「はやぶさ」帰還後に作られた3本の映画の先陣を切って、20世紀FOX配給の映画「はやぶさ」が、この10月1日に一般公開されました。
公開初日は、池袋と六本木の映画館で主演俳優や監督の舞台挨拶がありました。
私(編集長)は、午前10時開演の池袋シネマサンシャインの初公開に向かいました。
朝8時半に映画館に到着すると、既に入口前には40人近い人が、シャッターが開くのを待つ行列を作っていました。9時過ぎにシャッターが開く頃にはその行列の長さは60人にも達していました。
10時の回は早々に売り切れ、その上映開始を待たずに、次の回(13時10分)の券を買い求める人たちが、これまた映画館の前に列を作っていました。
上映終了後、映画に出演したキャスト、監督が舞台挨拶を行いました。堤幸彦監督、竹内結子さん、西田敏行さん、高嶋政伸さん、佐野史郎さん、そして鶴見辰悟さんです。
その模様を再現してみましょう(以下敬称略)。
竹内: 今日、映画を見終わった後のこの会場は、すごく暖かい雰囲気に包まれている。この作品を、主題になった「はやぶさ」プロジェクトに重ねるならば、今日はまさに「出発の日」である。もしこの映画を見終わった後、心に何か暖かいものを感じたら、ぜひおうちに帰った後、周りの人にも勧めて欲しい。
西田: 今日ここにいらして下さった皆様に心よりお礼を申し上げたい。映画でもご覧の通り、「はやぶさ」はまさに、世界初の快挙を成し遂げている。この映画の中では、私を含めた役者がそのプロジェクトメンバーを演じることで、役者がそのプロジェクトを追体験し、そしてとうとうプロジェクトとしての映画が、皆さんの中へと帰還することになった。今年、女子ワールドカップで優勝という快挙を成し遂げ、国民栄誉賞をもらった「なでしこジャパン」と同様、ぜひこの「はやぶさ」プロジェクトチームにも、国民栄誉賞を授けたい、そういう思いでいっぱいだ。
高嶋: 最初台本を渡され、その表紙に「はやぶさ」と書いてあるのをみて、なんで戦闘機(編集長注: 第二次世界大戦当時の日本の一式戦闘機は愛称が「隼」)の映画に自分が出るんだろう、と思ってしまっていた。それくらい、「はやぶさ」(もちろん、探査機の)について自分も知識がなかった。しかし、脚本をすべて読み終えたとき、私は立つことができなかった。とにかく、皆さんがご覧になった作品がすべてである。そして、撮影中、私はずっとホッケくさかった(注: 映画の中にはホッケにちなんだエピソードがある)。
佐野: 今までたくさんの映画に出演してきたが、今回の映画には本当に特別な気持ちを抱いている。それがなぜだかはわからないのだが…。今回の映画は、実際のプロジェクトを土台として、それをできる限りリアルに描いた。監督から、「今回は完全コピーで行くぞ」と、気合いを入れられた。川口さん(編集長注: 佐野史郎が演じた川渕プロジェクトマネージャーのモデルである、川口淳一郎・「はやぶさ」プロジェクトマネージャー)は、撮影が終わったあと、「確かによく似ているが、私はもっと落ち着きがないよ。」とおっしゃられていた(笑)。「はやぶさ」プロジェクトチームは、一致団結してミッションを成し遂げた。世界に向けて、1人でも多くの人にこの映画を観てもらいたいと思う。
鶴見: 私はもともとあきらめが早い方だったのだが、この映画に出演することで、あきらめないことが信条に変わった。私自身、自分の映画で涙を流す、ということはないのだが、今回、帰還のシーンでは本当に泣いてしまった。つくづく、ダイオードを入れておいてよかった(笑)(編集長注: 2009年11月に、「はやぶさ」のイオンエンジンが全停止した際、2機のエンジンを結びつけてクロス運転することで危機を脱することが成功したエピソードより。そのエンジンを結びつけていたのが、重さ数グラムのダイオード(小さな電子部品)だ)。
堤: 今回の映画は、JAXA、そして、映画製作のために結集したたくさんのチームメンバーに支えられ、助けられて、ここまでやってくることができた。もし今日ご覧になり、この映画が気に入られたら、ぜひ周りの人に呼びかけて欲しい。きっと、心の中に「おみやげ」のようなものが残る映画だと思っている。
竹内: 今回、プロジェクトに研究生兼広報担当として参加する水谷恵という女性を演じてみて、私自身いろいろなことを思い、考えた。私自身、映画の中の恵と同じように、仕事の上で悩み、迷ったこともあった。恵自身は何人かのキャラクターの合成ではあるが、この映画自体は、まさに事実の力、実際のプロジェクトを描いたという力が大きい。(「はやぶさ」プロジェクト、そしてこの映画を)ぜひ多くの方に知ってもらいたいし、その中にある、暖かいものを感じて欲しい。
西田: 今、日本は元気がない。3月の東日本大震災、そして先日の紀伊半島の豪雨など、いろいろなことが起こっている。もし、「はやぶさ」が3.11以降に帰ってきていたら、きっと国民栄誉賞を受賞していただろう。そして、そのプロジェクトの中心にいたのが的川さん(編集長注: 西田敏行が演じた、宇宙研・対外協力室長の的川泰宣氏(現:JAXA技術参与、NPO法人「子ども・宇宙・未来の会」会長)である。漁協から文部科学省まで相手にするこの人には、大人の部分がないとできない。実際お会いしてわかったのだが、私自身は実はノーメイクでいけるくらいに(的川さんに)似ている。おそらく、知能指数も同じくらいだろう(笑)。
堤: 「はやぶさ」というプロジェクトは、人間の力によって成し遂げられた。もちろん、そこには高い技術力が存在し、それに支えられてはいるのだが、実はプロジェクトに参加している人は、電車で隣の席に座っているかもしれないような、ごく普通の人たちである。そういう人間によるプロジェクトでもあり、そのことに敬意を表する意味で、今回は「完コピ」(完全コピー。プロジェクトをすべて再現すること)という方針をとった。
竹内: 「はやぶさ」にもさまざまなトラブルがあったが、この作品を作っていく上でもいろいろなトラブルがあった。例えば、1回目の試写の際、音声がまったく出なくなるということがあった。また、試写会での舞台挨拶のため仙台に赴いたら、男の子から、「ありがとう」という内容のものすごく熱い内容の手紙をもらった。いまこうして、映画をご覧になったお客様の笑顔をみられることがものすごくうれしい。ぜひ、映画を応援して欲しい。
・映画「はやぶさ」 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/hayabusa/fun/movies/FOX.html
・「はやぶさ」 (20世紀FOX)
  http://www.hayabusa-movie.com