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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年3月11日〜20日
「スピリット」はクレーターの中を探査せず (2004年3月20日17:30)
「スピリット」は、クレーター「ボンネビル」の縁を探査し続けています。ここにはいろいろな堆積物などがあって、掘削探査などに科学者が興味を持っています。
パノラマ写真を分析したところ、遠くには、「スピリット」が着陸したグセフ・クレーターの縁の壁がみえていることもわかってきました。これまではぼんやりとしていてみえなかったのですが、大気の透明度が上がって(浮遊しているちりが減って)、ようやくみえるようになってきたみたいです。さすがに直径160キロ以上のクレーターだけあって、壁の高さは2.5キロメートルにも及ぶようです。
ボンネビル・クレーターからみる、「スピリット」の次の目的地「コロンビア・ヒル」 さて、その「スピリット」ですが、いま探査を続けている「ボンネビル」の中には降りないことになりました。その危険に見合う、科学的に魅力がある探査対象がないという、プロジェクトチームの判断によるものです。その代わり、クレーターの縁を数日間調査したあと、近くの(といっても3〜4キロは離れていますが)「コロンビア・ヒル」へと向かうことになりました。これは、2月にNASAにより、スペースシャトル「コロンビア」の乗組員を追悼して命名された丘です。
丘の周辺には、このグセフ・クレーターの平原を構成している地層とは別の地層があるかも知れないと期待されています。

「ブルーベリー」が火星の水の謎を解く (2004年3月19日23:50)
皆さんは、以前話題になった「ブルーベリー」を覚えていらっしゃいますか? そう、火星の土の中にあった、直径数ミリの丸い球です。この研究から、実はこの丸い球が、水に大いに関係していることが分かってきました。
「ブルーベリー」の顕微鏡写真 この「ブルーベリー」、どこにあったかというと、2号機「オポチュニティ」が探査していた岩やその周辺の土の中に、大量に埋もれていました。この粒1つ1つは非常に小さくて、ローバが誇るスペクトロメータでも分析するのは困難でした。そこで、この粒がたくさん集まっている場所「ベリー・ボール」(Berry Bowl=ブルーベリーが入ったお椀)全体を分析することにしました。
そして、メスバウワースペクトロメータによる分析の結果、このブルーベリーの固まりと、その下にある岩との間に、組成の大きな違いがあることがわかりました。そして、それが非常に興味深い結果だったのです。
「結果として、赤鉄鉱(ヘマタイト)の痕跡がみつかった。そこで、結論として、この『ブルーベリー』の中に入っている、鉄を含む鉱物はヘマタイトであろう。」こう述べているのは、このメスバウワースペクトロメータの共同研究者である、ドイツ・マインツ大学のダニエル・ロディオノフ (Daniel Rodionov) 氏です。

もう一度、赤鉄鉱のことを思い出してみましょう。これは、もともと「オポチュニティ」がこの場所に降りるきっかけになった鉱物です。着陸点があるメリディアニ平原は、この赤鉄鉱が多いことが過去の探査で知られていました。そして赤鉄鉱は、水が存在する環境でできる鉱物なのです。
さて、地球上では、この球くらいの大きさの赤鉄鉱の結晶は、水がある環境でできることが分かっています。科学者たちは、既にこの小球が、水中の堆積物の環境下でできたことを突き止めています。小球が互いにつながっていたり、岩の中でバラバラな向きに分布していることなどから、他の可能性が考えにくくなってきていましたが、今回の結果は、さらにその結論を補強するものになってきています。さらに興味深いことは、鉄が含まれていたことから、そのときの水には鉄分が含まれていたと考えられることです。
この小球は、露出していた岩から風化によってこぼれ落ちてきたものと考えられます。しかし、この岩そのものの中にも小球がいっぱいありましたし、さらに赤鉄鉱もみつけています。これは、一度水中に没した堆積物から染み出してきたものかも知れません。というのは、このメリディアニ平原一帯に豊富に赤鉄鉱が分布しているからです。クレーターの中にそこから赤鉄鉱そのものが「染み出して」きたと考えられなくもありません。
ハーバード大学のアンドリュー・クノール博士は、やや大胆とも思える説を述べています。「このメリディアニ平原の一帯に、ブルーベリーを多量に含む地層があるのかも知れない。」もしそうであるとすると、かつてはもっと大きな露出領域があって、それが侵食などによって小さくなってしまったのかも知れません。
さてこの大胆な仮説が当たっているのか。「オポチュニティ」はもうしばらく、このブルーベリーの分布を調べたりするため、着陸した小クレーターの探査を続けます。その後はいよいよクレーターの外…赤鉄鉱が豊富に含まれた、メリディアニ平原の上に出て、さらに大きなクレーターを目指すことになっています。それは、なんと750メートルも先です。

大きなクレーターであればより深く地面を掘り下げているので、より深いところの様子が分かるはずです。しかし、「スピリット」が300メートル以上離れたクレーターに向かうのも相当大変でしたから、この750メートルの旅がさらに困難なものになることは想像に難くありません。そのリスクを考えても科学的により多くの成果が得られることを優先するという判断なのでしょう。ぜひこの長旅が成功することを期待したいところです。

「オポチュニティ」は一旦帰宅 (2004年3月18日19:00)
一旦着陸点付近まで戻った「オポチュニティ」 2号機「オポチュニティ」は、露出していた岩の探査をほぼ終えました。ここ数日は、露出していた岩「鮫の歯岩」の調査を行っていましたが、それもひとまず終了しています。第51日(アメリカ現地時間で3月16日)には、その「鮫の歯岩」を小型熱放射スペクトロメータで観測しました。
今は新しい観測対象を探して動いているところですが、その途中で、着陸点(チャレンジャー・メモリアル・ステーション)のすぐ脇を通りました。また、左の方には、第23日に掘った溝もみえます。この写真を撮った場所は、着陸点から約6.2メートル離れています。
こうしてみると、ローバがいかに縦横(無尽?)に動いていたかがわかります。着陸点の周りについている丸い印は、エアバッグがバウンドした跡です。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)
撮影された写真の説明 (英語)

いつかきた道 (2004年3月18日18:40)
ボンネビル・クレーターへの道 「スピリット」が、ここまでどんな風に走ってきたかを示した写真があります。
この写真は、上の方に着陸点があります。こうしてみると、最初の頃に探査した岩「アディロンダック」はいかに着陸点のそばにあったかがよく分かります。
その後、徐々に移動しつつ、クレーターの縁までたどり着いています。遠近法のせいもあるのですが、最後の方はかなりジグザグに動いているようにみえます。
着陸点からここまでの距離は約328メートル。もちろん地球上ではどうということのない距離ですが、火星で、しかも無人でここまで走ってくるということは、たいへんなことだったと思います。

動きまくって掘りまくる「スピリット」 (2004年3月18日18:20)
ここのところ、「スピリット」は非常に忙しい時間を過ごしています。火星での第70〜71日(アメリカ現地時間で3月15〜16日)にかけては、「スピリット」は写真を撮りまくったり、スペクトロメータによる観測を行ったりしていました。あまりに全ての機器が全開状態で動いていたため、第70日の朝には一時的に「お休み」をいただいて、電池を充電しなければならなくなるほどでした。
さて、この第70日、「スピリット」はクレーター「ボンネビル」の縁に沿って約18メートルほどドライブし、「サーペント」(Serpent=「ヘビ」の意味)と名付けられた吹きだまりのような場所へ到着しています。
いま、「スピリット」はここで、掘削作業を行っています。例によって車輪を使って掘る作業です。この作業のために、「スピリット」は激しく動き回りました。まず2.5メートル前進したあと右に曲がり、次に左に5度。その後は10センチメートルバックして、掘削作業を行ったあと、また1メートルほど後退、パノラマカメラなどによる写真撮影のあとさらに40センチ前進し、また写真を撮ったあとさらに45センチ前進…と、掘削や観測のために激しく小刻みに動き回っています。
この後「スピリット」は、掘削した溝の観測を行うほか、夜間にも大気観測などを行います。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

本日の2台 (2004年3月15日17:50)
あまりぱっとしたネタがないこともあって、今日は2台のトピックスをまとめてご紹介することにします。題名もぱっとしませんが…。
「スピリット」は、クレーター「ボンネビル」の探査をはじめています。既に360度パノラマ画像を撮影しており、そのデータを地球に送ってきています。もちろん単に記念写真を撮ったわけではなく、今後の探査のために必要な写真なのです。
火星での第69日の間に、「スピリット」から地球に送られたデータの量は約28メガバイトに達しました。フロッピーディスク約20枚ほどのデータ量になります。火星からこれだけの量を1日で送ってくるというのもすごいものです。
「スピリット」は、一昨日のトピックスにもあった上空の探査機との協調大気観測を行ったほか、クレーターの北縁に落ちている耐熱シールド(探査機着陸時に熱から保護するための保護板。着陸する前に切り離された)の撮影も行いました。しばらくは今の位置から写真撮影などを行う予定になっています。

「オポチュニティ」は、これまで探査していた通称「ベリー・ボール」(Berry Bowl)地域から移動し、今度は「シューメーカーの中庭」(Shoemaker's Patio)と名付けられた地域に向かっています。これは、「オポチュニティ」がずっと調査を続けている露出した岩石の、南西側のいちばん端にあたります。
さて、この「シューメーカー」とは、月・惑星における地質学に大きく貢献した地質学者、ユージン・シューメーカー博士にちなんだものです。アポロ計画をはじめとして、月・惑星探査計画に大きな足跡を残し、1997年に調査先のオーストラリアで交通事故で亡くなりました。中庭くらいの小さい地域ですが、彼の名前もまた、火星に残ることになりました。
科学者たちが探査対象として注目しているのは、この中庭の端の方にある岩「シャーク・テュース」(直訳すると「鮫の歯岩」。Shark's Tooth)です。まだローバはこの岩までたどり着いていません。
そして、この日の「オポチュニティ」のお目覚めの音楽は、もちろん、「ジョーズのテーマ」でした。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

こちらは上をみたり下をみたり (2004年3月13日23:20)
火星の衛星フォボスによる日食 もう1台のローバ「オポチュニティ」。こちらは、上をみたり下をみたりと、カメラが大活躍しています。
左の写真は、以前のトピックスでもお伝えした、火星の衛星による日食の写真です。こちらは、フォボスによる日食の写真。ダイモスによる日食の写真は、ギャラリーのページでご覧いただけます。このような日食観測を行うことで、衛星の形状や軌道などをより正確に決めることができます。
また、もう1つ上を見上げている機器があります。小型熱放射スペクトロメータです。これは、大気の温度を調べるこれは、大気の温度を調べるための観測で、実はほぼ同じタイミングで着陸点付近を見下ろしているマーズ・グローバル・サーベイヤ(こちらも同種の観測機器を積んでいます)の観測結果とあわせて、火星大気の温度構造を調べようという試みです。
一方で、この観測機器は、地面を見下ろして観測すべき重要な目標があります。赤鉄鉱(ヘマタイト)です。
これまでの観測で、ローバが着陸したクレーターの中にヘマタイトが存在していることは確認できました。また、クレーターの外に広がる平原には多くのヘマタイトが存在しています。
ところが、一部にはヘマタイトがまったく見当たらない場所があるのです。これは、多分クレーターができたあとに、さらに別のクレーター、あるいは何らかの侵食作用などがあって、表面にあったヘマタイトに富む層が削り取られてしまったためではないかと思われます。いずれにせよ、「オポチュニティ」は引き続き、こういったことが起きている原因を探るための調査を続けます。

見下ろすだけではなく (2004年3月13日22:20)
「スピリット」から撮影された地球 一方、「スピリット」は見下ろしているだけではありません。ローバ搭載のカメラで、オリオン座や地球などの写真も撮影しています。これは、夜の間の火星の大気の様子を調べるために、星の写真を使うテストです。
左の写真は、「スピリット」から撮影された地球です。撮影は明け方に行われているので、やや空が白みがかっている様子がお分かりいただけるでしょう。あまりに小さく写っているので、写真には「You are here」(ここだよ)と書いてあります。多分、別の惑星の表面から撮影された地球の映像をみるのは、はじめてのことになるのではないでしょうか。

「スピリット」、クレーター「ボンネビル」に到着 (2004年3月13日22:00)
長い長いドライブの末、ようやく「スピリット」は目標地点に到着しました。
JPLの「スピリット」ミッション・マネージャのジェニファー・トロスパー氏は、「この1週間は、両方のローバにとって非常にエキサイティングで、かつ収穫の多い1週間だった」と振り返っています。
ボンネビル・クレーター この数週間、「スピリット」は、着陸点から300メートルほど離れたクレーター「ボンネビル」に向けて走ってきました。そして、いまローバは、クレーターの縁に立っています。このクレーターの縁から、クレーターを見下ろした写真も届きました。向こうの縁までの距離は、アメリカ人が好きな表現方法でいうと「フットボール場2つ分くらい」といいますから、200メートル以上あると思われます。「オポチュニティ」が着陸したクレーターに比べても10倍以上ある、結構大きなクレーターということになります。
今のところ、「スピリット」が撮影した写真からは、「オポチュニティ」が着陸したクレーターにあるような層構造は、クレーターの壁からは発見されていません。ただ、縁の遠いところには、岩の構造を知るための何らかの手がかりがありそうと、科学者はみています。
いずれにしても、まだ到着したばかりで、これからの調査を待たなければいけません。今後、パノラマカメラ小型熱放射スペクトロメータなどによる探査が行われる予定です。これらの結果を得てから、さらにローバをクレーターのどのあたりに走らせていくか、科学者や技術者が決めていくことになります。
なお、現時点での「スピリット」の総走行距離は、335メートルに達しました。

さあ、いよいよ縁がみえた (2004年3月11日18:30)
「スピリット」は、目標地点であるクレーター「ボンネビル」への走行を続けています。そして、もう間もなく到着というところまで来ました。
「スピリット」が走ってきた跡 「スピリット」の第65日(アメリカ現地時間で3月10日)、ローバは「セレンディピティ・トレンチ」(直訳すると、偶然に発見した溝、という感じでしょうか)の調査を行いました。そして、これまでで最も長い、地上からの指令による走行を行いました。今回の走行では、一気に27メートルも走りました。さらにその後、自律走行で6メートルの走行を行いました。
上の写真は、「スピリット」が後ろを振り返って撮影したものです。おわかりの通り、いま「スピリット」が走っているあたりは、岩(=障害物)がたくさんある、自律走行が難しい場所です。そのため、ローバもなかなかうまく走ることができず、前日と同じように一進一退を繰り返してしまいました。そのため、この日の1日の走行距離は合計で40.7メートルにも達してしまいました。
いずれにしても、「スピリット」はこれで目的地「ボンネビル」の縁に到着しました。今は、カメラで向こう側の縁もみえるくらいのところにいます。この後、「スピリット」はクレーターの縁のてっぺんに上り、そこからクレーターの中の360度パノラマ写真を撮影する予定です。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「オポチュニティ」の折り返し点 (2004年3月11日17:00)
先日、2台のローバの滞在日数合計が100日を超えたというトピックスをお届けしましたが、やはり早いもので、今度は2号機の「オポチュニティ」の滞在日数が、火星日で45日を超えました。
ローバは、計画では約90日にわたって火星表面で活動を続けることになっていますので、ミッションとしてちょうど折り返し点を迎えたことになります。
この日は、ローバは「フラットロック」と名付けられた領域にある「モジョ2」という場所への穴掘りを行い、顕微鏡カメラを使って5枚の写真を撮影しました。
また、パノラマカメラにより周辺の様子を撮影したほか、別の「スリック・ロック」(Slick Rock=直訳すると「すべすべした岩」)という場所などの撮影も行いました。火星での第46日には、科学観測機器で、「ベリー・ボール」(Berry Bowl)という領域の調査を行う予定です。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

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