NASAはこのほど、NASAが進めている小惑星探査計画、小惑星イニシアチブについて、7月に公募していた技術要請書(RFI: Request For Information)に基づき寄せられた400件ほどのアイディアから、96件を最も有用であると認定しました。

技術要請書自体は、小惑星衝突の脅威から地球を守るためのアイディア、また、有人探査に適した小惑星を発見するためのアイディアを募集するものですが、今回は、小惑星イニシアチブの中でも核となる部分、すなわち、地球近傍小惑星を捕獲し地球近傍軌道に移動させ探査する計画に対してのものとなっています。
とりわけ、小惑星の自転速度を低下させたり、地球に近づく軌道から小惑星をそらす手法、小惑星のサンプルを取得する方法、小惑星が単に地球に対する脅威であるばかりでなく、資源や科学の意味から重要なものであることを一般国民に対しアピールする方法など、単なる技術だけではなく、多種多様な側面にわたった提案となっています。

今回の計画は、産業界、大学、国際機関、さらには一般からも提案されています。今回はNASAの科学者や技術者、ミッションプランナーなどを含めたグループにより、96のアイディアが選定されました。
NASAは9月30日から10月2日にかけて、この96のアイディアについて討議しまとめるための公開ワークショップを開催することを計画しています。このワークショップでは、NASA内外の専門家による議論が展開されることになります。また、今回最重要という扱いにならなかった残り約300のアイディアについても、引き続きNASAとして小惑星イニシアチブへの活用方法を議論することになります。

NASAの小惑星イニシアチブは、大きく分けて2つの部分からなります。1つは有人小惑星探査計画、もう1つは「小惑星グランドチャレンジ」と呼ばれる、地球に危険を及ぶす可能性がある小惑星から地球を守るための計画です。小惑星イニシアチブはオバマ大統領が発表した2014年のNASAの予算計画にも盛り込まれており、NASAが現在開発を進めている宇宙輸送システム(SLS: Space Launch System: スペースシャトルに代わり、NASAが有人宇宙探査のために開発を進めている輸送システム)やオライオン探査船などの開発に大きな刺激となることが期待されます。さらには、2030年代なかばと予想されているアメリカの有人火星探査計画にとっても重要なステップになるでしょう。

NASA副長官のロバート・ライトフット氏は、「世界中から寄せられた非常に先進的なアイディアは、我々の計画を前に推し進めるために重要な役割を果たしてくれる。現在我々はミッションを形にするべく努力を続けており、ワークショップにおいてこのアイディアに対してより深い議論ができることを楽しみにしている。」と述べています。