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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年4月

「スピリット」は激走中 (2004年4月30日20:40)
「スピリット」は、走行距離をぐんぐん伸ばしつつあります。
ローバの移動を制御するソフトウェアの改良版が搭載された両ローバとも、4月には行ってからの走行距離が、それまで3ヶ月の走行距離を上回るという進歩ぶりです。中でも、「スピリット」は既に1.2キロ以上の総走行距離を記録しています。
4月はじめのローバの走行距離が600メートルそこそこでしたから、これは実に驚くべき進歩といえます。と同時に、延長ミッションの目標の1つであった「火星表面での1キロメートル以上の移動」が、既に達成されたことになります。
現在、「スピリット」は、クレーター形成によってできた物質からなると思われる、岩の少ない地域を通っています。今までとはまったく違う地質領域のようです。
「スピリット」が、この地域の岩や土などを調べ、それを上空を周回する探査機のデータと照合することにより、周回機が調べるデータの信頼度がより高まることにつながります。
しばらくは、「スピリット」は淡々と土や岩の調査を行いつつ、目的地である「コロンビア・ヒル」を目指すことになります。到着はおそらく、6月のなかばから下旬くらいになりそうです。

ローバの基本探査期間終了、2台とも新たなステージへ (2004年4月30日20:20)
2台目のローバ「オポチュニティ」も、火星に着陸してから3ヶ月を経過しました。2台のローバは、もともと90日間運用する予定でしたが、その期間を過ぎても順調に動いていることから、NASAではこの基本探査期間(primary mission: 最初の90日)に加え、さらに9月まで探査を延長することに決定しています。
この3ヶ月の基本探査期間の間に、「オポチュニティ」は811メートル走行し、2ギガバイト近いデータ、そして12429枚の写真を地球に送信してきました。
そして、火星にかつて海があったことを示す強力な証拠を発見するなど、大きな成果を挙げています。現在は、「エンデュランス」と名付けられたクレーターに向けて走行を続けています。
科学者たちは、この「エンデュランス」クレーターの中を探査するかどうか、協議をはじめています。ローバ科学者の一員であるスコット・マクレナン(Scott McLennan)博士によると、「このクレーターの中に入るかどうかが、探査の大きな分かれ目になるだろう。エンデュランス・クレーターの中に入れるか。入ったとして、再び出てこられるか?」ということのようです。確かにこうなると、「究極の選択」のようになってきます。

さて、「オポチュニティ」は先週、このクレーターに向かう途中、別の小クレーター「フラム」(Fram)の脇で一旦止まりました。フラム・クレーターは、エンデュランス・クレーターの10分の1ほどのサイズですが、このクレーターの中には、鉄に富む小さな粒がたくさんちりばめられている岩がありました。そのうちの1つ「ピルバラ」(Pilbara)に対して、岩石研磨装置を使って穴を開けて調査を行いました。
これらの岩の調査から、どのように結晶が晶出してくるかという過程が明らかにできるのではないかと期待されています。
エンデュランス・クレーターを遠くから撮った画像をみると、これまでより大きな岩石の露出層があるようにみえるとのことで、今後の調査が期待できます。

100日目の「スピリット」 (2004年4月18日22:20)
90日という所期の目的を達成して、「スピリット」は順調に動作しています。
4月15日(アメリカ現地時間)には、到着して100日が経過しました。しかし、「スピリット」はいつものように探査を行い続けています。現在は、「コロンビア・ヒル」という丘に向かって移動しています。まだ2.4キロほど先にありますが、その距離は着実に縮まりつつあります。火星に降り立ってからの「スピリット」の総走行距離は既に700メートルを超え、706.5メートルとなっています。
このところ、「スピリット」は、移動途中にみつけた「ルート66」という岩の調査を行っていました。例によって岩に穴を開けたりスペクトロメータで調べたり、といった一連の作業を行いました。
「スピリット」も負けじと(?)、1日の走行距離記録となる64メートルの走行を行いました。離れた丘に向かって、ドライブが続きます。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「オポチュニティ」、記録破りの140メートル走行 (2004年4月18日22:10)
「頭がよくなった」成果がさっそく出たようです。
「オポチュニティ」は、火星の第82日(アメリカ現地時間で4月17日)の移動で、1日の走行距離としては両ローバの最高記録となる、140.2メートルの移動を行いました。これまでは2週間ほど前にオポチュニティが行った約100メートルの移動が最高記録でしたから、それを大幅に塗り替えるものです。
最初の55メートルは、前もって取得していた画像をもとに「目をつぶったまま」走りました。このときの移動速度は平均時速120メートルにも達しました。残りは、自ら障害物を避けて移動する自律走行で進みましたが、その移動速度も時速40メートルというものでした。これだけの移動が達成できると、これから先、さらにいろいろなところへ動くことができそうです。
なお、「オポチュニティ」は現在、エンデュランス・クレーターと呼ばれる小クレーターへ向かっています。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

ローバの「頭がよくなる」 (2004年4月18日21:10)
ローバも一種のコンピュータです。以前「スピリット」が動作しなかった原因が搭載ソフトウェアにあったということがありましたが、ソフトウェアを書き換えることにより、さらに「頭をよくする」ことができるようになります。
JPLの技術者たちは、ローバの移動性能を向上させるために、ローバに搭載されているソフトウェアの改良版を送り、インストールしました。「スピリット」は12日に、「オポチュニティ」は13日遅くに、新しいソフトウェアによる動作をはじめました。
「ライオン・キング」パノラマ また、最新の「ライオン・キング」パノラマ写真が公開されました。600枚の画像をつなぎ合わせて作られたこのパノラマ写真からは、クレーターの風下側に砂が集まっている様子や、風によってできる砂の濃淡がよく見えています。もちろん、この前まで「オポチュニティ」が探査していていた小さなクレーターもよく見渡せます。

オポチュニティ、火星の隕石に似た岩をみつける (2004年4月18日20:40)
メリディアニ平原を調査しているローバ2号機「オポチュニティ」が、これまで火星ではみたこともない組成の岩を発見しました。科学者によると、この岩は実は、火星から来たとされる隕石の組成に似ているということです。
バウンス・ロック この岩は、先日まで「オポチュニティ」が分析を行っていた、「バウンス・ロック」という岩です。この岩を分析していた、ローバ科学チームでロッキード・マーチン宇宙システム所属のベントン・クラーク博士は、「この岩は、地球にあるような岩ともよく似ている」と述べています。この「似ている」という点が実は大きなポイントでして、これが、火星からやってきた隕石についての謎を解く、手がかりになるかも知れません。
地球に落ちてきた隕石の中には、火星から来たと考えられているものがあります。これは、隕石の中の空洞にわずかに含まれていた気体成分を分析すると、火星の大気の成分とぴったり一致するからなのです(詳しくは下のリンクをご参照ください)。ところが、これまで火星の周回探査機での分析では、上空からこの隕石のような岩を発見することができなかったのです。

さて、今回「バウンス・ロック」の組成を分析してみたところ、その組成は、実は火星から来たとされる隕石のうち、「シャーゴッタイト」(Shergottite)という種類の隕石に似ていることが分かりました。この「シャーゴッタイト」というのは、もともとインドのシャーゴッティというところに落ちた隕石「シャーゴッティ隕石」に似た組成を持つ隕石に名付けられていて、このシャーゴッティ隕石、及び、やはりシャーゴッタイトの1つであるEETA79001という隕石に組成が類似するのだそうです。なお、EETA79001は、1979年に南極で発見された隕石です。
EETA79001の方がより「バウンス・ロック」に近い組成を持つそうです。そして、この「バウンス・ロック」は主に輝石という鉱物からできていることも分かりました。これはこれまで2台のローバが分析してきた岩にはみられなかった特徴だというだけでなく、マーズ・グローバル・サーベイヤ探査機などの火星周回探査機で分析した火星の岩石にもみられなかった特徴です。つまり、「火星でこれまで見つからなかった岩」を、発見したことになります。
では、この岩はどこから来たのでしょうか? いま「オポチュニティ」がいるところから50キロメートルほど南西に行ったところに、さしわたし25キロほどの大きさのクレーターがあるのですが、どうもそのクレーターが「バウンス・ロック」の起源らしいのです。ところで、2001マーズ・オデッセイ探査機によると、この「オポチュニティ」がいる地点まで、岩が飛ばされてきたようなデータがあるようです。

火星から来たとされる隕石と周回探査機のデータ、そして地上におけるローバの観測。いま得られる最大限の情報を駆使して、また火星に関する新たな知見が得られたことになります。
火星から来た隕石 (火星・赤い星へ)
JPLのプレスリリース (英語)

NASA、ローバミッションを5ヶ月延長へ (2004年4月9日18:10)
NASAは、2台のローバについて、基本の3ヶ月ミッションが終了したあと、さらに5ヶ月程度、ミッションを延長すると発表しました。従って、9月まで、ローバが運用されることになります。
2台のローバが順調に運用を続けている状況を受けて、NASAでは、5ヶ月の延長運用の資金として、1500万ドル(約16億5000万円)の追加支出を行うことを決めたものです。ちなみにこの額は、ローバ計画全体額の2%程度だということです。

「『オポチュニティ』のミッションが第91日目に入れば、それ以後は全てボーナスになる」と述べているのは、JPLの火星探査計画のマネージャ、フィルー・ナデリ (Firouz Naderi)博士です。ローバが置かれている過酷な環境を考えると、必ずしも9月までミッションが続けられるかどうかは保証がありませんが、この「ボーナスステージ」は、さらに何かをみつけられるかも知れないというチャンスになります。
実際、2台のローバは極めて順調に動いています。「スピリット」は、第89日に1日の走行記録となる50.2メートルを記録し、総走行距離が617メートルにも達しました。しかし、その2日後には「オポチュニティ」が、記録破りの100メートル走行を行いました。もちろん、走行の実績だけでなく、「オポチュニティ」による火星のかつての海の痕跡の発見など、科学的な成果もたっぷりとあります。
JPLの「スピリット」ミッション副責任者のマーク・アドラー (Mark Adler)博士は、「私たちは探査を続け、グセフ・クレーターの水に関するストーリーを解き明かしたい」と述べています。
この後、「スピリット」は約3キロ離れた「コロンビア・ヒル」への移動を続け、「オポチュニティ」については、エンデュランス・クレーターへの移動を続けることになります。これらの場所で、かつての火星の水に関する痕跡を引き続き調査することになります。さらに、火星大気の観測を行って、季節的な変化を知ることも探査対象の1つになります。上空の探査機が撮影したデータと地上での岩石の調査とのデータを突き合わせて、どの程度一致するかを調べることも任務になっています。
さらに、工学的な面での目標として、
  • 移動技術を実証するために、1キロメートル以上火星表面を移動する。
  • 太陽電池を長期にわたって運用する際に、火星大気中の砂がどのような影響を及ぼすかを調べる。
  • 長期にわたって2台の探査機を遠隔運用する技術を実証する。
という3つの目標が新たに加わりました。さらに、長期にわたる運用を行うため、ミッションチームも、火星時間に合わせた運用から、地球時間に合わせた運用にシフトしました。その方が科学者や技術者への負担が少ないからです。
2台のローバの「延長戦」が決まったことで、今後どのような新しい成果がもたらされるか、さらに期待が高まってきます。

「スピリット」、90日のミッション達成 (2004年4月6日19:10)
90日間、火星の上で動き続ける---この大きな目標を、「スピリット」が達成しました。
アメリカ現地時間の4月5日、「スピリット」は第91日の朝を迎えました。これにより、当初達成すべきとされていた「90日間にわたって火星探査を行う」という目標が達成されました。
もともと、ローバは基本ミッションが90日間とされていました。しかし、その期間を過ぎても、まだまだ動けるようです。この日までに「スピリット」の総走行距離は600メートルを超えました。
この日もいつものように、「スピリット」は周辺の岩や空の観測を行いました。「ルート66」(Route 66)と名付けられた岩に近付き、小型熱放射スペクトロメータによる調査をしています。また、目的地の「コロンビア・ヒル」の写真も撮影しました。
淡々と探査を続ける「スピリット」ですが、まだまだしばらくは地球にデータを送り続けてくれるでしょう。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

「バウンス・ロック」の穴開け作業 (2004年4月3日19:20)
光り輝く岩として話題(?)の「バウンス・ロック」の調査が始まりました。「オポチュニティ」は、この岩に穴を開け、アルファ粒子・X線スペクトロメータでの測定を行いました。
第67日(アメリカ現地時間で4月2日)には、引き続き顕微鏡カメラでの観察も行われています。あと2日ほど、この「バウンス・ロック」の観測を行ったあと、目的地であるエンデュランス・クレーターへ再び出発する予定です。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

バイバイ、ボンネビル (2004年4月3日19:10)
いまから振り返ると短い探査だったかも知れませんが、「スピリット」のボンネビル・クレーターの探査が終了し、ローバは、東の「コロンビア・ヒル」に向けて動きはじめました。
この移動に際しては、指令方式と自律運転の2つの方式が試されました。指令方式はうまくいったのですが、自律方式ではうまく進むことができませんでした。結局、予定していた65メートルの走行ができず、この日(第87日、アメリカ現地時間で4月1日)は36.5メートルの前進にとどまりました(といっても、かなり進んだことには間違いありません)。
翌日(第88日)も同じように、2つの方式の組み合わせでの走行が行われました。指令方式で15メートル、自律運転で20メートル走ったのですが、自律運転では、ローバが行ったり来たりを繰り返すなど、なかなかスムーズに走るというわけにはいかないようです。
第88日の走行に先立って、近くの岩「カールスバッド」(Carlsbad)を小型熱放射スペクトロメータで調査しました。
ローバの活動状況 (英語。内容は更新されている場合があります)

鏡のような岩に向かって (2004年4月3日16:40)
「オポチュニティ」は、メリディアニ平原を移動し続けています。27日には、1日の移動距離としては最高記録となる、48.9メートルを記録しました。JPLのフライトディレクター、クリス・レウィキ氏は、「すぐに、もっともっと長い距離を走って、この記録を破る」と、かなり気合いが入ったコメントを残しています。
もちろん長い距離を走ることも重要なのですが、やはりローバは探査を行わなければなりません。いま、「オポチュニティ」は、移動途中にみつけた不思議な姿の岩「バウンス・ロック」(Bounce Rock)を調査しています。「バウンス」とは英語でバウンドのこと。この岩に、着陸のときのエアバッグのバウンドの跡があることからこの名前が付けられました。
バウンス・ロック 左の写真は、「バウンス・ロック」のクローズアップ写真です。この岩が不思議なのは、火星の他の岩とどうみても違うみかけだからです。光る表面を持っていて、「まるで鏡のよう」(ローバのパノラマカメラの主席科学者、ジム・ベル博士)だというのです。成因に非常に興味が持たれます。
なお、これまでに2台のローバが撮影した写真は、2万枚を超えました。

「スピリット」、火星の岩から水の痕跡をみつける (2004年4月3日18:40)
「スピリット」が、火星の岩から水の痕跡をみつけました。これまで調査してきた、ボンネビル・クレーターの縁にあった岩「マザトザール」が、何度か水にさらされたような後があることをみつけました。
水といっても、2号機「オポチュニティ」が発見したような、大量の水の証拠というわけではありません。ローバの科学チームメンバーであるハップ・マックスイーン (Hap McSween)博士によれば、その水というのは「量としては少なく、しかも恐らくは地下にある」ということです。
マザトザール 左の写真の岩がマザトザールです。この岩(名前の由来は、アメリカ・アリゾナ州にそびえ立つ、標高約2400メートルの山です)を調べた「スピリット」は、表面を削って内部の様子をみるという調査を行いました。岩自体は割と明るい色だったのですが、削って出てきた内部には、灰色のやや黒っぽい色の層が出てきました。さらに岩を深く削ったところ、やや白っぽい灰色の物質がやや暗い層の下にあり、両方を白い物質の筋が横切っているのが分かりました。
掘削した穴の顕微鏡写真 左は、この岩を掘削した面の顕微鏡写真です。青い矢印はマザトザールの表面を覆っている岩層を示しています。一方、真ん中付近にある黄色い矢印は、その岩層を覆っている白い物質を表しています。また、赤い矢印で示される白い筋が、上述の「横切っている筋」です。
この白い筋は、科学者によると、水がその中を通ってできたもので、その水から結晶が凝縮して、白い筋を形成したものであろうと考えられています。まだこの結論はあくまでも仮説の段階であるということですが、科学者チームではより多くのデータを集め、この説を検証していくことにしています。

一方、より強力な水の証拠が、その内部から見つかりました。アルファ粒子・X線スペクトロメータによる分析の結果です。どのくらい強力だったかというと、この機器担当の主席科学者、ルディ・リーダー博士の言葉をそのまま引用すると、「びっくり、びっくり、びっくり!! やることがいっぱいある」("Miracles, miracles, miracles. We have a lot of work to do.")。例えば、岩の中に入るほど、臭素/塩素の比が異常なほど高くなっています。これは、水による変成作用の結果であると考えられます。
マザトザールに開いた花のような穴 さて、この岩の分析の最後を飾ったのは、ちょっとした岩石アートでした。岩石研磨装置を使って5つの丸い穴を開け、最後に真ん中に1つの穴を開けるという、いわば「岩に花を咲かせる」ような作業を行いました。これは別に、火星で芸術展を開こうというわけではなく、小型熱放射スペクトロメータで観測できるくらい大きな領域を削ろうということだったのです。写真左上の、花のようにみえるものが、その穴です。
観測の結果、岩の外側と内側では、鉱物組成がかなり違ってきていることが分かりました。ただ、こちらの方はより詳細な分析が必要です。

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