マーズ・エクスプロレーション・ローバ 科学機器
岩石研磨装置(RAT)を使って、岩を分析するローバ。(絵をクリックするとより大きな絵が表示されます。大きさ: 172KB)(CG: NASA)
火星の岩石を分析するための科学機器
マーズ・エクスプロレーション・ローバには、火星の岩石を分析するための科学機器が搭載されています。小型のローバではありますが、積まれている観測機器は多彩です。
- パノラマカメラ (Pancam: Panoramic Camera)
- ローバの誘導用カメラですが、着陸点の周囲や表面の様子の高精度画像を撮影します。
- 小型熱放射スペクトロメータ (Mini-TES: Miniature Thermal Emission Spectrometer)
- 167帯域で赤外線放射スペクトルを測定することにより、岩石の鉱物組成(特に、炭酸塩鉱物やケイ酸塩鉱物、有機物や水成鉱物など)を調べることができます。また、赤外線測定という点を活かして、火星大気の温度測定なども行います。
- アルファ粒子・X線スペクトロメータ (APXS: Alpha Particle X-Ray Spectrometer)
- アルファ粒子とX線を岩石に照射し、そのスペクトルを調べることで、岩石の中に含まれる元素の種類や量を知ることができます。
- メスバウワースペクトロメータ (MB: Mössbauer Spectrometer)
- 主に鉄を含む鉱物を調べるために使われる特殊なスペクトロメータです。鉄を含む鉱物の量や状態を調べるほか、それらの鉱物の磁気特性なども明らかにします。これで、(液体の水が存在した)初期の火星の環境を明らかにします。
- 顕微鏡カメラ (MI: Microscopic Imager)
- 顕微鏡とカメラが合わさったツールで、岩石の微細組織を映し出します。水が流れてできたと思われる岩石の構造を知るために使われます。
- 岩石研磨装置 (RAT: Rock Abrasion Tool)
- ちょうど地質学者がハンマーで岩石を割って中味を調べるように、火星表面の岩石の内部を露出させるために使われます。内部の輪が岩石を最大5ミリメートルほど研磨し、岩石の表面を露出させます。
これらの科学機器はまとめて、アテナ科学パッケージ(Athena Science Package)と呼ばれています。
このパッケージによる解析が行われれば、以下のようなさまざまな事柄が解明できると期待できます。
- 水の存在につながる、岩石の構造の解明(含水鉱物の存在の確認や、蒸発、固化など、水の作用によると思われる岩石内の構造の発見)
- 着陸点周囲の地質構造の解析(水が流れたと考えられている地域の地質構造の解明)
- 着陸点周辺の鉱物や岩石、砂などの空間分布の解明
- 着陸点周辺の地史の解明
- これまでの火星探査機が取得したリモートセンシングデータとの比較
- 鉄を含む鉱物の分析による、火星表面の水による鉱物生成プロセスの解明
- 地質学的な側面からの、鉱物の集積や組織構造の解明
- かつて液体の水が流れていた頃の火星環境の解明
火星の岩石を詳細に調べる
これらの測定機器を積んだローバは、いわば「火星の動く科学実験室」として、あるいは「ロボット地質学者」として、着陸点周囲の岩石を詳細に調べます。これまでも、着陸機やローバなどにより、火星の表面の岩石はさまざまに調べられてきましたが、今回はより進化した測定器による測定が行われることで、これまでと比べてもより精度の高い岩石の解析が期待できます。
また、岩石研磨装置などにより、これまでのように表面の(風化した)測定にとどまっていた岩石の解析から一歩踏み出し、火星岩石の真の姿を明らかにすることが期待されます。
「火星の生命」の証拠が、火星から来た隕石の内部に眠っていたことを思い出してください。岩石の内部を詳細に調べることができれば、火星の岩石の素顔だけでなく、火星の表面の水に関するデータや、さらには生命につながる何らかの手掛かりまでえられるかも知れません。
関連リンク
アテナ科学パッケージのウェブサイト (アメリカ・コーネル大学: 英語)
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