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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年1月1日〜10日分
「スピリット」、起き上がる (2004年1月10日17:00)
起き上がりつつあるローバ「スピリット」
ローバ「スピリット」が動き出すためには、着陸機構から離れなければなりません。そのための操作がいよいよ始まりました。
ボブ・マーレーのレゲエナンバー "Get-up, Stand-up" が流れる中、JPLの技術者たちが、ローバの「起立」作業を行いました。このローバを立たせる作業は、4つの段階からなります。まず、第1ステップはローバそのものを起こし、引き上げます。次に、前輪を引き出し、所定の位置にセットします。
1つ1つの段階が正常に終了したことが確認できないと次の段階には進めません。第3、第4ステップへは、この前の2つのステップが正常に終了したことを確認してから進みます。今のところ、第2ステップが完了したところです。
JPLの記事へ (英文)

ちょっと傾いたパノラマ画像 (2004年1月9日11:00)
ちょっと傾いたパノラマ画像
火星表面のちょっと傾いたパノラマ画像が届きました。もちろん、地表がこういうふうに傾いているわけではなく、着陸機構が数度傾いているためにこういうパノラマ映像になってしまったのです。
画面左側には、話題のクレーター「スリーピー・ホロー」(Sleepy Hollow)が、より鮮明にみえています。また、手前には、火星の砂が付着したエアバッグもみえています。

これまでで最も鮮明な火星表面の写真 (2004年1月8日0:10)
火星地表の高解像度写真
今回火星から送られてきた画像は、これまで火星から送信されてきた画像の中で最も鮮明な(解像度の高い)ものです。1997年のマーズ・パスファインダのときと比べても3倍以上も細かいものです。これらの画像は、12枚の隣り合った画像をモザイク状に貼り合わせる処理を行って、大きな画像となります。
写真にはさまざまな興味深いポイントがあります。例えば、写真の中にみえた、エアバッグの影響で火星の表面が乱れている様子。石が引きずられてできた土の模様が、奇妙な様子で写っています。
こういった画像は現在、上空の火星探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤ及び2001マーズ・オデッセイ)を中継して地球へ送信されていますが、技術者チームは、ローバが持つ高利得アンテナ(ハイゲインアンテナ)を使って、大容量のデータを直接地球上に送る準備を進めています。
また、火星が予想以上に暖かいため、ローバ自体の「オーバーヒート」の問題も出てきているようです。しかしこの問題は、ローバが今の着陸機構から離れて、自在に動けるようになれば解消するようです。
その、着陸機構から離れて自由に動けるようになる日は、12日以降になりそうです。現在、着陸機構からはみ出しているエアバッグを収納する作業が実施されています。

「スピリット」でNASAへのネットアクセスが集中 (2004年1月8日23:30)
2004年1月3日の午後5時から、1月6日の午後11時半までの間に、NASAサイト(www.nasa.gov)やJPL火星探査ウェブサイト (mars.jpl.nasa.gov)など、NASA関係のウェブサイトへのアクセスの合計が9億1600万ヒットに達したと、NASAが発表しています。
因みに、2003年のNASAサイトへのアクセス数は合計で28億ヒットだそうですから、この数日の火星関係のアクセスが、いかにすさまじかったかということになります。
「火星で大量のネットアクセス」というと思い出すのが、1997年のマーズ・パスファインダのときです。この際のヒット数(1997年7月9日)が4700万ヒットだったそうですが、今回は、1月3〜4日で約1億1000万ヒットのアクセスがありました。なお、昨年のコロンビア事故の際、2003年2月1日のNASAサイトへのアクセス数は約7500万ヒットだそうです。
NASAがインターネットによる広報活動をはじめたのは、いまから10年前、シューメーカー・レビー第9彗星の木星への衝突のときでした。それ以来、ネットワークの浸透と技術の進歩により、より多くのデータを世界中に配信できるようになっています。今回の「スピリット」火星着陸では、単にアクセス数だけでなく、データ配信量も2.2TB(テラバイト)にも達します。CD-ROMにして約3300枚分もの情報が、ネットワークを通じて2日間で世界中に配信されたことになります。

着陸点を「コロンビア・メモリアル・ステーション」と命名 (2004年1月7日10:10)
「スピリット」に搭載された追悼の銘板
NASAのオキーフ長官は、マーズ・エクスプロレーション・ローバ1号機「スピリット」の着陸点を、昨年2月のスペースシャトル・コロンビア事故で亡くなった乗組員を追悼する意味を込めて「コロンビア・メモリアル・ステーション」と命名する計画であることを発表しました。
このマーズ・エクスプロレーション・ローバの地球通信用のアンテナ(ハイゲインアンテナ)の後ろには、今回のスペースシャトル事故を追悼する銘板が取り付けられています。アルミニウム製、直径が13センチほどのものです。
「NASAにとって大きな喜びであるこの時、マーズ・エクスプロレーション・ローバのチーム、そして全NASAのメンバーは、少しの間立ち止まり、コロンビア事故で亡くなった同僚に思いを馳せた。宇宙へ飛び出すこと、未知の世界へ飛び出すことは、最も勇敢で、献身的な人々の天職である。」と長官は述べています。
「『スピリット』を通してローバのチームが火星を見つめるとき、このコロンビア・メモリアル・ステーションの画像も地球に送られてくる。これは彼らの精神(スピリット)と献身にふさわしい贈り物である。『スピリット』は、コロンビアの勇敢な宇宙飛行士たちが持っていた探求への夢を積んでいる。」
なお、1997年のマーズ・パスファインダの着陸点は、惑星科学に多大な貢献を行った故カール・セーガン博士を追悼し、「カール・セーガン・メモリアル・ステーション」と命名されています。

着陸点周辺のカラー画像 (2004年1月7日9:30)
着陸点周辺のカラー画像
待ちに待った、着陸点周辺のカラー画像が届きました。ローバに搭載されているパノラマカメラが撮影した画像です。
NASA/JPLによると、「これまでに火星で得られた最も解像度の高い写真」ということです。確かに、極めて鮮明に、火星表面の模様が映し出されています。なお、アクセス殺到によるネットワークの負荷増大を避けるために、まだ全体の高解像度写真は公開されていません。
全体に、これまで得られてきた火星地表の写真と比べると、岩が少ないことが目につきます。点在している岩も小さめで、マーズ・パスファインダのときのように大きな岩がごろごろしているという光景ではありません。

着陸点周辺の立体画像 (2004年1月6日9:50)
着陸点周辺の立体画像
着陸点の周囲を写した立体(3D)画像が公開されました。普通にみると赤と青の色がついているちょっと不思議な映像ですが、立体視用のメガネ(例えば赤と青のセロファンをはめ込んだもの。もちろん、それぞれの目に赤と青のセロファンを当ててもよい)でみると、その風景が飛び出してみえる…というものです。
火星立体画像も面白いのですが、実は科学的にみて面白そうな場所が見つかりました。画像の中央ちょっと左寄りのところに、やや白っぽく写っている場所があります。科学者が早速「スリーピー・ホロー」(Sleepy Hollow)と名付けたこの場所はどうやら、クレーターの跡か風による侵食の跡のように思われます。
場所は着陸点から10〜20メートル先、直径は15メートル前後と、地形としてはごく小さいものですが、その成因も興味深いものです。また、クレーターだとしますと、地下の物質がほじくり返されていることも考えられ、探査の対象としても興味深いものです。
それにしても、NASAの科学者は、サスペンス映画が好きなのでしょうか…? それとも、犯人探しと同じように、真理を探そうとしているのかも知れません。(映画の題名ですと「スリーピー・ホロウ」になります)

ローバの状態は順調 (2004年1月5日11:00)
ローバを真上から見下ろした図
現在のところ、ローバの状態は順調なようです。NASAのオキーフ長官は、「今夜はNASAにとって素晴らしい夜だ。我々はついに戻ってきた。この(探査)チームを本当に、本当に誇りに思う。そしていま私たちは火星にいるのだ。」と述べ、喜びを語っています。
まだローバそのものは着陸機構の上に載ったままです。この後、探査チームは約1週間以上をかけて、ローバの状態をチェックしたり、着陸機構などの格納を確認する予定です。
なお、上の写真は、アームの先端に付けられた航法用カメラの画像を集めて作成した画像です。ちょうど真上からローバ、及びその着陸機構などを見下ろしている図になっています。

喜びに湧く管制室の様子 (2004年1月4日19:50)
到着を祝うJPLスタッフローバ「スピリット」が到着し、信号がはじめて受信されたことが確認されたことがアナウンスされますと、NASA・JPL(ジェット推進研究所)の管制室内は喜びに湧き、スタッフがそこかしこで抱き合いながら到着を喜ぶ光景が展開されました。
(写真をクリックするとより大きな写真が表示されます)

「スピリット」からのはじめての写真が届く (2004年1月4日18:20)
ローバ「スピリット」からのはじめての写真 着陸に成功したローバ「スピリット」から、はじめて写真が届きました。ローバの回りには、展開された着陸機構や、着陸に使用されたエアバッグなども写っています。
(写真をクリックするとより大きな写真が表示されます)

「スピリット」着陸 (2004年1月4日14:00)
「スピリット」が着陸しました。火星地表からの信号も受信され、着陸が確認されました。

「スピリット」着陸まであとわずか (2004年1月4日13:00)
いよいよ、「スピリット」の着陸まであとわずかになりました。探査機はいま、着陸ターゲット領域であるグセフ・クレーターの、62キロメートル×3キロメートルの領域に向けて着陸の態勢を整えています。
順調に行けば、火星大気には午後1時29分に突入、その後「恐怖の6分間」を経て、午後1時35分に着陸します。ただ、火星と地球の間には電波でも10分以上の時間差があるため、着陸時間はこの差を考慮したものとなっています(つまり、地球時間で、ということです)。

「スピリット」、いよいよ着陸が近づく (2004年1月3日22:30)
マーズ・エクスプロレーション・ローバのうち、先に到着する「スピリット」の着陸が近づいてきました。到着は予定通り、1月4日午後1時35分(日本時間)の予定です。
到着すると、ローバはエアバッグを作動させて、何回も転がりながら、「ロックンロール」して着陸することになります。もちろん、着陸するまでには、火星大気との摩擦熱に耐え、衛星機構の切り離しなどの数々の複雑な動作を滞りなく行う必要があります。
着陸後、ローバが正常に展開できているかどうかは、NASAが持つ深宇宙通信網(DSN: Deep Space Network…惑星など遠いところにいる探査機と通信するために世界中に設けられているアンテナ網)だけでなく、火星を周回している2つの探査機、マーズ・グローバル・サーベイヤ2001マーズ・オデッセイも利用して、交信が試みられます。
また、ミッションコントロールセンターなどの様子は、到着の2時間ほど前から、NASA TVにより生中継される予定です。
JPLのページ (英語)

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