編集長(寺薗淳也)の新書籍『宇宙開発の不都合な真実』が、彩図社より9月20日に発売されます。
これまで、特に日本では、宇宙開発は非常に明るくポジティブなイメージで捉えられてきました。私も携わった「はやぶさ」の小惑星からの帰還や、アジアで最も多い数の宇宙飛行士を輩出していることなどは、特に日本人にとって誇らしい、また日本の世界での優位を感じさせるできごとになっているのではないでしょうか。
しかし、冷静にみてみると、私たちの宇宙開発への見方がそれでいいのか、と思わせる部分がたくさん存在します。
そもそも、日本の宇宙開発が世界一なのか?
宇宙開発分野で急速に台頭する中国、あるいはインドなど、宇宙開発で新興国とみなされる(私たちがしばしばみなす)国とすら、今や日本の宇宙開発技術は追いつかれ、あるいは抜かれています。
日本では宇宙開発は平和の象徴とされていますが、そもそも日本以外では宇宙開発は軍事技術開発と表裏一体です。そして日本でも情報収集衛星や自衛隊の宇宙開発への参画など、その流れが加速しています。しかも十分な議論なしに。
宇宙資源開発が近年注目を浴びています。地球の資源不足が世界の経済成長の足を引っ張る中、宇宙の資源を利用することはそれを打開する大きな材料になるでしょう。しかし、宇宙にある資源をそもそも国や民間企業が採掘してもいいものなのでしょうか? 「宇宙はみんなもの」なのではないでしょうか?
民間企業による宇宙開発が世界、そして日本で急速に進んでいます。『官から民へ」の流れの中、いまや民間企業の宇宙開発の方が国家機関の宇宙開発を凌駕する例が多数出てきています。しかし、すべてを民間企業に任せてよいのでしょうか。民間企業の宇宙開発は本当に「リスクゼロ」で行えるのでしょうか?
宇宙開発で私たちが触れたがらない大問題に、宇宙デブリ(宇宙ゴミ)の問題と、小惑星の地球衝突の問題があります。宇宙デブリの問題は迫りくる静かな危険であり、じわじわと世界の宇宙開発に危機をもたらそうとしています。数十年後、いや十数年後、人工衛星の打ち上げは宇宙デブリとの衝突を恐れながら行わなければならなくなるかしれません。
一方、小惑星の地球衝突問題は、その確率は低いものの、一度起これば場合によっては人類の存続を脅かしいかねない重大な問題です。にもかかわらず、政治面でも経済面でも、この問題への対処は遅れているどころか、ほとんどなされていないのが現状です。
それでいいのでしょうか?
月・惑星探査に限らず、宇宙開発に長年携わってきた著者(寺薗)が、宇宙開発、とりわけ日本の宇宙開発に潜む、あまり触れられない、あるいは触れたがられない問題をあぶり出していきます。
とかく皆様にとっては、宇宙開発といえば明るくて前向き、未来を開くイメージがあると思います。宇宙開発に関して多くの書籍が出版されていますが、そのほとんどは美しい空の絵や将来の宇宙計画など、明るい内容がほとんどです。本書はその逆に、宇宙開発に潜む危ない面、不都合な真実を直視していく内容です。
宇宙開発が好きな方でも、読み進めていくには辛いかもしれません。しかし、それを直視し、議論し、乗り越えていくことが、これから日本が宇宙開発を進めていく、さらには世界の中でトップレベルの宇宙開発能力を維持していくことに必要なことだと、私は考えています。
そういった「気づくこと」に本書は大きく役立つかと思います。
ぜひ皆様、お手にとっていただき、宇宙開発の世界をもう一度、考えてみてください。
書籍概要
- 書籍題名
宇宙開発の不都合な真実 - 著者
寺薗淳也 (てらぞの じゅんや) - ISBN
978-4-8013-0620-2 - ページ数
208ページ - 発売日
2022年9月15日 - 価格
1,540円 (税抜価格 1,400円)
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