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周回機

マーズ・エクスプレスは、着陸機「ビーグル2」と周回機から構成されています。周回機は、火星上空から、火星表層の水の様子を観測する役割を持っています。

周回機から切り離される「ビーグル2」
火星軌道上のマーズ・エクスプレス(想像図)
Photo by ESA


小さな周回機に多数の観測機器

周回機は、大きさが1.5×1.8×1.4メートルと、アメリカの他の探査機と比べると一回り小さいサイズになっています。しかし、内部には多数の観測機器が搭載されています。
装置は大きくわけて2種類に分かれます。火星の表層及び地下を探索する装置と、火星の大気を観測する装置です。
まず表層や地下を調べる装置は、高解像度カメラ、スペクトロメータ、レーダ高度計になります。
高解像度ステレオカメラ (HRSC: High Resolution Stereo Camera)
高解像度ステレオカメラ火星全体を平均10メートルの解像度で、カラーの3次元ステレオ撮影を行います。場所によっては、最高で解像度2メートルという非常に細かい精度で撮影します。

可視光・赤外線鉱物スペクトロメータ (OMEGA: Visible and Infrared Mineralogical Mapping Spectrometer)
可視光・赤外線鉱物スペクトロメータOMEGAは、100メートル精度で、火星全体の鉱物分布の地図を作り上げるためのスペクトロメータです。可視光線や赤外線の波長の光は鉱物によって吸収の度合が異なりますので、それを利用して、火星にどのような鉱物があるのか、またその量がどのくらいなのかを精密に調べ上げます。

地下探査レーダ高度計 (MARSIS: Sub-Surface Sounding Rader Altimeter)
地下探査レーダ高度計のアンテナを広げた状態のマーズ・エクスプレス周回機MARSISは、電波を使って火星の地下をマッピングするための装置です。日本の月探査機「セレーネ」にも搭載されているレーダサウンダーと同様の装置で、火星の地下に上空から電波を発射し、地下に通る電波の量から、地下数キロメートルの構造を明らかにしようという装置です。また、地表から反射される電波を捉えれば、高度計として使うこともできます。
反射されてくる電波の強さにより、火星の地下にどのような層構造があるか、さらに氷の層などがあるかどうかを知ることができます。
一方、大気の組成などを知るための装置は3種類あります。
紫外・赤外大気スペクトロメータ (SPICAM: Ultraviolet and Infrared Atmospheric Spectrometer)
紫外・赤外大気スペクトロメータSPICAMは、火星大気によって太陽光が吸収されることを利用して、その吸収の度合から、火星大気の組成を調べる装置です。
SPICAMは紫外、赤外の両方の吸収度を測れるようになっていますが、このうち紫外線の吸収からはオゾンの量が、赤外線の吸収からは水蒸気の量を測ることができます。

全球フーリエスペクトロメータ (PFS: Planetary Fourier Spectrometer)
全球フーリエスペクトロメータ火星大気の95%以上を占める二酸化炭素が、火星大気全体にどのように分布しているかを測ります。大気を通過してきた光の、特に赤外線領域のスペクトルを調べることにより、水平、垂直方向の分布を全球的に調べるための装置です。
また、二酸化炭素だけではなく、水や一酸化炭素、メタンやホルムアルデヒドといった微量成分の分布も調べることができます。

エネルギー中性原子解析装置 (ASPERA: Energetic Neutral Atoms Analyser)
エネルギー中性原子解析装置ASPERAは、火星の上層大気において、酸素原子や水素原子がどのくらいあるかを調べるための装置です。これにより、火星の上層大気が太陽風とどのような関係を持っているのかを知ることができます。
火星大気に太陽風が吹きつけることにより、火星大気が徐々に失われているといわれています。その機構がどのようなものなのかを調べることが、この測定器の目的です。日本の火星探査機「のぞみ」も同様の目的を持っていました。
この他にも、火星から地球へ到達する電波が火星大気中を通過するのを利用し、その波長の変化などから火星大気や電離層の様子を調べる、電波科学実験(MaRS: Mars Radio Science Experimet)も行われます。

狙うのは、火星の水

着陸機と共に、この周回機の観測で重要なのは、火星の地下の水の分布です。表面の水については、マーズ・グローバル・サーベイヤ2001マーズ・オデッセイなどが調べていますが、地下となるとまだなかなかわかっていません。
そのため、高精度カメラや上空から地下を探査できる装置により、地下の様子を詳しく調べ、さらに表面を詳しく調べることで、その地下がどのようになっているか、さらには水が流れた跡や水によると思われる地形を詳細に調べます。
一方で、大気を計測する装置を利用することで、火星の大気の組成などから、火星の大気がどのような環境にあるかを知ることができます。これにより、火星の大気の流れや気候変動などの様子を調べることができ、火星の気象学についてより詳しく知ることができるようになります。
これらのことが明らかになれば、火星にかつて生命が存在できるような環境があったかどうか、知ることができると考えられます。
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