SLIMについてのよくある質問とその回答 (FAQ)

SLIMが大きな注目を集めると同時に、月探査情報ステーションや私(編集長=寺薗)自身にも多くの質問が寄せられています。ここでは、そのような質問のうち、よく寄せられれるものをご紹介していきます。
なお、本ページは随時更新し、質問とその回答を追加していきます。

■SLIMはなんと読むのですか?
 「スリム」と読みます。

■LEV-1、LEV-2はなんと読むのですか?
 それぞれ「レブ・ワン」「レブ・ツー」と読みます。

■SLIMはどのくらいの大きさなのですか?
 長さが2.4メートル、幅が2.7メートル、高さが1.7メートルです。高さは大人の背丈ほどです。
 また、長さと幅が2メートル台で、例えるなら4畳半の部屋より少し小さいくらいです。

■SLIMはなぜ月に行ったのですか?
 SLIMは、月に軟着陸するための技術を実証する(確かめる)ことが大きな目的です。また、世界ではじめて、あらかじめ狙った場所(誤差100メートル以内)にピンポイントで着陸する技術を試します。その他にも、斜面のような本来軟着陸に向かない場所に降りるための二段階着陸、あらかじめ自分自身が持っている地図とカメラで撮影された画像を照らし合わせながら飛行・着陸する技術(画像照合広報)など、先端的な技術を実証します。

■重力天体とはなんですか?
 重力天体とは、地球に比べてそこそこ大きな重力を持つ天体のことです。具体的には月や火星、金星などです。
 日本はこれまで、「はやぶさ」や「はやぶさ2」で、小惑星への着陸(タッチダウン)を行った経験はあります。これらの小惑星は、表面の重力は地球の10万〜100万分の1という小ささで、ほぼないに等しいといってもよいでしょう。こういった天体に着陸する場合、天体の重力はほとんど考えなくてもいいので、天体に重力で引っ張られる降下をほとんど考えずに着陸計画を組むことができます。
 一方、月の重力は地球の約6分の1、火星の重力は地球の約3分の1です。こういった天体の場合、地球よりは小さいとはいってもそれなりに強い重力があるため、着陸するためには天体の重力(引力…引っ張られる力)を考慮に入れる必要があり、着陸させることが難しくなります。具体的には、天体に引っ張られるため、その力を上回る力で探査機を減速させて着陸する必要があります。そのためには逆噴射といった技術が一般的に使われますが、噴射のタイミングや噴射時間を間違えると、引っ張られる力のほうが強すぎ、天体表面に激突することになります。こういった点で、月や火星といった重力天体への着陸は難しいのです。

■SLIMは地球に帰ってくるのですか? サンプルなどを持ち帰る予定はあるのですか?
SLIMは月に着陸したら、そのまま月に滞在します。地球に戻ってくることはありません。また、サンプルを持ち帰るということもしません。ずっとそのまま月面にとどまり続けます。

■越夜とはなんですか? なぜ「越夜は厳しい」といわれるのですか?
越夜(えつや)とは、特に月面において探査機や観測機器が夜を越えて動作することです。
月は地球とは違い、1日(太陽が上ってから沈み、夜を迎えてまた太陽が上ること)が約29日です。つまり、太陽が月の表面の上に出ている「昼」が約14日、太陽が地面の下に沈む「夜」が約14日となります。また、地球のように空気がないため、太陽の光が拡散したりすることはないため、太陽が地面の下に沈むとすぐに暗くなりますので、太陽が地面の下に沈むとすぐに暗くなります。
また、空気がないことの影響で、月の環境は昼と夜で極端に変わります。月の表面は、昼は摂氏100度、夜は摂氏マイナス170度と、300度近い温度差があります。特に夜は非常に低い温度になるため、月面にいる探査機や観測装置の電子機器や電池などが故障してしまう可能性があります。
また、月の夜には太陽の光が当たらないため、太陽光による発電ができません。このため、月の夜の間は、昼間に蓄えた電気などのエネルギーを使って発電・発熱するか、原子力電池のように太陽光に頼らないエネルギー源を使う必要があります。
このように、月面にいる探査機が夜を越えるためには、そのための特別な工夫が必要になります。過去、月の夜を越えて動作を続けた探査機は、そのほとんどが原子力電池を使用しています。
SLIMは夜を越えるための保温装置や原子力電池などのエネルギー源は搭載していません。そのため、月の夜の極端な低温で搭載電子機器が故障する可能性が大きいのです。2月末に月の夜を越えて復活したことはまさに驚くべきことであるといえるでしょう。