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マーズ・エクスプレス トピックス
2004年1〜3月
火星大気にメタンを検出 (2004年3月31日15:40)
ESAは30日、マーズ・エクスプレス周回機による観測で、火星大気中にメタンを検出したと発表しました。 このメタンの起源について推測するのはまだ早過ぎますが、科学者たちは、さらに詳細な調査に期待を寄せています。 火星は、地球の100分の1ほどの薄い大気を持っています。この大気の成分は、95%が二酸化炭素、残り5%がその他いろいろな成分となっています。この「いろいろな成分」というのが実は重要でして、科学者はこういう微量の成分から、火星の過去の大気の進化や、生命の痕跡が見つからないかと、期待をしてきました。ちなみに、こういった微量成分として考えられるものとしては、酸素、水蒸気、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、メタンなどがあります。 今回、大気中にメタンを発見したのは、周回機に搭載されている全球フーリエスペクトロメータ (PFS)という装置です。この分光計の特徴として、大気中の分子のスペクトルを測ることによって、その分子がどのくらいの量存在しているのかを調べることができます。 今のところ、測定によりわかった火星大気中のメタンの量はごくわずかで、0.01ppmといったところです。しかし問題は、このメタンの起源です。 メタンは、火星大気中ではすぐ分解されてしまうため、せいぜい数百年くらいしかもちません。つまり、何らかの、定常的にメタンを「補給」するしくみが必要になってくるわけです。 「今回発見されたメタンの量はごくわずかなので、もう少し測定を行う必要がある。それによってだけ、統計的な解析が行えるだけの十分なデータが得られ、メタンがよりたくさんある場所があるのかどうかを知ることができるはずだ。」というのは、このPFSの主任研究者であるビットリオ・フォルミサーノ (Vittorio Formisano)氏です。 フォルミサーノ氏によると、地球におけるメタンの起源としては、通常は火山であったり、生命体であるというのが一般的です。もし火山活動だったとすると、それはそれで大きな発見になります。何しろ、火星で現在も火山活動が続いているという痕跡はいまだにみつかっていません。 さらに興味深い可能性は「生命起源のメタン」です。地球上でのメタンの多くは生物から発生しています。発酵現象などもまさにその1つです。もし火山起源でないとしたら、「生命の可能性を考えなければならない」(フォルミサーノ氏)ということになるでしょう。 PFSは他にも様々な発見を行っています。例えば火山の山頂における雲の発生メカニズムの解明に寄与したり、大気中における光化学プロセスの存在を突き止めたりしています。今後数週間かけて、PFSをはじめとするマーズ・エクスプレスの各機器による調査が行われ、このメタンの起源や存在などが明らかにされることでしょう。
ESAの記事へ (英語)
火星から届いた「史上最大の手紙」 (2004年3月30日20:10)
もちろん、いまあるどんな郵便箱にも入りそうにない、長さ24メートル、幅1.35メートルもある巨大な「手紙」が、火星から到着しました…といっても、これは、マーズ・エクスプレス周回機がこれまでに撮影した画像の一部をつなぎあわせて、作られたものです。 この長さと幅は、おそらく「印刷したら」ということかも知れませんが、ESAの写真の説明には明確なことは書いてありません。いずれにしても大きい写真には間違いありません。左の写真も、今回は元画像の一部を切り取った上でさらに縮小しています。 写真の範囲は、長さ3700キロメートル、幅は166キロになります。カバーしている範囲は38万平方キロということで、ほぼ日本列島全体の面積と同じです。この画像を作るために、約2.5ギガバイトものデータ(非圧縮状態)が使われました。画像はもちろん、マーズ・エクスプレスが誇る、高解像度ステレオカメラが撮影したものです。 軌道の高さが異なっているため、画像の幅も徐々に変わっています。そのため、いちばん下の部分では幅が166キロなのですが、上の方では画像の幅は細くなり、約78キロとなります。画像のいちばん下は南緯52度、いちばん上は北緯12度となります。 この写真の中には、マーズ・エクスプロレーション・ローバ1号機「スピリット」が着陸した、グセフ・クレーターも含まれています。グセフ・クレーターは南緯14.5度に位置していますので、頑張ればどこか、わかるはずです… なお、下のESAのページでは、写真をFlash形式で、スクロールしながらみることができるようにもなっています。
ESAの写真の説明ページ (英語)
火星のアスクレウス山 (2004年3月23日17:50)
周回機が撮影した、火星のアスクレウス山の画像が公開されました。 このアスクレウス山は、火星にある高地、タルシス台地 (Tharsis)にある火山です。ここには、火星最大の火山で、太陽系最大の火山でもあるオリンポス火山もありますが、こちらは先日探査機で撮影しました。 タルシス台地には他にも「タルシス三山」とも呼べるような3つの大きな火山があります。それぞれ、アルシア、パボニス、アスクレウスという名前が付けられています。 今回撮影された火山はこのうちの1つのアスクレウス山です。この火山は、3つのうちいちばん北に位置するものです。この写真ではややピンクがかった部分がみえますが、これは雲です。また、写真の中に筋のようなものがたくさんみえますが、これは溶岩チューブと呼ばれるものです。溶岩流が冷えてくるときに、内部にできた空洞が次第に連なることに寄り、チューブ状になったものです。 溶岩チューブは、火星に限らず、月や地球でも一般的なものです。 なお、下のESAのページでは、この同じ領域を立体画像として撮影した写真もごらんいただけます。
ESAの写真の説明ページ (英語)
南極の極冠に水の氷の存在を確認 (2004年3月18日17:40)
火星の極地域には、極冠と呼ばれる地域があります。地球から火星を望遠鏡で眺めても、必ず極には白い場所がみえますが、それが極冠です。ここは、昔から氷がある場所だということはわかっていましたが、その氷がどんな成分でできているのかはなかなかわかりませんでした。特に、これまでは北極の極冠は水の氷でできていて、南極の極冠は二酸化炭素の氷(いわゆる「ドライアイス」)でできていると考えられてきました。 ところが、マーズ・エクスプレスの観測によって、南極の極冠にも水の氷があることが、はじめて確かめられました。 左の絵は、マーズ・エクスプレスに搭載された可視光・赤外線鉱物スペクトロメータ(OMEGA)によって撮影された、火星の南極の極冠です。この図の青色の部分が、水の氷が存在している地域になります。OMEGAが測定しているのは、反射されてくる熱の量になります。その量の違いによって、何の氷かを調べるのです。 この図から、火星の南極地域の数百平方キロメートルにもわたる領域が、いわば「永久陶土」の状態にあることがわかりました。つまり、シベリアの大地のように、氷に土が混じって凍りついている状態にあるわけです。この「土が混じっている」というのが曲者です。このことによって光の反射率が下がってしまうため、これまでの探査機では反射光を十分な量だけ捉えることができず、このことがわからなかったのです。OMEGAは特に熱の量を捉えるように設計されているため、はじめてこのように、水の氷を捉えることができました。 科学者の推定によると、南極の極冠は3つの地域に分けられます。1つめは極冠の中でも特に明るい部分で、ここは二酸化炭素の氷85%、水の氷15%の混合であると考えられています。 もう1つは「崖」と呼ばれ、極冠と周辺の平原との間を形作っている場所です。ここはほぼ水の氷でできていると考えられます。 3つめの領域は永久凍土の領域で、この「崖」の部分から数十キロメートルにわたって広がっています。 上の写真は、この南極の極冠を、マーズ・エクスプレス搭載の高解像度ステレオカメラで撮影したものです。ちなみに、いま南極地域は夏の終わりにあたっており、温度は高いはずなのですが、それでもこの地域の温度はマイナス約130度というおそろしく寒いものです。 5月になりますと、さらに地下探査レーダ高度計(MARSIS)による観測が行われます。特に、水の氷をMARSISで観測することによって、水の氷がどのくらいの深さまであるかがわかるはずです。そうしますと、極冠の水の氷の量を知ることができるため、火星の水に関して重要な情報になると期待されています。
ESAの記事へ (英語)
周回機が撮影したカセイ谷の写真 (2004年2月19日22:00)
マーズ・エクスプレスに搭載されている高解像度ステレオカメラが、またすばらしい写真を送ってきました。 左の写真は、カセイの「カセイ谷」という場所の拡大写真です。…さて、火星に「カセイ」というのも変だな、と感じた方、正しいです。この「カセイ」はなんと、日本語の「火星」から来ているのです。 「谷」というだけあって、曲がりくねった地形が詳細に映し出されています。このカセイ谷の地形は「アウトフロー・チャンネル」(outflow channel)といい、火星にかつて液体の水が豊富にあったときに、洪水のような大量の水の流れによってできた地形であると考えられています。あるいは、この谷の地形は氷河などの氷の流れによってできた可能性もあります。 写真は、幅が約130キロメートルです(左下に10キロメートルの縮尺があります)。写真の青黒い部分は堆積物と考えられます。また、写真をよく見ますと、右上から左下にかけて、何かが走ったような筋がみえています。これは、強い風の作用による侵食が、障害物によってさえぎられたためにできた模様だと思われます。 このように、1枚の写真から、このあたりの地形について様々なことがわかってきます。こういった写真が大量に得られれば、火星のそれぞれの場所について、そこがどのようにできてきたかを知ることができます。それをつなぎ合わせれば、火星がたどってきた歴史をひもとくことができるでしょう。
ESAの記事へ (英語)
火星ローバ「スピリット」と「マーズ・エクスプレス」が協力 (2004年2月13日18:00)
順調に火星を周回している「マーズ・エクスプレス」と、アメリカのマーズ・エクスプロレーション・ローバ1号機「スピリット」がタッグを組んで、火星探査を実施しています。 2月6日、「マーズ・エクスプレス」周回機がローバ「スピリット」の上空を飛行中に、周回機は地球からローバに送られるコマンドを中継し、またローバからの送信データの中継役を果たすことに成功しました。 ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のプロジェクトマネージャのルドルフ・シュミット氏は、「これは軌道上ではじめてのESA探査機とNASA探査機の通信である」と述べて意義を強調しています。「スピリット」の計画主任であるジェニファー・トロスパー氏も、「国際的な惑星間通信ネットワークが、火星に作られた」と、成果を喜んでいます。 今回の通信は、ESAとNASAの宇宙における協力関係を築くの一環として実施されました。ローバに対するコマンドは、JPLからまず、ヨーロッパにあるESAのESOC(ヨーロッパ宇宙通信センター。ドイツ・ダルムシュタットにある)に送られ、ここから「マーズ・エクスプレス」の中継を経て火星地表の「スピリット」に送られました。 国際協力という点でも重要な一歩になりますが、それだけではなく、通信の幅が広がることにより、ミッションの柔軟性や緊急時の対応の余地が広がることは、これからの火星探査にとっても重要なことであるといえるでしょう。火星探査をこれから国際協力で行っていくためにも必要な、大きな成果です。 上の写真は、「マーズ・エクスプレス」が撮影した、グセフ・クレーターの立体写真です。グセフ・クレーターは、「スピリット」が着陸した場所になります。
周回機が捉えたオリンポス山 (2004年2月12日19:20)
写真に写っているのは、火星最大、そして太陽系最大の火山、オリンポス山の山頂付近のカルデラです。火星探査機としては、この「マーズ・エクスプレス」の高解像度ステレオカメラがはじめて捉えた映像です。 オリンポス山は平均して高さが22キロもある火山で、カルデラの深さも3キロあります。写真の解像度は1ピクセルあたり12メートルあります。 (写真サイズが3.8MBあります。高解像度の画像を表示する際にはご注意下さい) こちらは、もう少し接近した写真です。上のオリンポス山カルデラの南側の部分になります。高解像度ステレオカメラのデータに加え、火星のデジタル地形モデルによる計算結果も加えて処理をしてあります。 まるで舌のような形で、物質が大きく動いたような跡がみられます。また、すじ状の模様は断層であると思われます。このカルデラは、火山活動が終わったあとに、溶岩が抜けてできた空洞が陥没して作られたものであると考えられています。その際に、カルデラの地面には伸びる方向で力が働いたため、大地には開く方向での割れ目ができています。 その後の陥没によりできた小カルデラも、この写真の中にみえています。この小カルデラが、もともとあったカルデラの一部をさらに陥没させている様子が分かります。
写真の説明 (ESA) (英語)
ESA、「ビーグル2」喪失を宣言 (2004年2月12日17:40)
昨年12月の着陸以降、交信が途絶えていた着陸機「ビーグル2」について、ヨーロッパ時間の2月6日に管理会議が開かれました。この席で、現状の認識合わせが行われたあと、「ビーグル2」が失われたことが宣言されました。(プレスリリースの表現では、declared Beagle 2 lostと書かれています)。調査会議の議長はESAの監査官であるレン・ボネフォイ氏(Ren Bonnefoy)です。 イギリスの科学大臣であるセインスバリー卿(Lord Sainsbury)とESA(ヨーロッパ宇宙機関)は、「ビーグル2」の喪失についての調査会議を設置することになりました。 ESAのジャック・ドルダン長官は、「ESAは加盟国の協力で成り立っている組織であり、よい経験、苦い経験から学びとった教訓を共有することは、協力関係の基本である」と述べています。 会議では、「ビーグル2」が通信できなかった理由や、そこから将来のミッションに向けて打ち出せる対策などについて議論します。会議の設置は、ESAにおける通常の手続きで実施されますが、「ビーグル2」はイギリスで製作されたものであるため、報告はESA長官だけではなく、イギリスの科学大臣にも報告されることになります。 調査範囲は、技術的な問題点及び計画上の問題点など、ミッションの初期段階から軌道上での問題点までの幅広いものとなります。
「ビーグル2」、最後の手段へ (2004年1月27日12:10)
残念ながら、着陸機「ビーグル2」からの通信はまだ回復していません。この3日間、上空を飛ぶマーズ・エクスプレス及び2001マーズ・オデッセイ探査機、さらにはイギリスのジョドレルバンク天文台も利用し、集中的な捜索が行われましたが、発見できませんでした。 「ビーグル2」の主席研究者であるコリン・ピリンガー教授は、「ビーグル2がたとえ火星の地表に降りていたとしても、動作はしていないことを認めなければならない」と述べています。 「まだあきらめたわけではないが、最後の手段を取らなければいけない。それは、2001マーズ・オデッセイ探査機を利用してコマンドを送り、ビーグル2の電源を一度切った上で内蔵ソフトウェアを再読み込みするものである。おそらくシステムが壊れたものと想定して、我々は検討を進めており、このコマンド送信が復活の唯一の方法であると考えている」と、ピリンガー教授は述べています。 下のトピックスでも述べている通り、「ビーグル2」と地球、及び上空の探査機との通信を行っていないことから、「ビーグル2」はある種の緊急モードに入っており、火星の昼間の時間中、通信を試みようとしているはずです。にもかかわらず見つからない理由として、着陸機のバッテリーの電力が減っているためではないかと考えられます。 一方で、「ビーグル2」の不具合究明も始まっています。原因究明のためには、マーズ・エクスプレス周回機の高解像度ステレオカメラで「ビーグル2」を撮影することができればと、原因究明グループは期待を寄せています。
「ビーグル2」のウェブサイト (英語)
「news」に情報があります。
スペクトロメータが捉えた「火星の水」 (2004年1月24日19:30)
「マーズ・エクスプレス」周回機は、29日には最終的な火星周回軌道に入る予定です。しかし既に、いろいろな観測結果が出始めています。 「火星軌道投入からわずか1ヶ月で、これほどの成果が出るとは予想していなかった。多くの幸せな科学者が、最初の結果を出そうと一生懸命になっている。」と、ESA科学部門のデビッド・サウスウッド(David Southwood)部門長は語っています。 左の写真は、可視光・赤外線鉱物スペクトロメータ(OMEGA)が捉えた、火星の南極の極冠の様子です。いちばん右側が可視光領域で捉えた極 冠、真ん中が二酸化炭素の氷の吸収帯で捉えた画像、左側が水(の氷)の吸収体で捉えた画像です。 マーズ・エクスプレスの目的の1つは、火星の水の存在や、その状態を調べることです。OMEGAを通じて、氷の水、そして二酸化炭素の氷(いわゆる「ドライアイス」)の存在が確かめられましたことになります。 さらにこの結果を、全球フーリエスペクトロメータ(PFS)が確かめています。PFSの観測により、南半球と北半球で、二酸化炭素の氷の分布が違うことが分かってきました。 また、探査機の電波科学実験(MaRS)により、火星の表面で電波が散乱していることが確かめられました。この手法を応用して、火星表面の構成物質なども明らかにできるかも知れません。 エネルギー中性原子解析装置(ASPERA)のデータからは、火星の太陽風を受けている領域と、火星の尾部での測定に、異なる特徴があることがわかってきています。 このように、初期的な観測でも、周回機はいろいろな成果を挙げつつあります。今後の観測が多いに期待できるといえるでしょう。
ESAのプレスリリース (英語)
長さ24メートルの火星 (2004年1月24日19:10)
高解像度ステレオカメラの画像を使って、巨大な火星の画像が作られました。 画像の大きさは長さ24メートル、幅が1.3メートルにもなります。この写真がカバーする領域は187万平方キロ、処理したデータは100GBという大量なものです。HRSCの能力が遺憾なく発揮されたこの写真は、10歳の子供たちのグループによって、ESAの記者イベントの最後に、会場の会議室に運び込まれました。 ドイツ科学教育省の大臣でもあり、ESAの大臣レベルの会議議長でもあるエデルガード・ブルマン大臣は、「ヨーロッパはこのミッションにとても大きな誇りを持っている。マーズ・エクスプレスは、ヨーロッパの宇宙計画における巨大な成功である。」と語っています。
ESAのプレスリリース (英語)
周回機が撮影した火星の谷 (2004年1月24日18:10)
この写真は、火星のヘラス盆地(Hellas Basin)の東側にある、レウル谷(Reull Valles)を、搭載されている高解像度ステレオカメラ(HRSC)で撮影したものです。解像度は1ピクセルあたり12メートルで、約100キロメートル四方を撮影しています。 このレウル谷は、洪水によって流れた水でできたと考えられており、火星の水の様子などを探る上で、この写真は役に立つでしょう。
周回機のカメラが捉えたマリネリス峡谷 (2004年1月21日17:20)
「マーズ・エクスプレス」の周回機に搭載されたカメラが、いよいよその威力を発揮し始めました。 周回機は、間もなく最後の軌道変更を行い、本格的な観測を行うための軌道に入ります。それに先立って、観測機器がデータを送りはじめました。左の写真は、周回機が搭載している高解像度ステレオカメラ(HSRC)が捉えた、火星の代表的な地形、マリネリス峡谷です。 観測機器はまだ、最初のテスト段階にありますが、それでもこのように非常に精度の高い映像が撮れることが実証されつつあります。この画像は高度275キロメートルの上空から撮影されたもので、精度は1ピクセルあたり12メートルとなります。
ESAのプレスリリース (英語)
「ビーグル2」との次の交信は25日頃 (2004年1月21日16:00更新)
依然として交信ができていない、着陸船「ビーグル2」ですが、科学者たちは、次の交信を、現地時間で24〜25日頃に行う予定にしているようです(日本時間ですと25日頃になります)。 実は、1月12日から、「ビーグル2」と地上や探査機との交信は行われていません。これは、10日間交信を行わないことによって、「ビーグル2」交信モードを切り替えようというものです。「ビーグル2」は、10日間交信ができないと、火星の昼間の時間中、ずっと交信を行おうとするモードに切り替わります(なんとか通信をしようとするためのモードです)。 つまり22日になると、「ビーグル2」はこのモードになり、探査機に発見されやすくなります。しかし、火星の温度が低いことにより、「ビーグル2」内部のタイマーが正常に作動していない可能性もあります。そうなると、「ビーグル2」が正確に10日間を測れない可能性があります。このため、科学者チームはあと2日間だけ、この「沈黙」状態を続けることにしました。 こういった理由から、次に「ビーグル2」が、マーズ・エクスプレス周回機と交信するのが、24〜25日になるというわけです。
「ビーグル2」ウェブサイトの最新情報 (英語)
「ビーグル2」からの信号、受信できず (2004年1月8日16:50更新)
マーズ・エクスプレスの周回機が、はじめて着陸機「ビーグル2」と交信を試みましたが、うまくいきませんでした。 交信は1月7日の午後8時頃(日本時間)に行われました。この時間に、周回機が、着陸機がいるであろうと思われる付近の上空を飛行しましたが、信号を受信できませんでした。下のトピックスにあるように、かなり近いところを飛んでいたこともあり、交信が期待されていたのですが、うまくいきませんでした。またこれまでに、NASAの2001マーズ・オデッセイ探査機や地球の電波望遠鏡などを通じたコンタクトも行われましたが、いずれも成功していません。 ただ、「マーズ・エクスプレス」の周回機は、最初から着陸機との交信のテストを行っていますので、この先交信ができるチャンスはまだあると、ESAでは期待しているようです。
ESAのプレスリリース (英語)
周回機の軌道変更に成功、さらに火星に近づく (2004年1月5日16:20)
1月4日午後9時頃(日本時間)、「マーズ・エクスプレス」の周回機の軌道変更作業が行われました。これまでの軌道からさらに火星に近いところを回る軌道への変更作業です。これにより、軌道は遠火点(火星から最も遠い点)が40000キロ、近火点(火星から最も近い点)が250キロの軌道になりました。今後、7日及び11日(日本時間)に行われる2度の軌道変更を経て、最終的には遠火点11000キロ、近火点300キロの軌道に入る予定です。 火星に近い軌道になってきたことで、いまだ通信ができていない着陸機「ビーグル2」との通信への期待も膨らんでいます。特に、7日の午後8時頃には、周回機の軌道の近火点が、着陸機がいる領域の上空にあたる(要は、周回機と着陸機が最も近づく)ことになっています。その距離315キロ。このときに交信ができるように、ESAのスタッフの協議も始まっています。
ESAの記事へ (英語)
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