5月21日(現地時間)、NASAでは6月に打ち上げられる予定のルナー・リコネサンス・オービター(LRO)及びエルクロス(LCROSS)について、詳細を発表する記者会見を行いました。両者は、現在のところ6月17日に、アトラスVロケットに搭載され、ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる予定となっています。
LROには7つの機器が搭載され、将来の月面有人探査の際にどこが安全な着陸場所なのかを見極めることを目指しています。また、資源がありそうな場所の調査や放射線環境の調査、さらには新しい技術の試験などを行う予定です。
LCROSSの方は月の極地域に氷があるかどうかを、自ら衝突することによって明らかにしようという大胆な探査です。さらにLCROSSでは、本体に加え、使用済みのアトラス・セントールロケットの第2段をも月に衝突させるという、これまでに例のない方法の探査も行い、この2つの衝突で、月の表面の水についての結論を出そうとしています。
「この2つの探査により、私たちにとっていちばん身近な隣人である月に関して、興奮すべき新しい情報がもたらされることになるだろう。表面の画像を撮影することにより、月のドラマチックな風景や興味深い場所などを、最高で1メートルという解像度でみることが可能になる。また、これらのデータは、月の将来的な活用方法についてのデータも提供してくれる。2つの探査機のチームは、探査機の設計や製造に関する膨大な量の仕事をこなしてくれた。」(NASAの探査システムミッション部門の副部門長であるダグ・クック氏)
LROの探査機器により、科学者は月表層の高解像度の3次元地図を作ることができるようになり、また表面を極紫外線(波長が極端に短い紫外線)の領域まで調べることができるようになります。また、探査機器は、人間の臓器のように薄いプラスチックを使うことで、月の表面付近の放射線の環境が人体にとってどのような影響を与えるか、またどのくらいの放射線を吸収することになるのかを調べることができます。
LROに搭載される機器は、ほかにも、月でもっとも深いクレーターを調べたり、表面に水の氷があるかどうかを調べることもできます。さらに、月の極地域にあるといわれる、永久影の領域も調べることができます。カメラは非常に高い分解能を持っているので、地形や表面の物質組成などを詳しく調べることができます。また、小型のレーダによって、極地域を撮影するだけでなく、通信ができるかどうかのテストも行う予定です。
「LROは驚くほどに洗練された探査機だ。この探査機器群は、一体となって我々にデータを送ってくるはずだ。私たちはもう何年も、データを欲しくてたまらなかったんだから。」(LROのプロジェクトマネージャでNASAのゴダード宇宙センターに所属するクレイグ・チューリー氏)。
アトラス・セントールロケットがその役割を大体終え、探査機が地球の軌道から外に出るところで、LCROSSとセントールロケット第2段は、4ヶ月の旅に出ることになります。両者は月の極の、永久影の領域に激突する予定です。そのときに立ち上るちりは10キロの高さまで舞い上がると考えられています。この衝突はLCROSSによって観測されるだけではなく、ハッブル宇宙望遠鏡や、地上の望遠鏡などでも観測が行われる予定です。太陽光に直接さらされるちりなどを詳しく調べることで、観測者は月の表面に水があるかどうかを調べることになります。また、極地域の永久影の領域がどのような鉱物組成になっているかということについての情報ももたらしてくれる予定です。
探査機は開発期間を短縮し、コストに上限を設けた新世代の探査機で、既に宇宙飛行により実証された技術を用い、ソフトウェアも今ある最先端のものを用いることで、より高い目標に到達できるようにすることになっています。
「LCROSSが月に到着して、華々しい月の氷の探査を行う様子を、いろいろな人たちと体験できることを楽しみにしている。惑星科学者たちがもっとも興味を持つ多くの質問に答えを出せることが十分できると思う。」(LCROSSのプロジェクトマネージャである。NASAエームズ研究センターのダン・アンドリュース氏)
LROとLCROSSは、NASAの探査システムミッション部門(Exploration Systems Mission Directorate)が実施するはじめての探査となります。得られたデータは、将来の太陽系の有人探査を推し進めるために用いられます。LROは少なくとも1年間にわたり、月の極軌道を周回して探査を行います。
・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/mission_pages/LRO/news/lrolcross_plans.html
・LROのページ (英語)
  http://www.nasa.gov/lro
・LROのプロジェクトページ (英語)
  http://lunar.gsfc.nasa.gov
・LCROSSのページ (英語)
  http://www.nasa.gov/lcross
・LCROSSのプロジェクトのページ (英語)
  http://lcross.arc.nasa.gov/
・ルナー・リコネサンス・オービター (月探査情報ステーション)
  https://moonstation.jp/ja/history/LRO/