土星
The Bringer of Old Age
土星に関する事実
- 土星は太陽から6番目の惑星で、2番目に
大きい惑星です:
- 太陽からの距離:1,429,400,000 km (9.54
天文単位)
- 赤道直径:120,536 km; 両極直径:108,728 km
- 質量:5.688e26 kg
- ローマ神話によれば、土星は農業の神です。関連したギリシャの神、
クロノス
は、ウラヌスとガイアの息子であり、ゼウス(ジュピター:木星)
の父です。「サターン(土星)」は、英語の「サタディ(土曜日)」
の元となった単語です(
付録4を参照)。
- 土星は有史以前から知られています。ガリレオ
が1610年に、初めて望遠鏡で観測しました;彼は土星の奇妙な姿に気づき、
混乱してしまいました。初期の土星の観測は、土星が軌道を移動するに
つれて、地球が土星の環
の平面を数年ごとに通過するという事実のために、複雑なものに
なりました。そのため、
低い解像度で見た土星の姿
は非常に変化が激しいものとなりました。1659年になって初めて、
クリスチャン・ホイヘンスが
土星の環の幾何学的構造を正しく推測しました。
1977年に天王星、
またほどなく木星と海王星に
薄い環が発見されるまでは、
土星の環は、太陽系で唯一の構造とみられていました。
- 1979年、宇宙探査機
パイオニア11号
が初めて土星を訪れました。その後に
ボイジャー1号と
2号が訪れました。
- 土星は、小さな望遠鏡で見ても、明らかに平たくつぶれて見えます
(写真10);
扁平率は約10%です。これは土星の速い自転速度と、流動体の性質のためです。
- 土星は、惑星の中で一番密度が低い惑星です;その比重は水より小さく、0.7です。
(もし十分大きな池があれば、土星は水に浮かべることができるでしょう)。
- 木星と同じく、土星は75%が水素で、25%がヘリウム、そして、わずかの水、メ
タン、アンモニアと岩石でできていて、太陽系が形成されたといわれる原初の
太陽星雲と似た組成をしています。
- 土星の内部構造は木星のそれと似ており、岩石の核、
液体金属水素の層、分子水素の層からなっていま
す。微量の種々の
氷も存在します。
- 土星の内部は熱く(核で12000K)、土星は太陽から受ける以上のエネルギーを
宇宙に放出しています。このよけいなエネルギーは、木星と同じように
ケルビン−ヘルムホルツ機構によって発生して
います。しかし、それだけでは土星の光度を説明するには不十分かもしれません;
なにかさらに別のメカニズム(機構)、おそらくは土星の深部でのヘリウムの
「raining out」が働いているのかもしれません。
- 木星でははっきりとしている表面の
帯も、土星ではずっとぼんやりしています
(写真2)。帯は、赤道付近では両極付近に比べてずっと幅
が広くなっています。雲の頂上部分の詳細は地球からは見えないので、宇宙探査機
ボイジャーが土星に接近し
て初めて、表面の大気循環が研究できました。土星もまた、木星の様な、寿命の長い楕円
やその他の形を持っています。1990年に、
ハッブル望遠鏡が土星の赤道付近に、ボイジャ
ーの接近の頃にはなかった大きな白い雲の塊(かたまり)を発見しました;
1994年には、別のやや小さい嵐が観察されています。
- よく目立つ環(AとB)と、薄く見える環(C)が地球から見えます。
AとBの間のすきまはカッシーニ
の間隙(かんげき)として知られています;A環の中にある、もっと薄い隙間は
エンケの間隙として知られています(写真13)。
宇宙探査機ボイジャーの写真は
ほかにも4つの薄い環を示しています。土星の環は、ほかの惑星の環と異なり、
大変明るいものです
(アルベド値0.2〜0.6)。
- 地球からはつながって見えますが、環は実際は大きさが1センチメートルから数
メートルにわたる小さな塊からなっています。大きさが数キロメートルのものもある
ようです。
- 土星の環は非常に薄いです:直径は250,000km以上もありますが、厚さはせいぜ
い200メートルしかありません。印象的な見かけとはうらはらに、環には非常に小さな
物質があるだけです 。―― もし環の物質を一つの塊に固めてしまったら、直径はせい
ぜい100km程度にしかならないでしょう。
- 環を作っている塊は、主に水性の氷と思われますが、あるいは表面が氷に覆われ
た岩石もあるかもしれません。
- 宇宙探査機ボイジャーは、
「スポーク」と呼ばれる、環の上の放射状の不思議なまだらが実際に存在する
ことを確認しました(写真13)。スポークは最初にア
マチュア天文学者が観測の報告をしていたものです。その性質は謎ですが、
土星の磁場と関係があるのかもしれません。
- 土星の一番外側のFリングは、二本の細く、明るい環が編み合わされ、そ
れに沿って「結び目」が見られる、複雑な構造をしています
(写真14)。結び目は、環の物質が固まったものか、
あるいは小さな衛星ではないかと科学者は推測しています。
- 土星の衛星と環の間には、潮汐力による複雑な
共鳴現象があります:
「羊飼い衛星(シェパード衛星)」と呼ば
れるいくつかの月(すなわち
アトラス、
プロメテウス、
パンドラ)は、明らかに環をその形に固定しておくのに
重要な役割があります;
ミマスは
カッシーニの間隙に物質
が少ないことの原因となっていて、それはちょうど小惑星帯の
カークウッド間隙と似たようなものです;
パンはエンケ間隙の内部にあります。全体の系
は非常に複雑で、まだほとんど解明されていません。
- 土星(やその他の木星型惑星)の環の起源は不明です。これらの惑星は、
発生当初から環を持っていたかもしれませんが、環のシステムは不安定で、なにか現
在進行中のプロセスで補給されなくてはなりません。おそらくそれは、より大きな衛星
の崩壊によるものと思わます。
- ほかの木星型惑星と同じように、土星もかなりの強さの磁場を持っています。
- 夜の空なら、土星は肉眼で容易に見ることができます。木星ほどには明るく
ないですが、恒星がするような「またたき」をしないので、簡単に惑星だとわかります。
環と大型の衛星は、小さな天体望遠鏡で見ることができます。マイク・ハーヴェイの
惑星探索チャートで、現在の土星(とその他の惑星)の天空での位置を知ること
ができます。
写真
- (上)土星と衛星レアとディオネ
162k gif;
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- 土星の一部と
衛星テティス、ディオネ
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- 振り向いて土星を見る
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- 土星の大型イメージ、白黒
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- 土星、ポケットサイズの映像の最良のもの
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- 満月状態の土星と環
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- 満月状態の土星と環の拡大
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- 土星、衛星が表面を横切っている。
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- ハッブル望遠鏡による土星
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- ノルディック光学望遠鏡から見た土星
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- 赤い楕円形の雲
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- 土星の拡大図、雲の生成が見られる
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- 環にある「スポーク」(偽カラー)
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- 編み合わされたFリング
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- 土星の環、スポークの拡大図
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- 土星の環、スポークをさらに拡大
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- 偽カラーの、驚異的な土星の環
130k jpg
- 環の図解
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- ... もっと他の土星の画像
ムービー
- 自転する赤い土星と2つの衛星
82
k fle
- 宇宙探査機ボイジャー2号の土星接近
606k
quicktime
- 土星の嵐
186k
mpg
- 土星の環のスポーク
9
90k quicktime;
1300k
AVI
土星の衛星
土星には18の名前の付けられた衛星があり、他のどの惑星よりも多いです。まだ発見され
ていない、より小さな衛星がいくつかある可能性も十分です。
- 自転周期が知られている衛星では、フェーベとヒペリオン以外は、
同期して自転しています。
- ミマスとテシス、エンケラドゥスとディオネ、タイタンとヒペリオンの3つのペ
アは重力の相互作用があり、互いの軌道上で安定した位置関係を保っています:ミマス
の公転周期はテシスのそれのちょうど半分で、それらは1:2の
共鳴状態にある、と表現されます;エンケラド
ゥスとディオネも1:2;タイタンとヒペリオンは3:4の共鳴状態にあります。
- 18の命名された衛星に加えて、少なくとも
さらに12の衛星が報告され、仮の命名を受けています。
距離 半径 質量
衛 星 (000 km) (km) (kg) 発見者 発見年
-------------- -------- ------ ------- ---------------- ------
パン 134 10 ? ショーウォルター 1990
アトラス 138 14 ? テリル 1980
プロメテウス 139 46 2.70e17 コリンズ 1980
パンドラ 142 46 2.20e17 コリンズ 1980
エピメテウス 151 57 5.60e17 ウォーカー 1980
ヤヌス 151 89 2.01e18 ドルフュス 1966
ミマス 186 196 3.80e19 ハーシェル 1789
エンケラドゥス 238 260 8.40e19 ハーシェル 1789
テシス 295 530 7.55e20 カッシーニ 1684
テレスト 295 15 ? ライツェマ 1980
カリプソ 295 13 ? パスキュ 1980
ディオネ 377 560 1.05e21 カッシーニ 1684
ヘレネ 377 16 ? ラキュ 1980
レア 527 765 2.49e21 カッシーニ 1672
ティタン 1222 2575 1.35e23 ホイヘンス 1655
ヒペリオン 1481 143 1.77e19 ボンド 1848
イアペトゥス 3561 730 1.88e21 カッシーニ 1671
フェーベ 12952 110 4.00e18 ピカリング 1898
距離 幅 質量
環 (km) (km) (kg)
---- -------- ----- ------
D 67000 7500 ?
C 74500 17500 1.1e18
B 92000 25500 2.8e19
カッシーニの間隙
A 122200 14600 6.2e18
F 140210 500 ?
G 165800 8000 1e7?
E 180000 300000 ?
(距離は土星の中心から環の内縁まで)
これは、実はいくらか誤解を招きやすい分類です。というのは、環の物質の密度
はきちんとした領域に分けられないほど変化があるからです:
環の内部でも密度に差があります;
実際には間隙にまったく物質がないわけではありません;
環は完全には円形ではありません。
土星とその衛星に関するもっと詳しい情報
未解決の問題
- 土星はどのようにして内部の熱を作り出しているのでしょうか?
- 環の「スポーク」は何なのでしょうか?
- 環の起源はなんでしょうか? それが太陽系全体の起源について何を示してい
るのでしょうか?
土星の環は、他の惑星の環に比べて、なぜこのようにドラマチックなのでしょうか?
- すべてがうまく行けば、宇宙探査機
カッシーニ
が1997年に打ち上げられ、2004年には土星の軌道に入ります。土星とその衛星の広
範囲な調査に加え、カッシーニは(ヨーロッパ宇宙機関が製作した、ホイヘンスと
呼ばれる)プローブ(探触子)を
ティタンの表面に向けて落下させるでしょう。
... 太陽
... 木星
... シノペ
... 土星
... パン
... 天王星
...
ビル・アーネット著;1995年 7月28日更新
久島 昌弘 訳;1995年 9月 1日更新