2013年にも打ち上げが予定されている、中国の月面着陸機「嫦娥3号」ですが、次第にその姿が明らかになってきています。先日に続き、中国月探査の最高責任者、欧陽自遠氏がその一端を語った様子が人民網日本語版に掲載されていますが、その内容はかなり驚くべきものです。
それによると、嫦娥3号では、月面の夜を耐え抜いて探査機を生かすために、原子力電池を用いることを検討しているとのことです。
月面では、昼は14日、夜は14日続きます。夜の間は太陽光がまったく当たらないため、月面の温度は零下100度以下、場所によっては零下200度くらいにまで下がります。このため、14日間にもわたって機器を暖めたり、電力を供給する技術が必要になります。中国はその技術として、原子力電池を使うことを検討している模様です。
また、嫦娥3号には自律性を備えた月面ローバー、天体望遠鏡などの装置を備えた着陸船が装備されるとのことです。
(注)原子力電池は、放射性物質(プルトニウム239など)がゆっくりと崩壊する際の熱を利用して発電する装置です。太陽光がきわめて弱くなる木星より外側の宇宙へ向かう探査機にはこれまでも搭載事例があり、ボイジャー1号・2号、土星探査機カッシーニなどにも搭載されています。ただ、発射の際などに万が一探査機が墜落するなどの問題が発生した場合に、放射能汚染が懸念されることもあり、最近では搭載事例は次第に減る傾向にあります。
なお、現在日本が2015年に打ち上げを予定している月面着陸機でも、夜間を超す技術(越夜技術と呼ばれます)を実証することを目的としていますが、日本は再生型燃料電池を用いる予定です。これは、昼の間に太陽光発電で得た電力で水を電気分解して水素と酸素に分けておき、夜間は逆にこれを燃料電池の動力とすることで、熱と電力を得ることをめざしています。ただ、水を非常に高純度に保つ必要があるなど、技術的にはまだまだ解決すべき課題は多いです。
・月探査衛星「嫦娥3号」、月面での夜間生存に挑戦へ (人民網日本語版)
  http://j.peopledaily.com.cn/95952/7040540.html
・嫦娥 (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/Chang_e/
※本記事は、大谷俊典様のご協力をいただきました。