カイパーベルト(Kuiper Belt)とオールトの雲(Oolt Cloud)
わかっている事
- 1950年ジャン・オールト(Jan Oort)が詳細に軌道計算を行い、 冥王星(Pluto)の軌道の外側の30,000天文単位(AU)から1光年かそれ以上離れたところに太陽の回りを回るおそらく1兆個かそれ以上の彗星の「雲」 (今では オールトの雲と呼ばれています)が存在することを指摘しました。これは、長周期彗星の源になっています。
- オールトの雲は、太陽系の質量の大きな部分を占めると計算されています。おそらくその質量は木星(Jupiter)と同じくらいかそれ以上あります。(ただし,これらは、ほとんど推測です。いくつの彗星がそこから出現したか、また、それらがどれくらいの大きさであったのかもわかっていません。)
- 2004年に2003 VB12“セドナ”として知られる天体の発見が発表されました。その軌道はカイパーベルトの場所とオールトの雲の内側と考えられていた場所との中間にあります。おそらく,この天体は,"内オールトの雲"天体(inner Oort Cloud)という新種の天体の第1号と考えられます。
- カイパー(Kuiper)ベルトは、おおまかに言うと太陽から30から100天文単位(AU)の海王星(Neptune)の軌道を過ぎたあたりに存在し、たくさんの氷の塊でできています。
現在では、短周期彗星の源であると考えられています。
- カイパーベルトの天体の軌道は、海王星の軌道を横切っているために、大きな惑星との相互作用によって妨害されることがあります。海王星に接近して、太陽系の外に送り出されたり、他の大きな惑星の軌道を横切る太陽系内部に送り込まれたりされます。
- 現在、木星と海王星の間に6つの天体が知られています(2060番キロン(Chiron)と5145番ホウラス(Pholus)を含むMPCの一覧表を参照)。国際天文連盟(IAU)は、これらの天体をケンタウルス(Centaurs)と名付けています。これらの天体の軌道は、安定ではありません。これらの天体は、
ほとんど間違いなくカイパーベルトからの「脱出者」です。
これらの天体の運命はわかっていません。
- 奇妙なことに、オールトの雲の天体は、カイパーベルトの天体よりも太陽に近いところで形成されたように考えられます。大きい惑星の近くで形成された天体は,重力の作用によって太陽系の外に追い出されたのです。そのうち,太陽系から完全に逃れていないものがオールトの雲を形成しました。遠くはなれた小天体には、このような作用が働かず,カイパーベルトとして残っています。
- 1992 QB1や1993 SC (写真 1)を含むいくつかのカイパーベルトの天体が最近発見されています。これらは、冥王星やTritonより小さいけれども同じような小さな氷の塊です。1995年までに、21個の海王星を横切る軌道の天体が知られています(冥王星とCharonは、含んでいません。)(これらの天体については、MPCの一覧表を参照)。
これらのうちの9個は、31から36天文単位の距離にあり、他の8個は、40から45天文単位の間にあります。この間には、天体は発見されていません。これは、海王星の重力による影響だと思われています。明るいもののいくつかの色が観測されており、たいてい赤いことがわかっています.
- 直径100 km以上のカイパーベルトの天体が少なくとも35,000個のあると推測されています。その数は、小惑星帯の同じサイズの天体の数の数百倍になります。
- アニタ・コクランAnita Cochranの天文学者のグループが ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)が極めて微弱なカイパーベルトの天体を検出したと報告しています (写真 2)。この天体は、非常に小さく、おそらく20 km程度の幅しかありません。約1億個の、ハッブル宇宙望遠鏡の極限等級28等星より明るく、傾斜の小さい軌道上の彗星が存在すると思われます。
- 5145 Pholusに関する分光データが得られています。その反射係数は0.1以下と非常に小さく、スペクトルデータは、(例えばハレー彗星(Comet Halley))の核のように)非常に黒い有機化合物の存在を示しています。
- キロン(Chiron) は、この種の知られている天体の中で最も大きいものです。直径が約 170 km あり、ハレー彗星(Comet Halley)の20倍大きさです。もし、それが太陽に近付く軌道になれば、壮大な彗星になると思われます。
- トリトン(Triton)や冥王星(Pluto)とその月 カロン(Charon) は,カイパーベルトの天体の大きな例であると信じる人もいます。
- さらに、もっと遠くの距離に興味があります。これらは、太陽系を形成した星雲(nebula)の名残です。それらを構成する物質とその分布は,初期の太陽系の進化のモデルを考えるうえでの、重要な決め手になります。
写真
- (上の写真) 1993 SC
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- カイパーベルトの小天体(HST)
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(写真の説明)
カイパーベルトの天体に関する詳しい情報
未解決の問題
- オールトの雲の存在には、いくつかの疑問点があります。存在を主張する根拠は、直接的なものでありません。
- ハッブル宇宙望遠鏡の最近の画像は、カイパーベルトの存在を確認してます。しかし、いくつの天体があるのでしょうか?また、何でできているのでしょうか?
... 太陽
... 小天体
... SL-9
... カイパー/オールト
... セドナ
...
ビル・アーネット著;1995年 7月 2日更新
畠中 利治 訳;1995年 9月23日更新
高橋 邦夫 追補訳;2004年 3月16日更新