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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年1月21日〜31日分

「オポチュニティ」、早ければ今夜にも火星の地表に (2004年1月31日17:10)
「オポチュニティ」は、早ければ今夜にも、着陸機構から離れて火星の地表に下りることになりそうです。
JPLでは、ローバを地上へ下ろす作業を24時間早めることにしました。このため、ローバの状態が順調であれば、日本時間で31日の午後5時半(もう間もなくですが)には地上へ下りる命令を地球から送信します。ローバが無事地上に降りたことが確認できるのは、その3〜4時間後である、午後8〜9時頃になりそうです。
地上に降りた「オポチュニティ」のまず最初の仕事は、周辺の土壌の分析になります。その後、約8メートルほど離れたところに露出している岩の分析(以前のトピックス参照)を行うことになりそうです。

「アディロンダック」の解析でわかってきたこと (2004年1月31日16:40)
回復しつつある「スピリット」は、探査を行っている岩「アディロンダック」の解析結果も地球に送ってきました。その結果は、プレスリリースの言葉を借りると「前代未聞」(unprecedented)のものだそうです。そこまで言わなくていいとしても、かなり興味深い結果であることは間違いありません。
まず、顕微鏡カメラによる解析の結果、岩が固く、結晶化しているものであることが分かりました。「ハンマーで叩いたら音が鳴り響く」(ローバ科学機器の主任研究者・ワシントン大学(セントルイス)のレイ・アービンソン博士)ような岩なのだそうです。
一方、メスバウワースペクトロメータによる分析では、岩の中に含まれている鉱物は、かんらん石、輝石、磁鉄鉱などであることが分かりました。この組み合わせは、地球上の玄武岩でよく見られるものです。
さらなる解析を進めるため、科学者たちはローバに搭載されている岩石研磨装置をいよいよ本格的に使って、岩の内部の分析を行う準備を進めています。これらの岩の分析を終えたあと、ローバは「ボンネビル」(Bonneville)と名付けられた、250メートルほど先の小クレーターに向けて出発する予定です。

「スピリット」、完全回復へ
次のターゲットは「ケーキ」と「ブランコ」
(2004年1月31日16:20)
「ケーキ」と「ブランコ」 不調が続いていた「スピリット」ですが、完全回復にもめどが立ってきたようです。ようやく科学データも送られてくるようになり、パノラマカメラからの映像も送信されてきています。
科学者たちは、「スピリット」の次の探査目標として、近くにある2つの岩「ケーキ」(Cake)と「ブランコ」(Blanco)(いずれの名前も、科学者がつけたニックネーム)を対象にしようと考えています。なお、現在探査を進めている「アディロンダック」という岩も、あと数日は探査を続ける予定です。
「スピリット」の完全回復に向けた作業も進められています。技術者たちは、「スピリット」のフラッシュメモリに蓄えられている、これまでの探査で得られた膨大な量の情報を消去した上で、「スピリット」を(フラッシュメモリを使用する)通常モードで運用しようと計画しています。
この写真の左の岩が「ケーキ」、右の岩が「ブランコ」です。なお、写真の左上は、カラー補正用のパターンで、「火星日時計」としても使われています。また右上の白黒の像は、パノラマカメラにより撮影された太陽で、火星大気中のちりをモニターするための画像です。

「スピリット」、画像送信を再開 (2004年1月30日11:50)
「スピリット」から再び送られてきた写真 障害が起きていた「スピリット」から、28日(アメリカ現地時間)、再び写真が送られてきました。ちょうど障害が起きる前のように、ロボットアームが「アディロンダック」と名付けられた岩に近づいています。
29日(現地時間)には、科学機器に再びデータを送信するよう、地上からコマンド(命令)が送られました。また、メスバウワースペクトロメータアルファ粒子・X線スペクトロメータが既に取得しているデータを地球へ送るための命令も出されています。
JPLのジェニファー・トロスパー (Jennifer Trosper)氏は、「まだ技術的にはやらなければならないことが残ってはいるが、それは科学的な探査と並行して十分にできることである。」と述べています。今回のローバの故障についてのデータ取得はまだ一部しかできていません。数日以内に、技術者たちはローバのフラッシュメモリをフォーマットする作業を行う予定です。

「オポチュニティ」、立ちはじめる (2004年1月29日18:40)
「オポチュニティ」が、いよいよ火星の地表に降りるための準備をはじめました。前輪を伸ばし、サスペンションを定位置にかけるところまで作業が進んでいます。今朝は、ローバが地上に降りられるようにするために、着陸機構の前の部分を下げる作業が行われました。
全ての準備がうまくいけば、月曜日から火曜日くらいには、ローバが地上に降りることができるようになるはずです。
ローバの科学機器の状態も順調なようです。小型熱放射スペクトロメータはテストでも問題がなく、科学者たちは明日の朝にも、この機器を使ってみる予定にしています。
科学者や技術者たちは、どの岩を最初の探査目標にするか、議論をはじめています。そのためには、間もなく送られてくるであろう、カラーの360度パノラマ写真が役立つことでしょう。また、送られてきた写真の中には、ローバのエアバッグが細かい砂につけた跡が写っているものもありました。この跡の様子から、砂の性質などを調べることもできます。
科学者の中には、クレーターの中にある暗い色の粒状の物質が、エアバッグがバウンドした衝撃によって細かい砂が圧縮されてできたと考えている人もいます。また、より細かい、明るい物質が寄り集まってできたものと考えている人もいます。いずれにしても、「オポチュニティ」の最初の探査対象は、ローバ周辺のこの土になると思われます。

「オポチュニティ」着陸点は「チャレンジャー・メモリアル・ステーション」に
(2004年1月29日16:40)
チャレンジャー・メモリアル・ステーションからみた火星の風景 ちょうど18年前の1月28日、スペースシャトル「チャレンジャー」は、7人の宇宙飛行士を乗せたまま離陸直後に爆発・炎上しました。全世界の目の前で起きた、悲劇的な「チャレンジャー」事故を覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「コロンビア」に続いて、「チャレンジャー」も、この火星に名前を遺すことになります。
1月28日、NASAは、ローバ2号機「オポチュニティ」の着陸点を、「チャレンジャー・メモリアル・ステーション」と命名すると発表しました。チャレンジャーとコロンビア、2つのスペースシャトルの悲劇を乗り越えて、宇宙への道が続くということになります。
なお、「スピリット」の着陸点は「コロンビア・メモリアル・ステーション」と命名されており、ローバには、コロンビア事故で命を落とした7人の宇宙飛行士たちの銘板が載せられています。また、1997年に着陸したローバ「マーズ・パスファインダ」の着陸点には、惑星科学と宇宙の教育普及に貢献した故カール・セーガン博士の名前が付けられています。

「スピリット」の回復作業が進む (2004年1月29日16:20)
不調が続いている「スピリット」の回復作業は、27日時点でも順調に(といういい方がいいのかはわかりませんが)進んでいます。地上のシミュレータでも、原因がどうやら推定通りフラッシュメモリの制御ソフトウェアにあるらしいことが確認されました。引き続き、技術者チームは「スピリット」のフラッシュメモリの状態の把握を続けています。

「オポチュニティ」、バッテリーが放電し過ぎ (2004年1月29日16:00)
どんな機械にも「ちょっとした」トラブルは付きものですが、ローバ「オポチュニティ」も例外ではないようです。
「オポチュニティ」のバッテリの残量が低下するという現象が起きてしまっています。これは、ローバ搭載のロボットアームについているヒータが原因です。夜になって気温が下がると、サーモスタットが働いてヒータが動作するのですが、このロボットアームを使っていないのにヒータが働いてしまうのが原因のようです。サーモスタットの働きを地上からは制御できないため、地上の技術者たちが現在原因の確認と対応方法の検討を行っています。

火星の岩に地層がみえた (2004年1月28日18:00)
「オポチュニティ」着陸点に露出している岩 「オポチュニティ」から送られてくる映像は、火星にかつて水があった、かなり強力な証拠を提示しているかも知れません。
「オポチュニティ」が撮影した火星の映像には、地層が写っていました。層は薄いもので「指くらいの」(プレスリリース原文より)厚さですが、このような層ができているということは、水、あるいは砂の作用により堆積したか、あるいは火山灰が降り積もった、といったことが考えられます。ローバ科学チームのアンドリュー・クノール (Andrew Knoll)博士は、おそらくこの層が、水の作用により堆積したと考えています。
地球上でも、堆積岩と呼ばれる岩(砂岩や泥岩など)は、層をなして露出しています。これは地球でも、崖などでよくみられる(まさに)層状の岩です。こういった岩は、たとえば湖や海のような環境で、砂や泥などがゆっくりと降り積もってできてきたものです。
火星に同じような層がみえるということは、まさにそのような、湖や海のような環境---豊富な水があったことを裏付けることになる、大発見ということになります。
この層状の岩は着陸点の近くに露出している岩の中にあり、ローバからは8メートルほどしか離れていません。まずこの岩の分析、そして、暗い色の土と岩との関係の調査が最初のローバの目標になりそうです。特に、暗い色の土はヘマタイト(赤鉄鉱)と呼ばれる、水に関係した鉱物を含んでいると考えられます。この鉱物の存在が「オポチュニティ」の着陸点をここにする決め手になったわけですから、その正体を明らかにすることは探査でも重要な目標になるでしょう。

火星にアポロ1号の宇宙飛行士の名が刻まれる (2004年1月28日15:50)
アポロ宇宙飛行士たちの名前の丘 火星に、かつてアポロ1号の火災事故で命を落とした、3人の宇宙飛行士たちの名前が遺されることになりました。
バージル・グリソム、エドワード・ホワイト、ロジャー・チャフィーの3人の宇宙飛行士は、ちょうど今から37年前の1967年1月27日、試験中の火災事故で命を落としました。
「歴史上、探検者たちはずっと、重要なランドマークに名前を遺すだけの名誉と責任を負ってきていた。3人の宇宙飛行士たちの貢献により、私たちは人類の歴史の中での偉大な一歩を記すことができた。今日、アメリカが次の大きな一歩に踏み出そうとするとき、NASAとマーズ・エクスプロレーション・ローバのチームは、この偉大なる探検者たち、そして彼らの遺産にふさわしい贈り物ができた。」と、NASAのオキーフ長官は語っています。
この3人は、ローバ1号機「スピリット」着陸点周辺の地名に名を遺します。「グリソム・ヒル」(グリソムの丘)は、「スピリット」着陸点から南西に7.5キロの位置にある丘、「ホワイト・ヒル」は同じく約11.2キロほど北西、「チャフィー・ヒル」は14.3キロほど南南西になります。
上の写真では、左からチャフィー、グリソム、ホワイトとなります。チャフィー・ヒルは離れていて、写真からは見えません(写真をクリックすると大きな写真をご覧いただけますが、サイズは6MBと非常に大きいので、ご注意下さい)。

「オポチュニティ」の状態は順調 (2004年1月27日18:30)
「オポチュニティ」着陸点のカラーパノラマ写真 「オポチュニティ」の状態は順調で、地上との交信も同様に順調に行われています。この写真は、「オポチュニティ」から送られてきた、着陸点周辺のカラーパノラマ写真です。
この写真で見えている「地平線」は、「オポチュニティ」が着陸したクレーターの縁の部分です。写真は24枚のパノラマカメラの画像をつなぎ合わせたもので、着陸点の周囲の様子が非常によく分かります。
暗い色の土の表面に、時折明るい色の丸い部分がありますが、これは着陸のときに、エアバッグがバウンドしてできたものと考えられています。間もなく、360度のパノラマ写真も送られてくる予定です。
もう1つ「オポチュニティ」が行わなければいけないのは、地球と高速で通信するための、ハイゲインアンテナ(高利得アンテナ)の準備作業です。そのためには、まずパノラマカメラで太陽の位置を確認し、そこから地球の位置を計算することが必要です。
また、ローバに搭載されている科学機器についても、正常に動作することが確認されました。
実は、火星に向けて飛行している途中では、観測機器の1つであるメスバウワースペクトロメータがうまく動作していませんでした。しかし着陸してからのチェックでは正常に動作しています。これで、着陸点の周囲にあるヘマタイト(赤鉄鉱)を調べる道具立ては揃ったことになります。やはり、「オポチュニティ」は運も呼び込んでいるのでしょうか?

「スピリット」不調の原因はメモリ制御ソフトウェア (2004年1月26日11:20)
前のトピックスで、ローバ1号機「スピリット」の不調の原因は、搭載しているフラッシュメモリにあると書きました。その後原因究明が進み、フラッシュメモリそのもののハードウェアは正常だが、それを制御する(ファイル管理用の)ソフトウェアがおかしいということがわかってきました。

「オポチュニティ」が降りた場所はクレーターの中 (2004年1月26日11:10)
2号機のローバ「オポチュニティ」が着陸した場所は、どうやらクレーターの中のようです。
「オポチュニティ」が着陸した場所の脇にはさらに大きなクレーターがあるようです。科学者たちは、クレーターの中に、火星の地下の物質が露出しているような場所があると期待しています。クレーターができたときに、表面の物質を吹き飛ばしてしまっているとすれば、地下の物質がみえている可能性があるからです。
「オポチュニティ」が送ってきた写真から推定すると、探査機がいるクレーターの大きさはさしわたし20メートルほど。結局のところ、「飛距離5億キロののホールイン・ワン」(コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士)ということになりそうです。
もともと、着陸点にこのメリディアニ平原が選ばれたのは、ヘマタイト(赤鉄鉱)と呼ばれる、水の作用でできる鉱物が大量にあることが分かっていたからです。また、その下には、層になった岩があることもわかっています。クレーターであれば、その両方を探ることができるはずで、科学的な観点からも、より興味深い探査ができるでしょう。
もちろん、大きなクレーターであればより深いところまで削られていることが考えられるわけですから、一層興味が湧きます。こちらの方は、さしわたしが150メートルほど、いま「オポチュニティ」がいる場所から、約1キロメートルほど離れたところにあります。これは、「オポチュニティ」が着陸前に撮影した写真を解析してわかってきたことです。
さて、この結果を受けてこれから「オポチュニティ」がどう動くかですが、スクワイヤーズ博士の考えでは、まずローバのすぐ脇にある土を調べ、その後層状になっている岩を調べます。さらにクレーターの斜面を上って、周囲を眺めて、さらにとなりの大きなクレーターを目指す…というシナリオになりそうです。もちろん、その前にローバを1週間以上かけて地上に下ろす必要があります。

「オポチュニティ」から初のカラー写真が届く (2004年1月25日22:20)
「オポチュニティ」からの初のカラー写真 「オポチュニティ」からの初カラー画像が、早くも送られてきました。その画像がみせてくれたのは、私たちの想像を超えた、暗く、ちょっと現実離れしたような風景でした。
データは、2001マーズ・オデッセイ探査機を中継して送られてきました。画像と同時に送られてきたデータによると、探査機は正常に稼働しているようです。
2台のローバの科学機器の主任研究者(PI=Principal Investigator)であるコーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ(Steve Squyres)博士は、「探査機は異様で、かけ離れた風景の場所に着陸してしまったみたいだ。私は面食らっている。私は仰天している。私は打ちのめされている。」と述べて、「オポチュニティ」から送られてきた風景にすっかり驚いてしまっている様子です。
火星の表面は、これまで撮影された火星の表面に比べても暗いもので、またさらにこれもはじめてですが、すぐ近くに基盤の岩が露出しています。これは多分、真っ先に探査対象になることでしょう。
また、撮影された写真からみて、ローバは(前の「スピリット」のときと異なり)まっすぐに火星の大地に降りることができそうです。ローバは北〜北東の方向を向いています。
また、JPL所長のチャールス・エラーチ氏は、「このチームは昔ながらのやり方で成功した。優秀であり、決然としており、そしてよく働いた。」と、ローバチームの功績をたたえています。

JPLのプレスリリースより (2004年1月25日20:00)
今回の着陸成功を受けて、JPLがプレスリリースを出しています。その内容をざっと要約しましょう。
「オポチュニティ」は、火星の表面を何回もバウンドしたあと、4つの足のうちの1つでようやく止まりました。火星からの最初の信号は、NASAが持つ深宇宙通信網(DSN: Deep Space Network)の、カリフォルニアとオーストラリアにあるアンテナで受信されました。
「みんな、うちらは火星の上にいるんだ!」と、着陸システム開発責任者のロブ・マニング氏は飛行支援チームにアナウンスしました。
NASAのオキーフ長官は、着陸成功後の記者会見でこう述べています。「今回の成功は、1つ1つの努力、エネルギー、情熱そして才能の積み重ねを重要な仕事に結びつけていくということを、NASAが行ってきたことの大きな証明になる。このチームは世界でいちばんだ。これは疑いのないことだ。」
「オポチュニティ」が着陸した場所は、先のローバ「スピリット」が着陸した場所から、火星をほぼ半球回ったところにある、メリディアニ平原というところです。
「この2日間というものの、私たちはローラーコースターの上に乗っているようだった。」と、NASAの宇宙科学統括副行政官のエド・ワイラー博士は述べています。「我々は1台のローバを再構築し、もう1台の誕生に立ち会ったのだ。」
ローバ開発の責任者であるピート・サイジンガー氏はこう述べています。「私たちは今ここに、復旧の途上にあるスピリットと、火星に降り立ったオポチュニティと共にいるのだ。」
現時点での初期的な推定では、「オポチュニティ」は、目標とする領域の中心地から24キロメートルほど離れた場所に降りたと考えられています。ここは、目標とされているグレイ・ヘマタイト(赤鉄鉱)が露出している領域です。この鉱物は水の存在によりできると考えられます。

「オポチュニティ」からの写真 (2004年1月25日19:00)
「オポチュニティ」からの初写真の1つ ローバ「オポチュニティ」からの写真が、早くも続々と到着しています。現在、既にマーズ・エクスプロレーション・ローバのウェブサイトで公開され始めています。
こちらの写真は、はじめて送られてきた写真の1つで、パノラマカメラが撮影したメリディアニ平原の写真の1つです。丘のような風景がみえます。

着陸成功の記者会見 (2004年1月25日16:40)
日本時間で午後3時30分頃から、記者会見が行われました。
成功を受けて記者会見は終始なごやかな雰囲気で、笑い声に包まれたものでした。NASAのオキーフ長官は、記者会見で「彼らは最高のチームだ」と成功を誉め称えました。前回と同様、またもシャンパンで乾杯し、着陸成功を祝いました。
技術者たちが今回の着陸の詳細について説明したあと、最後にJPLのエラーチ所長が会見の演壇に向かいました。「火星からの映像が到着しました」という彼のアナウンスによって現れた映像は、マーズ・エクスプロレーション・ローバの先に置いてある巨大なケーキ…そこには、「Happy Birthday Sean」(お誕生日おめでとう・シーン(=オキーフ長官))と書いてありました。
もちろん、CGなのですが、長官にとっては最良のお誕生日プレゼントとなったみたいです。さらに、長官には組立式レゴ・ローバーまで、プレゼントされました。
その後、記者との質疑応答に移りましたが、ちょっと印象的なやりとりがありました。中国の記者からのコメントです。「今はちょうど旧正月の時期で、中国では新年の始まりにあたる。その始まりにふさわしい成功だ。そして今年は申年。猿のように活発にローバが動き回って欲しい。」
回復の兆しがみえる「スピリット」に続き、「オポチュニティ」がどんな活発な活躍をみせるのか、期待したいところです。

「オポチュニティ」着陸に成功 (2004年1月25日16:10)
着陸成功を喜ぶJPLスタッフ 「オポチュニティ」は14時07分頃、無事火星に到着しました。信号が到着した瞬間、管制室は一層大きな拍手と歓声に包まれ、あちこちで抱き合う科学者や技術者の姿がみられました。JPL所長もその中に混じって、抱き合って成功を喜んでいました。
探査機の状態は順調です。現在、上空を飛行するマーズ・グローバル・サーベイヤを中継して、最初のデータの送信が行われる予定です。
探査機は、着陸後15分以上にもわたって、火星表面をきわめてゆっくりと転がっていました。これは、着陸点のメリディアニ平原が非常に平らだからです。
管制室には、カリフォルニア州のアーノルド・シュワルツェネッガー知事も訪れ、技術者たちと握手をしながら成功を祝福していました。
この後、午後3時30分頃より、記者会見が予定されています。

「オポチュニティ」の飛行は順調 (2004年1月25日14:07)
2号機「オポチュニティ」の飛行は順調です。13時59分に火星大気に突入し、熱シールドを分離し、着陸に近づいています。あと数分で、着陸する予定です。
管制室には、JPL所長、及びNASAのオキーフ長官も同席しています。
13時45分に、「クルーズ・ステージ」と呼ばれる、地球からの飛行を支えてきた支持機構の分離に成功しました。
13時55分現在、フライトディレクターが、飛行機の着陸時のアナウンスそっくりの「着陸アナウンス」を行っています。
13時59分、火星大気に突入しました。
14時04分、周囲の熱シールドの分離に成功しました。14時06分、逆噴射エンジンを噴射しました。アナウンスがある度に、管制室は拍手と歓声に包まれています。 現在、エアバッグが展開され、火星の地面をバウンドしているものと思われます。

「スピリット」不調の原因がつかめる (2004年1月25日11:30)
不調が続いている「スピリット」に、一筋の光がみえて来ました。原因がある程度つかめてきたのです。
スピリットは、搭載コンピュータが何度も再起動を繰り返している状態になっていますが、技術者たちの夜を徹した原因究明の結果、その原因が、コンピュータにつながっているローバの2つの「フラッシュメモリ」、あるいはそれを制御するコンピュータ・ソフトウェアにあることが分かってきました。
「ローバの状態は『重体』(critical)から『重症』(serious)にまでよくなった」と、プロジェクト・マネージャのピーター・サイジンガー(Peter Theisinger)氏は述べています。
スピリットには、256MBのフラッシュメモリが搭載されています。この「フラッシュメモリ」は、最近ではデジカメやUSBメモリなどで、私たちにもけっこうお馴染みの品物ですが、これは、スピリットの電源が止まっているときにも、データを保持しておくために使われます(その意味では、デジカメなどと使われ方は全く同じですね)。技術者たちは、ここのところ発生している「スピリット」の不調がこの、フラッシュメモリに関連していることを突き止めました。これはスピリットにコマンド(命令)を送って、症状を確認して確かめたことです。
サイジンガー氏によると、電力系及び熱制御に関しては安定した状態になっており、また以上の内容はまだあくまでも作業仮説に過ぎません。「スピリット」に対し、起動時にフラッシュメモリを使わないようなコマンドを送ることで、技術者たちは、「スピリット」がより高いデータ転送速度でデータを送ることができるようになり、根本的な原因の究明が進むと期待しています。

「スピリット」からデータが届いたが… (2004年1月24日17:00)
ローバ「スピリット」は、休止命令を地上から送ったにもかかわらず、そうしなかったようです。
日本時間で24日の午前5時すぎ、ローバ「スピリット」から2001マーズ・オデッセイ探査機をリレーして、大量のデータが送られてきました。データ送信量は約10MB、転送速度は毎秒128キロビットと、以前よりは回復してきています。「スピリット」は、データ送信が途絶して以来、2001マーズ・オデッセイ探査機を経由したデータ送信もできなくなっていました。
送られてきたデータの中味ですが、電力系システムの技術的なデータなどで、観測データは含まれていませんでした。また、データの空白を埋めるために入れられる、数字だけのデータなども入っていました。

修理と着陸準備が同時並行で進む (2004年1月24日16:40)
ローバ2号機「オポチュニティ」の着陸が近づき、JPLのローバチームは、この着陸準備と、不調をきたしている1号機「スピリット」の修理の両方に分かれて、作業を進めています。
プロジェクト・マネージャのピーター・サイジンガー(Peter Theisinger)氏は、「最良の環境を得たとしても、かなりの時間---数日、あるいは2週間程度---をかけたとしても、ローバ(スピリット)を完全に元の状態にもどすのは難しいだろう。」と述べています。
スピリットからのデータは、水曜日(現地時間)以来久々に地球に到着しました。データ送信は3回に分かれ、それぞれが10分、20分、15分間でした。技術者が今後このデータを解析し、修復のための計画を練ることになります。
「スピリット」に搭載されているソフトウェアに何らかの不調が起きている模様です。この3日間に「スピリット」のコンピュータは、合計で60回以上も再起動を繰り返しています。問題が起きたときには、ローバに搭載されている赤外線スペクトロメータの鏡を動かしているときであったことが分かっており、何らかのハードウェアの問題である可能性が考えられます。
一方、2号機「オポチュニティ」の着陸が近づいてきています。着陸地点であるメリディアニ平原は、「スピリット」が着陸したグセフ・クレーターから半球回ったところにあたり、ここにはオクラホマ州の面積(日本でいえば、北海道の面積の2倍以上)くらいにもわたって、グレイ・ヘマタイト(赤鉄鉱)と呼ばれる鉱物が露出していることが分かっています。この鉱物は、水の存在により作られるため、ここで火星の水について何らかの手がかりが得られると考えられます。
1号機の着陸によって得られた知識は、2号機の着陸にも役立てられます。今回の着陸では、予定より早めに、降下用パラシュートを開くことにする予定です。

「スピリット」からのデータ送信が低速ながら回復 (2004年1月24日1:40)
23日の午後10時26分(日本時間)からの交信時間帯に、ローバ「スピリット」との交信に成功したと、JPLから発表がありました。交信は20分間続き、データ転送速度は毎秒120ビットと非常に低速ではありますが、通信はできたことにはなります。JPLではさらに交信を試みることにしています。

「スピリット」からのデータ受信、現時点でも回復せず (2004年1月23日14:10)
ローバ「スピリット」からのデータ受信は、日本時間で午前10時現在も回復していません。技術者たちは、「スピリット」からの信号受信を待つと共に、通常の通信に回復させるためのコマンド(命令)を送信する準備を進めています。それは、火星の1日がはじまる、日本時間で今日の午後8時以降になります。
JPLのマーズ・エクスプロレーション・ローバのページにて、最新情報が随時アナウンスされています。

「スピリット」、深刻な状況 (2004年1月23日7:10)
ローバ「スピリット」からの科学データ通信の途絶がかなり深刻な状況であることが明らかになりました。
昨日の探査機経由の通信がうまくいかなかっただけではなく、火星の今朝(日本時間で23日早朝)の、地球への直接通信も行えませんでした。「スピリット」からは、地球からの信号を受信しているという信号は送られてきているものの、科学データが送られていない状態です。
現在、JPLの技術者が原因を調査していますが、考えられる原因として、搭載ソフトウェアの不良、あるいは搭載コンピュータのメモリの不良が考えられています。技術者は地上で状況の再現を試み、日本時間で今日の昼ごろに予定されている、2機の探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤ及び2001マーズ・オデッセイ)との交信を試みる予定です。一方、火星の朝になる今日の夜には、地球との直接通信を再度試みることにしています。

今日は受信できなかったけど (2004年1月23日0:00)
着陸機構を振り返って 今日は、ローバ「スピリット」からのデータ転送が、予定された時間中に行えませんでした。地球からのコマンド送信はうまくいったみたいですが、なぜ火星からデータが送られてこなかったか、原因はわかっていません。
ただ、いずれにしてもこのようなトラブルは過去にもありました。マーズ・パスファインダのときにも数回このようなことがあり、原因を調べてみると、ローバの電源が入った時刻が、実は火星の夕方だったというようなことがあったようです。
上空を飛んでいる2機の探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤ及び2001マーズ・オデッセイ)との交信のチャンスが、今日の昼過ぎ(日本時間)にあったようです。それがだめでも、日本時間の深夜(火星では着陸後19日目の朝)になると、ローバの電源が入り、地球との直接通信ができるようになるはずです。NASAからも状況については記者会見で発表があるようですので、それを待つことにしましょう。
この写真は、データが送られてこなくなる前に「スピリット」が撮影した写真です。かつてこの台(着陸機構)の上に載っていたのですが、それを振り返って撮影できるところまで、ローバが動いたことになります。

探査でわかってきたこと (1)カンラン石の存在 (2004年1月21日22:00)
「アディロンダック」を探査するロボットアーム 探査対象となった岩「アディロンダック」の本格的な調査が始まりました。「スピリット」のロボットアームの先端に取り付けられた観測機器を使い、岩の組成などを調べる作業が始まりました。データは2001マーズ・オデッセイ探査機を中継して地球に送られ、その分量は約10MBにも達したそうです。すごいデータ量です。
さて、科学者からは、まず最初にローバのすぐ正面にあった土の分析結果が報告されました。ここで、メスバウワースペクトロメータが、土の中からカンラン石(オリビン=olivine)という鉱物を検出したことが報告されました。このスペクトロメータは複数の種類の鉄を含む鉱物を検出しています。
このカンラン石は、地球上でもよく見つかる、たいていは緑色をした鉱物です。また、「造岩鉱物」といわれるように、岩石の中でも比較的普通に含まれます。火山岩の中にも含まれるこいが弱いため、風化されやすいのです。ところが、火星の表面にカンラン石がありました。ということは、この土は非常に細かい火山性のものである可能性があります。また、実は土の層がすごく薄く、かんらん石なその土の層のすぐ下にある岩石からきたものかも知れません。
(下の「(2)」に続きます)

探査でわかってきたこと (2)硫化物や塩化物の存在 (2004年1月21日22:20)
科学者たちがもう1つ驚いたのは、測定機器を押しつけても、砂が意外と「堅かった」ということです。このように砂を堅く結びつけているものは、一体何なのでしょうか。
その答えになりそうな物質が、今度はアルファ粒子・X線スペクトロメータ(APXS)の測定から見つかりました。この装置が、土の中から塩素や硫黄といった元素を見つけ出したのです。
地球上の砂にはあまりないこれらの元素が土の中に入っているということは、以前から火星の土の解析などでわかっていましたが、これが意味するところは何なのでしょうか。それは、火星の土の中に、塩化物や硫化物が含まれていて、これが土の中の粒子を互いに結びつける「のり」の役割をしているようなのです。
硫化物というと、例えば石膏のようなものが考えられます。この「スピリット」が着陸したグセフ・クレーターは、もともと湖だったと考えられています。こういう湖で、水が次第に蒸発していくと、石膏のような物質ができます。これは地球の砂漠などでもおなじみです。あるいはこういった石膏のような物質は、火山性のものかも知れません。また、火星の表面には強い風が吹きますので、こういった物質が、着陸点近辺のものとは違う可能性も大きいと思われます。
火星の土の探査だけでも、これだけ様々なことがわかって来ました。いま解析が進んでいる岩の分析は、どのような結果を私たちの前にもたらすでしょうか。

探査対象は「偉大な岩」 (2004年1月21日0:30)
探査対象「アディロンダック」 ヘルシーな食材に代わって、探査対象に選ばれたのは、「偉大な岩」でした。
写真の岩が、「スピリット」の最初の探査対象となる岩「アディロンダック」(Adirondack)です。大きさはフットボールくらいで、それほど大きくはありません。この岩も、「スシ」や「サシミ」と同様、今回のローバチームの科学者や技術者によりあだ名が付けられたものです。
アディロンダックは、「スシ」や「サシミ」よりは表面が滑らかで、岩石研磨装置での探査がしやすいことが、この岩が対象として選ばれた理由です。
「スピリット」は、この岩を、搭載している顕微鏡カメラメスバウワースペクトロメータアルファ粒子・X線スペクトロメータといった装置で調べ、この岩の組成などを明らかにする予定です。アディロンダックは恐らくは火成岩と考えられていますが、まだ仮説に過ぎません。これも今後の調査で明らかになるでしょう。
アディロンダックは、ニューヨーク州にある山脈の名前で、そのもともとの意味は、アメリカ原住民の言葉で「偉大な岩」(They of the Great Rocks)なのだそうです。火星の上でこの小さな岩が「偉大」な成果をもたらしてくれるかどうか、探査が期待されます。

「スシ」に「サシミ」に・・・ (2004年1月21日0:00)
「スシ」と「サシミ」 何ともおいしそうな響きですが、このトピックスに出てくる「スシ」と「サシミ」は食べられません。なぜなら、火星の岩だからです。
ローバ「スピリット」の火星探査がいよいよ本格的に始まり、最初の調査対象として科学者たちが選んだ岩石が、この写真の2つです。それぞれのあだ名が、「スシ」と「サシミ」です。NASAの写真の説明には、どちらが「スシ」なのか「サシミ」なのかが書いてありませんでしたが、報道によると、真ん中の大きめの岩が「サシミ」、右側の小さな岩が「スシ」のようです。確かに、そういわれてみると、岩の表面のざらざらした感じ、よくみる刺し身の肌合いの感じに似てますね。右側の小さな岩も、巻きずしのように思えなくもありません。
ただ、残念ながら、今回はこのざらざら感が災いしました。この岩の表面がかなり粗く、また表面にかなりちりが付着していることから、表面を削って探査するのが難しいと判断されました。また、ちりが多いということは、岩の内部の科学的な成分を探査するのにも影響が大きいことになります。この理由から、2つの岩の探査は見送られることになりました。

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