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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年2月21日〜29日
賢い「スピリット」をさらに賢くする (2004年2月29日17:40)
「スピリット」は、着陸点から既に171メートルも離れたところにいます。しかし、まだまだ目標地点の「ボンネビル」クレーターの半分くらいのところです。なぜクレーターに向かっているのかというと、こういうクレーターは、地面を掘り返しているため、地下の物質が露出している可能性があるからです。普通に地面を調べていても見つからない、こういう地下の物質は、調査するといろいろと面白いことが見つかるかも知れないのです。
ところが、この先は、これまでとは違ってやや岩が多い場所を通らなければなりません。「スピリット」は、こういう場所ももちろん通り抜けられるようなシステムになっています。先日も、ちょっとした窪みを目の前にして、ローバは「正しい行動」(「スピリット」のミッションマネージャであるジェニファー・ハリス氏)をとりました。つまり、一旦停止して別のルートを探索したのです。
ローバはこの通り「賢く」作られているのですが、技術者たちはそれをさらに「賢く」すべく、準備を進めています。数週間以内に、技術者たちは両方のローバに対して、改良された制御用のソフトウェアを送る予定にしています。このソフトウェアにより、ローバはよりしっかりとした制御ができるようになります。
また、この改良に合わせて、「オポチュニティ」のヒーターの電源が切れるような改良も施されます。以前判明していた、動作していない時間にもヒーターの電源が入りっぱなしになっているというトラブルに対処するためです。
「スピリット」は、クレーターに向かう途中にも小休止しつつ、その周辺の砂や岩の探査を続けています。特に、顕微鏡カメラを利用した観察により、火星の風が地形に及ぼす影響を調べることができました。火星の表面には、風でできた小さな「風紋」がいっぱいあります(砂の上にできる、波のような模様)。これを調べてみますと、波の高いところには粗い砂粒が、低いところには細かい砂粒が集まっていることが分かりました。こういった観測結果は、火星の風による浸食作用がどのように起きているのかを調べる上で、貴重な資料となるのです。

中と外からクレーターを攻める (2004年2月29日17:20)
「オポチュニティ」は、ここのところ順調に、クレーター内部の岩の調査を続けています。岩石研磨装置が順調に作動したことで、両方のローバとも、全ての機械が順調に動作したことになります。すごいものです。
さて、そろそろ「オポチュニティ」のクレーター内の岩の探査も一段落しつつあるようです。技術者たちは、このローバが着陸したクレーターの外側の平原へ、ローバを走らせる計画を進めつつあります。
一方で、「スピリット」は、順調に目標地点のクレーター「ボンネビル」へと向かっています。場所は違うとはいえ、片方はクレーターの中から、片方はクレーターの外から、それぞれクレーターの縁へ向かっているわけです。ローバの科学観測の副責任者であるワシントン大学セントルイス校のレイ・アービッドソン (Ray Arvidson) 博士は、2週間くらい後に、両方のローバがこのクレーターの縁に到着する予定であると述べており、「片方はクレーターの中に入り込もうとしており、片方はクレーターの外へ出ようと考えている」と語っています。

火星の青い夕「焼け」 (2004年2月28日21:00)
「オポチュニティ」が撮影した火星の青い夕焼け 「火星の夕焼けは、青い」。何となくどこかのテレビ番組で出てきそうなせりふですが、でも、本当にそうなのです。
左の写真は、「オポチュニティ」が撮影した火星の夕焼けです。空が青くなっているので、無気味というか不思議というか、どこか別の世界(火星ですから別世界でしょうけど)に来たような感じが伝わってきます。
火星の夕焼けが青いのは、火星の大気中にある砂のせいです。太陽からの光は赤や青など、さまざまな色が混じり合っていますが、砂が、このうち青い光を、前方、つまり私たちがみている側により強く散乱させるため、私たちの眼には夕「焼け」が青くみえるのです。
なお、「オポチュニティ」が撮影した夕焼けの画像を集めて、太陽が沈んでいく様子を収めたビデオクリップ(QuickTime形式、825KB)もあります。
これをみていますと、地面に近づくにつれて、太陽の姿がだんだんぼやけてみえにくくなってきますが、これは火星の地表近くの大気により多くの砂が含まれているためです。1997年のマーズ・パスファインダのときに比べて、2倍程度多いということだそうです。

「オポチュニティ」の高度補正 (2004年2月28日20:30)
ちょっと遅れてしまいましたが、「オポチュニティ」の活動状況です。
火星の第31日(着陸日から数えてこういう呼び方をします。地球上ではアメリカ現地時間で2月25日)、ローバ「オポチュニティ」は忙しく火星の岩の探査を行っていました。前日に開けた穴に、各種の観測機器を使った調査を行ったのです。この中で最も時間がかかる調査は、メスバウワースペクトロメータによるもので、これは1日機器を探査対象(つまり穴)に当てっぱなしにしなければならないようです。
ところで、「オポチュニティ」のより正確な位置、特に高さを知るために、パノラマカメラを使った太陽の観測が行われました。太陽がどの高さにあるかをカメラで撮影し、その正確な位置を調べることで、ローバが今どこにいるか(どのくらいの高さにいるか)がわかります。
位置の情報は正確であればあるほど探査がしやすくなりますから、こういう表に出てこない探査も重要ということです。

地球を振り返る「スピリット」 (2004年2月26日17:50)
まず最初に。サーバのディスク破損があっても、このページは更新し続けます。引き続きどうぞお楽しみに。
さて、「スピリット」はいよいよ、行程の中間地点、「ミドル・グラウンド」(Middle Ground)のすぐ近くに到着しました。最後の最後、一歩近づこうとしたところで、ローバ搭載の障害物検知システムが働いて、進むことができませんでした。目標としている場所へは、火星日で翌日接近することになりそうです。
停止場所の周辺では、小型熱放射スペクトロメータメスバウワースペクトロメータなどでの観測も行っています。「スピリット」はしばらくはこの「ミドル・グラウンド」にとどまって、いろいろな観測を行う予定です。
ローバ技術者チームでは、ここでローバのパノラマカメラを使って、地球の写真を撮る計画をしているそうです。かなり小さい姿になってしまうかも知れませんが、どのような写真が撮れるのか、楽しみです。
ところで、下の最新状況ページを読んでいて、変わった単語を発見しました。"yestersol"(イエスタソル=昨火星日)というものです。火星の1日のことを「ソル」(sol)といいます。地球の「昨日」が"yesterday"、その"day"を"sol"に換えればyestersolになります。将来火星に人間が行ったときには、こんなしゃれた(?)英単語を操ることになるのでしょうか?
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)

2台とも元気にやってます (2004年2月24日22:30)
このトピックスは、基本的にJPLが発行するプレスリリースに基づいて書かれています。従って、JPLがプレスリリースを出さなければ、なかなかこのページは更新されません。ここのところあまり大きなトピックスがないせいか、ローバに直接関連したプレスリリースがなく、「ネタ」がなくなってしまっています。それでももちろん、ローバはちゃんと動いています。今日は、ローバの最新状況報告のページから、2台の状況をご報告しましょう。
「ラグナ・ホロー」の穴に伸びる「スピリット」の影 「スピリット」は、調査を行っていた窪地「ラグナ・ホロー」から離れ、再び、遠く(といっても着陸地点から250メートルですが)離れたクレーター「ボンネビル」への旅を続けています。その途中、そろそろちょうど中間地点に差しかかってきているようです。この中間地点にもJPLの技術者がちゃんと名前をつけていて、「ミドル・グラウンド」(Middle Ground)というそうです。いつもの凝った名前に比べると、今回はそのままという感じですが、たまにはストレートなネーミングもいいでしょう。
ローバは、岩などの障害物を避けるためにジグザグ走行を行っています。あと数日で、中間地点に到達できるようです。
この写真は、「ラグナ・ホロー」に開けた穴を調査している「スピリット」自身の影が、その穴に伸びているのを捉えたものです。

一方、「オポチュニティ」の方は、以前のトピックスでもお知らせした次の調査対象「エル・キャピタン」の調査を続けています。こちらは、「オポチュニティ」が着陸したクレーターの中に露出している岩の一つで、ローバはアームを動かして、その先端に取り付けられた顕微鏡カメラで46枚の写真を撮り、メスバウワースペクトロメータなどの機器を使って岩の組成などの調査を行っています。
「アームを動かして」といま簡単に書きましたが、実際には遠く離れた(電波でも10分以上かかる)火星にあるローバの、何種類もの機器がついたアームを、探査対象に向かって上手に動かし、機器を動作させるということは並大抵のことではありません。今回も、「オポチュニティ」による探査が一段落したときには、ローバのアームを動かす技術者の腕前に対し、管制室では大きな拍手が沸き起こったということです。
「オポチュニティ」は引き続きこの「エル・キャピタン」の調査を続け、近々この岩に、いよいよ岩石研磨装置を使って穴を開ける予定になっています。
ところで、2台のローバが活動を開始するとき、管制室では必ずそれぞれに「お目ざめの音楽」(wake-up music)をかけています。火星の第28日の「オポチュニティ」の音楽は、サイモンとガーファンクルの「アイ・アム・ア・ロック」(I am a Rock)だったそうです。調査対象は、岩でしたからね(という意味ではないでしょうけど…)。
ローバの最新状況 (英語。ページは最新のものに変更される場合があります)

車輪にまとわりつく砂 (2004年2月21日17:50)
「ラグナ・ホロー」と呼ばれる丸い窪地を調査している「スピリット」ですが、ちょっと変わった現象に遭遇しています。
「スピリット」の車輪に、砂がまとわりつくという現象が起きています。これは、砂が非常に細かいため、あるいは砂の中に塩分が含まれているためではないかと考えられます。
「ラグナ・ホロー」の直線上の石の配列 もう1つ見つけ出したのが、この写真にあるような表面の模様です。注目すべきなのは、この石の配列です。直線上に並んでいたり、他の場所では、小さな丸い部分を取り囲むようになっていたりします。
地球上では、こういう模様は、土が膨張と収縮を繰り返すような場所でできるということで、この火星の「ラグナ・ホロー」でも同じようなことが起きていたのかも知れません。そうすると、問題はそのような膨張と収縮を原因ということになります。考えられることとしては、凍ったり溶けたりを繰り返す、塩分を含んだ水が(地面の中で)上昇したり下降したりする(恐らく、気温が高くなったり低くなったりするのに合わせて)、といった原因が考えられます。
なお、この写真の色は、「疑似カラー画像」といって、ローバに搭載されたパノラマカメラのフィルターに特定の色を割り当てて作られたもので、実際の土の色ではありません。このように色をつける理由は、表面の模様をより目立つようにするためです。
「スピリット」は、この「ラグナ・ホロー」でも穴を掘って調査を行い、その後再び、クレーター「ボンネビル」への移動を続けます。

「オポチュニティ」が穴の底から見つけた「輝く石」 (2004年2月21日17:30)
先日、火星の大地に穴を掘ったローバ「オポチュニティ」は、その穴の詳細な調査を行っています。その結果、この穴の底の土から、これまでみたこともないような光る小石、顕微鏡カメラでも粒を見分けられないほど細かい砂などが発見されています。
穴の底からみつかった小石 「オポチュニティ」は、そのロボットアームを使って、穴の中の砂などの調査を続けています。その穴の底からみつかったのが、この写真にある小さな石です。以前みつかった丸い粒ともかなり違います。また、写真でもわかるように、光っているというのが大きな特徴です。
左の写真の範囲は、大体3センチメートルほどですので、この石の大きさは直径数ミリほどということになります。このロボットアーム、位置の精度がすばらしく、誤差は5ミリメートル以内に収まっているということです。

クレーターの底の土からみつかった丸い粒状の物質 一方、穴を掘る前に、クレーターの土からみつかった丸い粒状の物質の写真も届いています。こちらの方も写真は縦横が3センチメートルくらいですので、粒の直径は数ミリメートルというところでしょうか。
この穴の中には、上下の2層の構造があるようです。また、それぞれの層は、風化や層の作りなどに異なった特徴があるとのことで、科学者たちは、それぞれの層の成り立ちや、違いが生まれた理由を調べるために、それぞれの層を顕微鏡カメラなどでさらに詳しく調べることにしています。
この穴の調査が終わると、次の「オポチュニティ」のターゲットは、科学者たちが「エル・キャピタン」(El Capitan)と名付けた、岩が露出した地点となります。ちなみに、「エル・キャピタン」は、アメリカ・カリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園(大きな岩の景観やジャイアントセコイアなどが有名)にある巨大な花こう岩の一枚岩の名前からとったものと思われます。

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