年11月19日00時00分(日本時間では、11月19日の09時00分)現在のはやぶさ君は、地球からの距離136,612,320km、赤経8h53m43s、赤緯18.06度にいます。