地球でいろいろなもの(建物とか、乗り物とか)を作るための材料には、たとえば金属とか、コンクリート、石、木、プラスチックなど、いろいろなものがあります。これらが果たして月で使えるかどうか、考えてみましょう。

まず、金属は問題ありません。むしろ、鉄などは地球のように、水によってさびたりすることもありませんから、かなり長持ちすると思われます。アルミや鉄などは月の表面にある土(レゴリス)から取ることができますので、月でも豊富に手に入ります。

コンクリートはどうでしょうか? コンクリートはセメントと砂利や砂(骨材=こつざいと言います)と水を混ぜて作られます。このうち,砂利や砂は月面上にある石や砂を使うことができます。セメントはどうでしょう。セメントの主成分は二酸化アルミニウム (Al2O3)、二酸化ケイ素(Si02)、石灰(Ca0)などです。これらは月の砂の中に含まれています。最後に水ですが,これだけは月にはあまりないので,地球から運ぶかあるいは水素だけを地球から持っていき、月の砂の中に含まれる酸素を使って水を作ることが必要でしょう。
このようにして作ったコンクリートは、大気のない月面に降り注ぐ放射線を防ぐ材料(遮蔽材=しゃへいざい)としてもすぐれた性質を持っています。ただ、コンクリートだけだと引っ張り力に弱いため,地球上のように鉄筋を入れ,空気漏れを起こすひび割れが生じないような工夫が必要です。
また、月面の材料で、セラミック、あるいはコンクリートのようなものを作ることもできます。月の表面にある土(レゴリス)を使って、それを焼き固めれば、固い物質を作ることもできます。これをブロックのように積み重ねれば、建物を造ったりすることもできます。

石ももちろん、月面では建物などを造るのに使えるでしょう。

木やプラスチックはどうでしょうか? 実は、こういった材料は、月面では長い間はもたないと考えられています。
月には宇宙線が降り注いでいますし、かなり激しい温度差もあります。こういった環境には、木やプラスチックのように、生物と同じようなもの(有機物)でできた材料はたいへん弱いのです。特にプラスチックは宇宙線などの影響を受けてすぐに変質してしまいます。宇宙線にあたると、有機物は分解されてしまいますから、木や紙などは変質してしまうことでしょう。
また、月は真空です。このため、プラスチックの中からガスが抜け出てしまい(脱ガスといいます)、さらにプラスチックは弱くなってしまいます。

結局、月で建物などを造るのに使える材料としては、金属、土を焼き固めたコンクリート(セラミック)、石などになるでしょう。地球上で使われているセメントやコンクリート、木、プラスチックなどを使うのは難しいと思われます。


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