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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス
2004年2月11日〜20日
「ラグナ・ホロー」に到着したスピリット (2004年2月19日23:50)
「スピリット」は、「ハロ」(Halo)と呼ばれる探査対象について、科学機器による探査を終了し、次の目的地へと向かいました。行き先は「ラグナ・ホロー」(Laguna Hollow)という愛称で呼ばれている丸いくぼ地です。「ラグナ」というと、ロサンゼルスの南にあるラグナ・ビーチが思い出されますが、今度の探査対象とどう関係しているのかはわかりません…。 いずれにしても、「スピリット」はこのラグナ・ホローへ向けて22.7メートル走りました。そのうち19メートルは障害物回避システムをオフにして、目的地を設定されたローバが自分の進路補正システムだけで走行しました。 目的地のラグナ・ホローに着いた「スピリット」は、車輪を使って表面の土を細かく揺すって、科学機器による探査をやりやすい状態にしました。「オポチュニティ」のように穴を掘るところまでは行っていませんが、この状態で「スピリット」は周辺の様子を小型熱放射スペクトロメータで撮影し、とりあえず火星の第45日の探査を終了しています。今後、このラグナ・ホローのより詳しい探査を行うことになるでしょう。
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)
「スピリット」、今度は通信速度記録を更新 (2004年2月18日23:20)
長距離ドライブ記録を更新した「スピリット」ですが、今度は通信速度記録を更新です。今までは最高の通信速度が128kbps(1秒間に128キロビット)だったのが、現在はその倍、256kbpsでの通信を行っています。 ローバには2種類のアンテナが搭載されています。上空を周回する探査機などとの通信に使われるアンテナと、地球と直接通信できるアンテナです。今回、256kbpsというハイスピードの通信ができるアンテナは、この探査機と通信するためのアンテナだと思います(プレスリリースにはこのあたりが書かれていないので、よく分かりません)。地球と直接通信するためのアンテナの通信速度は、NASAのプレス向け資料によると、最大11kbps以上となっています。 さてその「スピリット」は、現在はクレーター「ボンネビル」へ移動中です。クレーターには、衝突したときに露出した地下の物質があるかも知れません。あるいは、地下の地層などがみえるようなことも考えられるでしょう。まだまだクレーター到着までは長い道のりが続きますが、それに見合うだけの興味深い成果が、この「ボンネビル」で得られるかも知れません。
JPLのプレスリリース (英語)
「オポチュニティ」の大穴掘り (2004年2月18日14:00)
ローバ「オポチュニティ」が、車輪を使った穴掘りを行いました。 「きのう、我々は火星にきれいな大穴を開けた」と、ローバ計画担当のJPLの技術者、ジェフリー・ビーシアデッキ (Jeffery Biesiadecki)氏は述べています。この穴の開け方ですが、ローバの車輪のうち、右の前輪だけを回して、残りを固定させたまま、だんだん穴を広げていくというものです。 この「大穴」の大きさですが、長さが50センチメートル、深さは10センチメートルというのですから、なかなかの大きさ(深さ)です。研究者が考えていたよりも深く掘れたみたいです。 この穴を掘ってみて、いくつか面白い構造が土の中にみえています。まず、土が固まったような模様が、この穴の上の方にみえています。もう1つ、明るい色の土が穴の底にみえています。今後、科学者たちは、ローバに装備されている科学機器を使って、この穴の中にみえている土の本格的な解析を、2〜3日かけて行うことにしています。
JPLのプレスリリース (英語)
スピリットの「メガドライブ」 (2004年2月17日10:20)
といっても、どこかのゲーム機のことではありません。JPLの科学者たちが呼ぶ、「スピリット」の長距離ドライブの手法なのだそうです。午前と午後、2回に分けて走ることで、距離を稼ごうという仕掛けです。 「スピリット」は、火星の第43日、まず午前中に19メートル走り、一旦休んだ後、今度は午後に8.5メートル走りました。合計で1日の走行距離は27.5メートルとなり、またまた1日の走行記録を更新しました。 現在、「スピリット」はクレーター「ボンネビル」に向けて走行中です。しかし道のりは長く、これだけ走ってもあと245メートルほど残っています。 火星の第44日には、「スピリット」は探査対象「ランプ・フラット」(Ramp flat: 直訳すると「平坦な斜面」)を探査した後、ドライブを再開する予定です。
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)
「オポチュニティ」初の穴掘りへ (2004年2月16日10:30)
ローバ「オポチュニティ」が初の穴掘りに挑むことになりました。アメリカ現地時間の土曜日、「オポチュニティ」はこれまでで最長の、9メートルの走行を行い、さらにUターンして、「穴掘り」の目的地に向かいました。 この穴掘りを行う場所は、「ヘマタイト」という鉱物が多く存在すると思われる場所、通称「ヘマタイト・スロープ」(日本語だと「ヘマタイト坂」でしょうか)というところになります。 以前のトピックスでお伝えした通り、この穴掘りは、ローバの車輪を使います。車輪を1つ空回りさせて穴を掘るという仕掛けです。
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)
ぺらぺらの「ミミ」 (2004年2月15日21:30)
続いてまたも、ぺらぺらな岩の記事です。 こちらは、離れたクレーターへ移動中の「スピリット」が立ち寄った岩石群「ストーン・カウンシル」の中にあった変わった岩、「ミミ」の写真です(例によって、なぜ「ミミ」なのかは、わかりません…)。 写真の真ん中に写っている岩が「ミミ」名のですが、これまでみてきたどの岩とも違った特徴があります。そう。「ぺらぺら」なのです。まるで、何か強い圧力を受けたかのように、岩が薄く割れているのです。 何でこのような岩ができたのか、科学者たちがいくつか仮説を立てています。1つは、埋められたり衝突などがあったことによって強い圧力を受けたというもの。また、砂丘のようなところにあった砂がだんだん固まって薄い岩のようになったというもの。さらには、水の作用によってこのような薄い岩ができたというものがあります(下のトピックスの岩も確かに、薄い層を作っていますよね)。 火星にこのような、薄い岩層の岩が一般的に存在しているとしますと、月などと違い、何らかの流れる物質(流体)の作用が堆積に大きく関与していることが考えられます。今後の発見に期待しましょう。
JPLの写真の説明 (英語)
平行ではない地層が示すもの (2004年2月15日21:00)
日本語のタイトルにすると非常に平板になってしまいますが、JPLのプレスリリースは、"Unparallel Lines Give Unparalleled Clues"と、なかなかしゃれています。直訳すると「平行でない線がこれまでにない糸口を与える」となるでしょうか。うむ、ちょっとうまく訳せないですね。 とりあえず本題へ行きましょう。この写真、「オポチュニティ」が近づいて撮影した、クレーター内に露出している岩の地層です。以前の写真から、露出している岩に層があることはわかっていましたが、近づいてみると、この層が平行ではないということが分かってきました。 こういう、平行ではない地層ができるということは、この層ができるときに何らかの「動き」があったことを示唆しています。例えば、火山の噴火に伴う流れとか、風、あるいは水の流れが関与したかも知れません。特に、もし水の流れが関与していたとなると、今回の探査にも、まさに「これまでにない糸口」を与えるものになるかも知れません。
JPLの写真の説明 (英語)
ローバ観測データを教育に (2004年2月14日17:40)
ローバのデータに興奮しているのは科学者や技術者ばかりではありません。このデータは全米の学校現場で教育に使われ、高校生たちもまさに発見の真っ只中にいます。 火星から送られてきた観測データを生徒たちに直接提供することで、「将来の科学者たちに、科学のやり方を理解させる」(アリゾナ州立大学/JPLのシェリ・クラッグ氏)ことができます。彼女はこの科学データを利用した教育プログラムを展開していて、その範囲は幼稚園から高校にわたるものです。 例えば、ネバダ州シルバー・スプリングス(Silver Springs)にあるシルバー・ステート(Silver State)高校では、選ばれた高校生と研究者がペアを組んで、データの解析を行っています。その中に1人であるシャノン・タイセン君は、「本当に科学者と一緒に研究する機会ができたんだ。本当にすごい」と喜んでいます。彼と一緒にペアを組んでいる研究者であるネバダ州立大学レノ校のウェンディ・カルビン博士は、「データは全て本物で、生徒たちは我々が使うツールと同じものを使っている」と述べています。 このシルバー・ステート高校は、こういった教育活動を行っている13の高校の1つです。全米では数百人の生徒たちがこのような教育を受けており、さらには、「地球の岩を送って火星の岩と比べてみよう」というJPLのキャンペーンには、1000以上の申し込みがあったようです。
JPLのプレスリリース (英語)
ローバは「火星の風」の謎を解くか (2004年2月14日18:20)
「オポチュニティ」は、着陸したクレーター内に露出している岩の調査を続けています。岩の層を反時計回りに回りながら調査を続けていますが、科学者たちは、いくつかの地点については、後で戻ってさらに詳しい調査を行うことにしています。クレーターを調査している時にはどうしても傾斜を登ることになるため、ローバがスリップするという問題が出てきていますが、これも「坂を上る時には多めに駆動し、坂を下る時には少なめに駆動する」という形で、ちょうどバランスをとってローバは動いているようです。 さて、今回火星に送られた2台のローバには、赤外線を観測するための小型熱放射スペクトロメータという装置が積まれています。赤外線のスペクトルを調べることで、水や炭酸塩鉱物(石灰石など)がどのくらいあるかがわかるという意味でも重要なのですが、赤外線はまた(こちらの方が普通ですが)、温度を知ることにも使えます。このスペクトロメータで大気の温度を測定したところ、地表に近い大気の温度が急速に変化していることが分かりました。火星の午前中、数分の間に、地表から数十メートル付近の温度(プレスリリースでは「ビルの8階くらいの高さ」)が数度の単位で上下していることが分かりました。 科学者によると、暖かい空気の固まり、冷たい空気の固まりが、ローバの上をときどき通過しているようです。そして、ローバが観測したのは大気の「逆転層」と呼ばれる現象で、それは朝のうちに発生しているようです。地表で暖められた空気が上空へ運ばれるときに起きている現象を観測したようで、この現象についての詳しい解明が、科学者によって行われはじめています。 火星の風は、火星環境を語る上でも極めて重要です。よく、ローバ探査の目的は「水」といわれます。これも間違ってはいませんが、今の火星環境を知る上で、風は極めて重要な役割を果たしています。火星観測をされる方であれば、火星の砂嵐にはなじみ深いことでしょう。いま「オポチュニティ」が調べようとしている岩についても、風で侵食されたと思われる跡が残っています。 地面だけでなく、大気についても、ローバが何か新しいことを解き明かしてくれるかも知れません。
「ブルーベリー」の拡大写真 (2004年2月14日0:40)
先日お伝えした、「オポチュニティ」が岩石の探査中にみつけた「ブルーベリー」状の小さい球の、拡大写真が届きました。 これは、ローバ2号機「オポチュニティ」が調査を続けている、クレーター中に露出している岩「ストーン・マウンテン」のそばの土の中にある小球です。大きさは大きいもので直径数ミリメートルくらいです。 この小球の成因が解明されれば、火星のかつての環境が解明できるかも知れません。 ところで、この球がみつかった岩「ストーン・マウンテン」(Stone Mountain)ですが、この名前の由来は、アメリカ・ジョージア州のアトランタ近郊にある山の名前のようです。ここはアトランタから程近いところにあり、世界最大の花崗岩の山としても有名です。公園として整備され、アトランタの有名な観光地となっています。確かに、何となく形も地球のストーン・マウンテンに似てなくもありませんね。 もっとも、この岩もまた、JPLからは特に命名の由来は説明されていないので、本当のところはわかりませんが…。 なお、この探査についてわかりやすく表現したムービーもご覧いただけます(4.4MB、1分3秒、MPEG形式)。
「スピリット」、走行距離記録を更新 (2004年2月13日23:50)
「スピリット」が、自身が持っていた「火星ローバ1日走行距離記録」を更新しました。 着陸から第39日目、アメリカの現地時間では水曜日になりますが、この日、「スピリット」は火星の1日の間に24.4メートル走行し、自身が持っていた1日の走行距離記録21.1メートルを抜き、新記録を樹立しました。 ローバの総走行距離はこの日の終わりまでに57.4メートルとなりました。「スピリット」はいま、着陸点から250メートル離れた「ボンネビル」というクレーターへ向けて走行を続けていますが、この日は「ストーン・カウンシル」(Stone Council)と名付けられた岩石群のそばで「宿泊」することになりました。来週にはこのクレーターに到着し、内部にあると思われる地層などの調査を行う予定です。
JPLのプレスリリース (英語)
「マーズ・エクスプレス」と「スピリット」が協力 (2004年2月13日18:00)
順調に火星を周回しているヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」と、ローバ「スピリット」がタッグを組んで、火星探査を実施しています。 2月6日、「マーズ・エクスプレス」周回機がローバ「スピリット」の上空を飛行中に、周回機は地球からローバに送られるコマンドを中継し、またローバからの送信データの中継役を果たすことに成功しました。 ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のプロジェクトマネージャのルドルフ・シュミット氏は、「これは軌道上ではじめてのESA探査機とNASA探査機の通信である」と述べて意義を強調しています。「スピリット」の計画主任であるジェニファー・トロスパー氏も、「国際的な惑星間通信ネットワークが、火星に作られた」と、成果を喜んでいます。 今回の通信は、ESAとNASAの宇宙における協力関係を築くの一環として実施されました。ローバに対するコマンドは、JPLからまず、ヨーロッパにあるESAのESOC(ヨーロッパ宇宙通信センター。ドイツ・ダルムシュタットにある)に送られ、ここから「マーズ・エクスプレス」の中継を経て火星地表の「スピリット」に送られました。 国際協力という点でも重要な一歩になりますが、それだけではなく、通信の幅が広がることにより、ミッションの柔軟性や緊急時の対応の余地が広がることは、これからの火星探査にとっても重要なことであるといえるでしょう。火星探査をこれから国際協力で行っていくためにも必要な、大きな成果です。 上の写真は、「マーズ・エクスプレス」が撮影した、グセフ・クレーターの立体写真です。グセフ・クレーターは、「スピリット」が着陸した場所になります。
「スピリット」、ローバ走行距離記録を更新 (2004年2月11日12:40)
「スピリット」が記録を樹立しました。アメリカ現地時間の火曜日(火星着陸後第37日)、「スピリット」は火星の1日の間に21.2メートル走行しました。これは、1日の走行距離としては、これまでのマーズ・パスファインダのローバ「ソジャーナ」が持っていた、7メートルという記録をはるかに抜き、新記録を達成したことになります。 下のトピックスにもあるように、「スピリット」は火星表面での自律走行のテストを行い、良好に作動することを確認しています。この機能を使うと、地上からの指令を待たずに動けるために、走行距離を飛躍的に伸ばすことができます。下の「ローバの最新状況」には特に書いてありませんが、今回の長距離走行には、この自律走行機能が大いに役立ったことは間違いありません。 現在、「スピリット」は着陸点から250メートル離れたクレーター「ボンネビル」へ移動中です。
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)
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