小惑星
小惑星についてわかっていること
- 現在までに約 6000 個の小惑星が見つかっています。そして毎年数百個以上が新しく見つけられています。地球からは小さすぎて見えない小惑星が確実に数十万個以上はあるはずです。直径が 200 km 以上の小惑星は 26 個知られています。大きな小惑星はほぼ完全に調査しつくされています。直径が 100 km 以上の小惑星については 99% わかっています。直径が 10km から 100km の小惑星は半分ほど見つかっています。しかし、それより小さな小惑星については私たちはほとんど何も知りません。直径が 1 km くらいの小惑星はおそらく100万個もあるのではないでしょうか。
- 小惑星全体の質量は月よりも小さいものです。
- アイーダ(243 Ida) とガスプラ(951 Gaspra)は木星へ向かう途中のガリレオ探査機によって撮影されました。アイーダとガスプラはそばまで接近して研究された唯一の小惑星です。NEAR計画(地球に近い小惑星への接近計画)ではエロス(433 Eros) も調査される予定です。
- ケレス(1 Ceres)はずばぬけて大きな小惑星です。その直径は 914 km あり、すべての小惑星をあわせた質量の25% の質量があります。次に大きな小惑星はパラス(2 Pallas)、 ベスタ(4 Vesta)、ヒギエア(10 Hygiea)です。これらは直径が 400 km から 525km の間にあります。残りの知られている小惑星は差し渡しが 340 km 以下しかありません。
- 小惑星、彗星、衛星の分類に関してはいくつかの研究があります。おそらく惑星に捕らえられた小惑星だと思われる衛星が多くあります。火星の小さな衛星デイモス(Deimos) とフォボス(Phobos)、木星の外側の8個の衛星、土星の最も外側の衛星フェーベ(Phoebe)、そして天王星 と海王星で新しく見つかった衛星です。これらはみな小さく、衛星というよりは小惑星にずっと似ています。
- 小惑星はそのスペクトル(あるいは化学組成)や反射率によって多くの 型 に分類されます。
- C 型:知られている小惑星の 75% 以上がこの型です。非常に黒っぽく(反射率 0.03)、炭素質球粒隕石に似ています。太陽とほぼ同じ化学組成で水素イオン、ヘリウム、その他の気体からできています。
- S 型:小惑星のうち 17% がこの型で、比較的明るい小惑星です(反射率 0.10 〜 0.22)。珪酸鉄や珪酸マグネシウムを含むニッケルや鉄からできています。
- M 型:残りのほとんどです。明るく(反射率 0.10 〜 0.18)、ニッケルと鉄だけからできています。
- あと、12種類くらいの希少な型があります。
小惑星の数は観測結果そのままの値ではありません。例えば C 型は暗くて見えにくいので、観測結果は補正してあります。そのため、上記の割合は本当の小惑星の分布を表してはいないかもしれません
(今日では実際にはいくつかの分類の仕方が使われています)。
- 小惑星は太陽系内の位置によっても分類されています。
- 主小惑星帯:火星と木星の間の太陽からおおよそ 2 〜 4天文単位の距離にあります。これらはさらにいくつかの小グループに分けられます。ハンガリア族(Hungarias), フローラ族(Floras), フォサイエ族(Phocaea), コロニス族(Koronis), エオス族(Eos), テミス族(Themis), キュベレー族(Cybele), ヒルダ族(Hildas) です。(これらはグループの主な小惑星の名前にちなんで名付けられました)
- アテン群:軌道長半径が 1.0 天文単位 より小さく 遠日点が 0.983 天文単位より大きい小惑星です。
- アポロ群:軌道長半径が 1.0 天文単位より小さく近日点 が1.017 天文単位より小さい小惑星です。
- アモール群:近日点が 1.017 天文単位と 1.3 天文単位の間にあります。
- トロヤ群:木星のラグランジュ点(木星の軌道上の 60 度前と 60 度後ろの点)の近くにあります。 1000 個以上の小惑星が知られています。不思議なことに前側の点にある小惑星は後ろ側の点の2倍の数があります(金星や地球のラグランジュ点にも幾つかの小さな小惑星があるかもしれません。それらもトロヤ群と呼ばれることがあります。「地球の第2の衛星」の項を見てみてください。エウレカ(5261 Eureka) は「火星のトロヤ群」です。)。
主小惑星帯の中で小惑星が密集した部分の中に比較的小惑星が少ない領域があり、カークウッドの空隙として知られています。これらはその天体の公転周期が木星の公転周期の簡単な分数になる領域なのです。そのような軌道にある天体は木星の重力によって異なる軌道に移されてしまうのです。
- 太陽系の外の方にある「小惑星」もいくつか知られています。キロン(2060 Chiron、別名 95 P/Chiron) の軌道は土星 と天王星の間にあります。ダモクレス(5335 Damocles) の軌道は火星の近くから天王星まで延びています。フォルス (5145 Pholus) の軌道は土星から海王星の外側にまで広がっています。このような小惑星はおそらくもっとたくさんあるでしょう。しかし、そのような惑星の軌道を横切る軌道は不安定なので、そのうちに摂動を受けて軌道が変わってしまいます。このような天体は普通の小惑星よりも彗星やカイパー・ベルトにある天体に多いと思われています。キロンは現在では彗星として分類されています。
- ベスタ(4 Vesta)は最近HST(写真 7)によって調査されました。ベスタは地球型惑星のように層状になっているように見えるという点で、特に興味が持たれる小惑星です。これは半減期が長い放射性同位元素以外に内部に何らかの熱源があることを意味しています。放射性同位元素だけではそのような小さな天体を溶かすほどの熱を放射することはできないからです。ベスタには大きな窪みもあります。とても深いので、地殻の下にあるマントルが見えています。
小惑星の表
幾つかの小惑星と彗星を比較のため下に挙げます。
(距離は太陽からの平均距離で単位は千 km 、質量の単位は kg です)
No. 名前 距離 半径 質量 発見者 発見年
---- -------------- -------- ------ ------- ------------------ ------
2062 アテン 144514 0.5 ? ヘリン 1976
3554 アムン 145710 ? ? シューメーカー 1986
1566 イカルス 161269 0.7 ? バーデ 1949
951 ガスプラ 205000 8 ? Neujmin 1916
1862 アポロ 220061 0.7 ? ラインムート 1932
243 アイーダ 270000 35 ? ? 1880?
2212 ヘファイストス 323884 4.4 ? Chernykh 1978
4 ベスタ 353400 263 2.38e20 オルバース 1807
3 ジュノー 399400 123 ? Harding 1804
15 エウノミア 395500 136 ? De Gasparis 1851
1 ケレス 413900 457 1.17e21 ピアジ 1801
2 パラス 414500 261 2.18e20 オルバース 1802
52 エウロパ 463300 156 ? ゴールドシュミット 1858
10 ヒギエア 470300 215 ? De Gasparis 1849
511 ダビーダ 475400 168 ? Dugan 1903
911 アガメムノン 778100 88 ? ラインムート 1919
2060 キロン 2051900 85 ? コワル 1977
写真
- (上の写真) アイーダ、ガスプラ、デイモス、フォボスの比較 (96k jpg)
- フォルトゥーナ(Fortuna) の HST 画像 (9/10/93) (0.044 秒/画素) (3k gif)
- トータチス(4179 Toutatis) のレーダー画像 (110k gi)f
- カスタリア(4769 Castalia) のコンピュータ処理した16の画像 (78k gi)f
- アイーダ Ida とガスプラ のページ
- カスタリア(4769 Castalia)の地図 (50k gif)
- HST で見たベスタ(4 Vesta)(25k jpg;216k gif;83k mpg)
小惑星についてのもっと多くの情報
未解決の問題
- 火星 と木星の間に惑星ではなく小惑星があるのはなぜでしょうか?
- どのような仕組みで、金属でできている小惑星と岩からできている小惑星に分かれたのでしょうか?
- 木星の L4 点に L5 点よりも多くのトロヤ群小惑星があるのはなぜでしょうか?
- ベスタは本当に層状になっているのでしょうか?その構造はどうしてできたのでしょうか?
- 小惑星は「正常」な軌道から地球の軌道を横切る軌道にどのようにして移ってきたのでしょうか?近い将来に大きな彗星や小惑星が地球に衝突する確率はどのくらいでしょうか?
- 土星へ向かうカシーニ探査機の最初の計画では小惑星への接近が予定されていましたが、費用の関係で中止されてしまいました。予定されているNEAR計画では地球に近い小惑星 エロス(433 Eros)に接近するかもしれません。
... 太陽
... 小さな天体
... カイパー・ベルト/オールトの雲
... 小惑星
... ガスプラ
...
ビル・アーネット;更新日:
1995年 5月24日
日本語訳 1995/08/24 石川 博幸;訳者について