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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年3月21日〜31日
「オポチュニティ」はライオン・キングのように (2004年3月30日21:40)
こちらの方は映画、あるいはミュージカルのような感じでしょうか。
ライオン・キング・パノラマ 「オポチュニティ」は、イーグル・クレーター周辺での調査を続けています。「オポチュニティ」は搭載しているパノラマカメラで周辺の写真を撮影したのですが、それが、まるで突き出た岩から周りの風景を撮影しているようにみえたため、ローバチームではその写真を「ライオン・キング・パノラマ」と名付けました。さながら、プライド・ロックから周囲を見渡しているようにみえたのでしょうね。もっとも、まわりはサバンナではなく、草一つ生えていない砂漠のような風景ですが。
このパノラマ写真を撮影したため、「オポチュニティ」の内蔵メモリがほとんどいっぱいになってしまい、61日めの観測は最小限にすることになりました。左の写真も、高解像度版のサイズが10MB近くありますので、ご覧の際にはご注意下さい。
もちろん、この日のお目覚めの曲は、エルトン・ジョンの「サークル・オブ・ライフ」(「ライオン・キング」の主題歌)となりました。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

ニューヨークを削れ (2004年3月30日21:30)
「スピリット」は、以前のトピックスにもあったように、マザトザールという岩の調査を続けています。いよいよ、岩石研磨装置を使って、この岩に穴を開ける作業を行いました。
「ニューヨーク」と名付けられた場所に穴を開けました。穴の深さは3.79ミリメートル(随分正確にわかるものですね)、かかった時間は3時間45分です。岩が角張っていたため、これまでに比べ難しい作業となったようです。なお、お目覚めの曲は、マンハッタン・トランスファーの Boy from New York City だったそうです。
なお、「スピリット」の走行距離は、この日(アメリカ現地時間で26日)までに492メートルにも達しました。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「オポチュニティ」もロングドライブへ (2004年3月30日21:20)
「スピリット」が長旅に出かける一方で、「オポチュニティ」も新しい目的に向かって進むことになりました。
ようやく、着陸したイーグル・クレーターの外に出た「オポチュニティ」ですが、このローバの新たな目的地は、既にお知らせした通り、「エンデュランス」というクレーターになります。これは、イーグル・クレーターから約7050メートル離れたところにあります。ここには、より厚い岩層があるのではないかと、科学者が期待を寄せています。
イーグル・クレーター周辺では、5ヶ所で岩の調査を行いました。砂の大きさと形を調べた結果、風による作用が働いていることがわかってきました。ある領域では、風によって細かい砂が飛ばされてしまい、大きな粒径の砂しか残されていませんでした。
また、話題の小粒「ブルーベリー」ですが、いくつかの領域では、クレーター内よりもさらに多く見つかりました。このような領域でメスバウワースペクトロメータを使った調査を行ったところ、これまでの調査で得られた結果より高い濃度で赤鉄鉱(ヘマタイト)が存在していることが分かりました。
これが何を意味しているのか、今後の調査を待つことになりますが、水に関連した赤鉄鉱が高い濃度で存在していることから、赤鉄鉱とブルーベリー、そして水との関係を解く、すっきりとした仮説を作ることが必要になりそうです。

「スピリット」、いよいよ延長戦へ (2004年3月30日21:00)
出張などが重なってしまって、更新が途絶えてしまいました。失礼しました。
さて、1号機「スピリット」は、間もなく3ヶ月のミッションの基本期間を終えますが、その後、さらに延長ミッション(extended mission)として、着陸点の東にある「コロンビア・ヒル」を目指して走ることになりました。
このコロンビア・ヒルは古い岩でできている領域のようです。そのまわりを新しい時代の火山岩に囲まれています。古い岩ならば、当然、グセフ・クレーターが水で満たされていた頃の痕跡が残っている可能性が出てきます。
実は、「スピリット」が苦労して走ってきたボンネビル・クレーターについて、科学者たちは、クレーターができたときに掘り返した地下の地層がみえるのではないか、と期待をしていました。ところが、調査を進めてみたところ、思ったような深い層が露出していないことが分かりました。そのため、現在進めているクレーターの縁の調査が終わり次第、ローバを早めにコロンビア・ヒルへ差し向けることにしたのです。

今のところ、2台のローバとも非常に順調に動作しており、NASAでは、ローバはさらに数ヶ月延長して運用できると考えているようです。「スピリット」の新たな旅立ちは、アメリカ現地時間で3月28日頃になるようです。この長旅の距離は約2.3キロ、今までとはさらに困難な旅程が待ち構えています。この道々、興味深い対象を探査しながら進むことになります。
距離が長いだけでなく、期間も長くなります。そのため、これまで「火星時間」で勤務してきたローバのスタッフが、地球時間での(つまり、通常の時間での)勤務を行うことになりました。長丁場になるために、なるべく負担が少なくなるようにするためです。来週からは「スピリット」のチームが、さらに数週間後には、「オポチュニティ」のチームも、この勤務体制に変わります。
この先、どこまでローバがもつかわかりませんが、いろいろな成果を挙げてきている「スピリット」が、延長戦でどのようなデータを私たちにもたらしてくれるのか、まだまだ目が離せません。

巣立ち後の初仕事 (2004年3月26日23:10)
「オポチュニティ」が着陸点であるイーグル・クレーターを脱出してからはじめての仕事は、周辺にあった白っぽい色の砂の分析です。「ブライトスポット」(Bright Spot)と名付けられた場所を、科学機器により分析しています。
仕事としては比較的「軽い」仕事だったため、ローバ内蔵の電池の充電もできました。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

ドアにご注意 (2004年3月26日22:40)
「スピリット」は、ボンネビル・クレーターのまわりで、岩の測定を続けています。火星滞在第80日めとなった25日(アメリカ現地時間)には、「マザトザール」(Mazatzal)と名付けられた岩の測定を、前日に続いて行いました。
といっても、実は前日には、測定機器の一つのアルファ粒子・X線スペクトロメータのドアが開かなくなってしまって、測定ができなかったのです。
この「マザトザール」という岩は、どうやら地質用語で「風食礫」(ふうしょくれき)というものではないかとみられています。これは、風によって侵食されてできる礫(小石)で、この地域ではよく見られる岩です。特に、北西方向から吹いてくる風によって、岩が削られたのではないかと、科学者は考えています。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「オポチュニティ」、脱出に成功 (2004年3月26日22:30)
数多くの成果を生み出した「巣」から、ついに巣立つときが来ました。
「オポチュニティ」が着陸したクレーターを振り返って 「オポチュニティ」は、着陸した小クレーター「イーグル」から、ついに脱出しました。この写真は、そのクレーターから出たあと後ろを振り返って撮影した360度パノラマ写真です。写真でみると小さい場所のようにみえるのですが、この中で行ってきた2ヶ月近い探査で、極めて重要な成果が生み出されたわけです。
このクレーターから、わだちがずっと続いているのが、写真でお分かりいただけると思います。写真をみていますと、左の方に、2つの小さな窪みがあるのがおわかりでしょうか。窪みの中には、小さな丸く白い点があります。この白い物質は、ひょっとすると、クレーターの中にあった白い岩と同じものかも知れません。そのまわりの黒っぽいものは、侵食などにより生み出されたものと思われます。いずれにしても、この窪みを分析することで、周辺一帯の地質を知る手がかりが得られそうです。
とりあえず、この窪みのうち、ローバに近い方は「ホームプレート」(homeplate。野球の本塁(ホーム)の意味)、もう1つは「ファーストベース」(first base。野球の一塁)と名付けられました。命名の理由は、形が似ているから…?

2台のローバを延長運用へ (2004年3月25日16:00)
今回の「海の確実な証拠」のプレスリリースの中で、いろいろな報道であまり触れられていない重要な記事がありました。
大発見が相次いでいる2台のローバ「スピリット」と「オポチュニティ」について、NASA/JPLの技術者は、当初3ヶ月程度としていた運用を、さらに数ヶ月延長することを考えはじめています。
ローバの寿命は、内蔵している電池の劣化状況や、太陽電池に降り積もる砂などによる発電量の低下などで決まってきます。そのため、もしローバの具合さえよければ(そして、地球上でも通信に関して問題がなければ)、ローバをさらに長く運用することは可能です。
今回の話は、数多くの発見が相次いでいて、様々な探査が必要になっていることを受けた措置だと思われます。まだ完全に決定したわけではなく、おそらく今後ローバの状況などをみながら、どのくらい長く運用するかが決められていくと思われますが、私たちにとっては大歓迎といえるでしょう。
もっともそうなると、このページの運用もずっと続くので、たいへんといえばたいへんなのですが…。

「オポチュニティ」は火星のなぎさの跡に降りた? (2004年3月25日15:50更新)
「オポチュニティ」が着陸した場所は、実は火星の海の波打ち際…なぎさのような場所であったということが分かってきました。今回のミッションの科学探査責任者である、コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士は、「オポチュニティは、塩分を含んだ火星の海のなぎさだった場所に着陸したようだ」と語っています。
ローバの科学チームメンバーであるジョン・グロジンガー博士によると、層をなしている岩の中に含まれる砂くらいの大きさの粒の中に、波の力を受けて固まったと思われるようなものがあるということです。推定では、そのときの水の深さは5センチ以上、恐らくはもっと深いものではないかと考えられています。また、水自体は秒速10〜50センチほどで動いていたと考えられるそうです。
層の中には、ゆるく堆積した物質が流れてできるような模様などもみつかっています。同じように「流れる」というと、風でもできるように思われますが、グロジンガー博士によると、みつかった模様は風によってできるものとは異なるということで、液体の水によってできた可能性が高いということです。特に今回の証拠は、これまでみつかってきたものよりもさらに、水でできたものという可能性が高いということです。
こういう環境を作り出せる場所として、グロジンガー博士が考えているのは、海岸や砂漠の塩湖のような環境です。水が時折は溜まり、時折は干上がるような場所で、水の流れや波が発生して、それが岩に残っていたのではないかと考えられます。
このような仮説を支持する証拠として、以前も話題になった、塩素や臭素の存在が挙げられます。特に、臭素がたくさん存在しているということは、この岩を構成している粒子が、塩水の中で堆積してできたことを示していると考えられます。地球上でも、砂漠の中の塩湖の水などには高い濃度の臭素が含まれています。

NASAの月・惑星探査主席科学者のジェームス・ガービン (James Garvin)氏は、「火星の表面にある様々な特徴から、ここ30年の間、液体の水が存在していたという兆候はあった。しかし、ここまで具体的な証拠が火星の岩自身から得られたということはなかった。今回、マーズ・エクスプロレーション・ローバという計画を実施し、そのような証拠を探し求めた結果、私たちが期待した以上の確実な物証を得ることができた。いつか、こういった岩を火星から持ち帰り、地球の研究室で分析し、かつて生命が火星に存在できるような環境にあったかどうかを調べなければならないだろう。」と語り、火星のサンプルリターン計画の実現に意欲を示しました。
ただ、現時点では、この「海」がどのくらいの期間にわたって存在していたか、また、どのくらい昔に存在していたかは分かっていません。そのため、科学者チームでは、今後「オポチュニティ」をクレーターの外の平原地帯に送りこみ、このような手掛かりをつかむための詳細な探査を行うことを計画しています。

「オポチュニティ」、クレーターを脱出できず (2004年3月22日22:10)
着陸したクレーターから出て、周辺の平原に向かっている「オポチュニティ」が苦闘を続けています。第56日(アメリカ現地時間で3月21日)には、クレーターの壁を登って平原へと出ようとしたのですが、滑ってしまってうまくいきませんでした。技術者たちは別のルートからクレーターの壁を登ることにしようと考えています。
こんな状況の中でも観測は欠かせません。「オポチュニティ」は、「ブライアンの選択」(Brian's Choice)と名付けれられた領域の土を観測機器で観測しました。ところで、ブライアンって誰なんでしょう?
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「スピリット」はつまずかない (2004年3月22日22:00)
クレーター「ボンネビル」周辺の探査を行っているローバ「スピリット」は、クレーターの縁にある堆積物を、車輪を使って掘削する探査を続けています。
何ヶ所かの対象を探査した「スピリット」は、第74日(アメリカ現地時間で19日)の昼過ぎ、同じ領域の別の探査対象「スタブ・トゥ」(stub toe)へ移動しました。stubには「つま先にものが当たる」という意味もあるそうですから、多分、思わず蹴つまずきそうな堆積物があったのでしょう。この「スタブ・トゥ」の写真がないので表現はなんとも辛いところです。近くの堆積物の写真をみると、何となくつまずいてもおかしくないような、こんもりとした砂の小山になっているようです。
ここでもまた、ローバは前進・後退を繰り返して掘削を行いました。その後、さらにクレーターの縁沿いに走り、この日1日の走行距離は34メートルにもなりました。探査なども行った割には、随分長い距離を走ったことになります。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

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