本日5月31日、火星が地球に最接近します。
火星と地球は共に太陽の周りを回っています(公転)。太陽から遠くなるほど、惑星の公転速度は遅くなります。火星が太陽の周りを1回回るのに687日かかります(これが火星の「1年」です)。そのため、火星と地球は遠くなったり近くなったりを繰り返します。
さらに、地球の公転軌道はほぼ円なのですが、火星の公転軌道はかなり楕円になっており、このため、地球と火星が接近するときには距離が変わります。たまたま地球と火星の軌道が近いところで火星と地球が接近すると「大接近」ということになります(逆の場合を「小接近」ということもあるようです)。
今回、火星と地球との距離は約7500万キロメートルです。地球と月との距離が38万キロということを考えると桁違いに遠いのですが、火星と地球が最も離れるときは3億キロメートルにもなりますので、今回の接近は「大接近」ということになります。
ちなみに、2003年に「数万年に1度」と騒がれた火星大接近では、5700万kmにまで近づきました。

火星と地球の軌道の関係

火星と地球の軌道の関係。接近するときでも遠いときは1億キロ以上離れるときもある。なお、今年より2年後の2018年の方が距離は近く、前回の火星大接近に匹敵する5700万キロまで近づく。(© 国立天文台)

いま、火星は南、もう少し正確には南南東の空に明るく輝いています。明るさはマイナス2等で、この明るさは都会でも十分にみえるくらいの明るさです。
また今回は面白いことに、火星のすぐ近くに別の赤い星が輝いています。さそり座の「アンタレス」です。アンタレスは、そもそもその意味が「火星に相対する(あいたいする)もの」という名称からきているくらいでして、一瞬火星と見分けがつきにくいかも知れませんが、アンタレスは1等星で、火星はそれに比べると約15倍くらい明るく見えます。南南東の夜空に赤い星が2つあれば、明るい方が火星、暗い方がアンタレスだと考えればよいでしょう。
またさらに、南南東から南東にかけてはいま土星も明るく輝いています。明るい天体たちの共演が楽しめるというわけです。
ただ、アンタレスや火星はやや高さが低いところにあります。そのため、都会のようにビルが林立しているところや、山など視界をさえぎるものがあるところでは、火星をみることができない場合もあります。山の上やビルの上などで観察する、あるいは南東〜南南東(南側)に視界が開けたところでご覧になるとよいでしょう。また、地上に近いところは街の明かりや地上のチリなどで明るくなってしまいますので、できれば人里離れたところや、南東に開けた海などで観測するとよいでしょう。

火星の見え方

火星の見え方。写真中「さそり座」とあるところの「座」の字の右上辺りにあるのがアンタレス。土星、火星、アンタレスがほぼ三角形をなして天で輝いている。(© 国立天文台)

なお、火星は大接近のときだけ明るくみえる、というものではありません、大接近の前後数週間(つまりこれから先数週間)は、南南東の空に明るい火星をみることができます。今日の天気が悪くても、また天気のいい日を見つけて、ぜひ火星ウォッチングにトライしてみてはいかがでしょうか。
また、火星は大接近の際、いちばん小さく見えるときよりは5倍ほど大きく見えます。ただ、月のように形がはっきり見えるというわけではありません。お手持ちの天体望遠鏡などでは火星の表面の様子がかなりはっきりとわかるかと思います。望遠鏡をお持ちではなくても、近くの科学館やプラネタリウム、公開天文台などでの観察会に参加されるのも悪くないと思います。

火星は人類が究極の目標として目指している星です。いま火星には、人類が地球から送り込んだ7機もの探査機が動いています。そして2030年代なかばには火星に人類を送り込もうという計画もあります。月探査情報ステーションの「火星・赤い星へ」で、火星にしばし、思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。