月にも鉱物資源は存在します。
月の表面はおよそ10〜1000マイクロメートル[注]の範囲の細かい粒子(レゴリス)で覆われています。
月のレゴリスの主要鉱物は、
- 輝石
- 斜長石
- カンラン石
- チタン鉄鉱
であり、これらの鉱物が地域により様々な構成比により存在しています。
例えば、月の高地と呼ばれる地域では斜長石が比較的多く、海と呼ばれる地域ではチタン鉄鉱が豊富です。
これらの鉱物は、鉄、アルミニウム、ケイ素、チタン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、酸素などの元素により構成されています。すなわち、鉄やアルミ、ケイ素などは上記に代表される鉱物の形で、しっかりと月に存在しています。
しかしながら、月では、地球上のようにある元素が極端に濃集した「鉄鉱石」や「ボーキサイト」、「水晶」などの塊はほとんど存在しません。
その理由としては第一に、
月は地球のように豊かな水や大気、生物に取り囲まれていないため、地球上で多くみられるたい積系の鉱床(河川や風により生成される鉱床)や生物系の鉱床 (生物の排泄物や死骸などにより生成される鉱床)が成立する環境にないこと
が挙げられます。
第二に、
月では地球のようなプレート運動がないため、マグマ系の鉱床が地表近くに現れる機会も極端に少ないこと
がその原因といえます。
さらに、月表土は何十億年もの間、激しい隕石の衝突にさらされてきたので、月の表面を覆っている鉱物は激しく砕かれ、攪拌されており、それが濃集を妨げる要因となっています。
月には地球と同じような元素が豊富に存在していますが、地球と比較するとそれらが極めて均質にちりばめられていることが大きな特徴といえます。
[注]1マイクロメートル=100万分の1メートル=1000分の1ミリメートル