はやぶさ君は、本日も着々と地球に近づいています。
2004年の5月19日、はやぶさ君は、世界初のイオンエンジンを用いた軌道修正による地球スイングバイに成功しました。15時22分(日本時間)に地球に最接近し、地表から約3700kmの点を通ると、再び地球から遠ざかり、小惑星イトカワに向かったのです。
地球が太陽の周りを廻る公転のエネルギーを少しだけ分けてもらうスイングバイは、成功すれば燃料を節約することができますが、決められた時間に、決められた場所を、決められた速度で通過できなければ、逆に変な方向に投げ飛ばされてしまう危険性もあります。
このときも、はやぶさ君を運用するスタッフはずいぶん慎重に、はやぶさ君を運用しました。軌道決定グループがイオンエンジンを止めてじーっとしているはやぶさ君の位置や速度をできるだけ正確に測り、これを元に軌道計画グループがこれから先の軌道を計算し、イオンエンジングループが推力を調節して、軌道計画グループの要求にこたえます。そしてもう一度、はやぶさ君の位置や速度をできるだけ正確に測るのです。はやぶさ君を毎日運用し続けるスタッフや、健康状態を見守るスタッフの存在も欠かせません。
もうじき、TCM-2が始まります。TCMはTrajectory Correction Maneuverの略で、今のはやぶさ君にとってはイオンエンジンを用いた軌道変更を意味します。
地球スイングバイのときとは違って、現在のはやぶさ君は満身創痍です。イオンエンジンと、ガスジェットと、太陽光圧、そしてたった一つ残ったリアクションホイール。これらを組み合わせて、かつ通信を保ちながら、上手に軌道制御をしなくてはいけません。気の抜けない、真剣な打ち合わせが、今日も続きます。
2010年5月20日00時00分(日本時間では、5月20日の09時00分)現在のはやぶさ君は、地球からの距離10,403,650km、赤経8h32m23s、赤緯30.11度(かに座)にいます。
はやぶさ君から見て地球の方向には、けんびきょう座が見えます。