計測機器大手の横河電機は22日、トヨタ自動車と月面ローバー「ルナクルーザー」について、計測・制御機器の試作を含む研究開発についての契約を締結したと発表しました。

ルナクルーザー(深宇宙展)

日本科学未来館で2025年7〜9月に実施されていた特別展示「深宇宙展」にて展示されていた、ルナクルーザーの実物大模型。幅約5メートル、長さ約6メートル。
撮影: 寺薗 淳也
© 2025 TERAZONO Junya

ルナクルーザーは、トヨタ自動車とJAXAが共同開発を行っている、月面を走る有人月面車(有人与圧ローバー)です。
「有人」とあるように、人間(宇宙飛行士)を乗せて走ります。そして、「与圧」とあるように、地球と同じ1気圧の空気を満たした環境下で、宇宙飛行士が過ごせる設計となっています。
つまり、月面の過酷な環境下でも宇宙飛行士を守り、快適な月面探査が行えるようにするローバーです。
月の1日(約30日)間で1000キロメートルの走行を行うほか、無人でも遠隔操縦により動作することを目指しています。さらには、10年間で1万キロメートルの耐久性を持たせる設計とする予定です。
日本も参加するアルテミス計画において活用され、2032年ころの実用化を目指しています。

今回、トヨタ自動車と横河電機が提携したのは、このルナクルーザー向けの計測機器についての協業です。
横河電機は世界屈指の計測機器メーカーですが、今回、ルナクルーザー向けの計測機器について共同研究を行い、一部試作も行うとのことです。

上記の通り、ルナクルーザーは人間を乗せて月面を動きます。
乗り物として安全は絶対ですが、ましてや月面環境となると安全への要求は非常に大きく、かつ厳しくなります。研究開発段階においても、機器データの精密で正確な測定は欠かせません。
また、日本にとってみても、月面における有人環境施設作りははじめての挑戦となります。このような中で、世界屈指の自動車メーカーと世界屈指の計測機器メーカーの協業は大きな力になることでしょう。

プレスリリースでも、横河電機がこれまで様々な産業に対し信頼性の高い計測システムを提供したことが今回の共同研究につながったと述べられています。
今後はルナクルーザーの制御プラットホームとバッテリー計測コンポーネントの概念検討をさらに進め、試作品の開発に向けた設計・調達も実施する予定とのことです。

現在日本では、民間企業による月面開発の動きが加速しています。ベンチャー企業・スタートアップ企業だけではなく、その分野で確固とした実績を築いている大企業もいま、続々と月面開発分野に参入しています。横河電機もまさにそのような企業で、宇宙開発に熱心な企業としても知られています。
月探査分野でいえば、月の氷を探査するためにドリルを使って月の地下を計測する装置の試作なども行っています。

また、ルナクルーザーのようなモビリティ分野は、将来の産業への応用も期待できます。
自動車は数多くの分野に波及効果をもたらす産業です。宇宙空間、月面におけるモビリティの開発も、やがては地上に還元され、あるいは月面に生かされ、人類のさらなる発展を後押しすることになるでしょう。
今回の協業が日本の産業はもちろん、世界の産業をどう発展させていくかが楽しみです。