マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス (2004年8〜9月) - 火星・赤い星へ - 月探査情報ステーション
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マーズ・エクスプロレーション・ローバ トピックス

2004年8〜9月

おことわり: 一部のトピックスについては、原文が8月発表ですが、月探査情報ステーションへの掲載が9月になっているものもあります。

ローバ運用、さらに6ヶ月延長へ (2004年9月22日13:50)
※このトピックスを先に更新したため、更新時刻が前後しています。

NASAでは、ローバの状態をみながら、さらに6ヶ月間、ローバ探査を延長することにしました。
2台のローバは、まず3ヶ月間の基本ミッション期間(2004年1〜4月)を順調に終え、さらに拡張ミッション期間(4〜9月)も、多少のトラブルはあったもののほぼ順調に遂行しています。NASA本部の太陽系探査部門長であるアンドリュー・ダンツラー (Andrew Danzler)氏は、「『スピリット』と『オポチュニティ』は、まだ目を見張る冒険を続けられそうだ。我々はこのよいニュースに、さらに地球側での支援を加えたいと思っている」と述べています。
ちょうど火星が太陽の裏側を通っている時期だったため、2台のローバはしばらくの間、地球との交信ができませんでした。従って、この12日間はローバは動けなかったのです。「オポチュニティ」については月曜日(アメリカ現地時間)から、「スピリット」については今日21日(アメリカ現地時間)から運用を再開しました。
ちょうどこの12日間は、ローバにとってもあまりいい時期ではありませんでした。ローバは太陽光を動力として動いていますが、それが最も弱い時期にあたるからです。その意味では「いい中休み」になったのかも知れません。
「2台のローバの過去の実績は保証済みだが、既にいくつか傷みが来ている兆候が出ている。この先どれくらい運用できるのか、何日間なのか何ヶ月間になるのかはわからない。とにかく我々は、この国家資産からできるだけ大きな成果を得られるように最善を尽くすつもりだ。」と、計画責任者のジム・エリクソン (Jim Erickson)氏は述べています。

ミッションの延長で、必然的に科学者への負担も増えます。2度目の期間延長にあたって、科学者たちは負担を減らすため、1日の運用を決める会議ではそれぞれの場所からテレビ会議を行うなど、負担を減らすための対策をとっています。もちろん、これはコストを減らす効果もあります。このミッションでずっと働いてきているスティーブ・スクワイヤーズ博士(このコーナーを読んでいる方にはもうお馴染みの名前ですよね)ですら、「これで普通の生活に戻り、家族の元に戻って、それでも毎日火星探検ができる。」と喜んでいます。やっぱり科学者も家族が大切なんですよね。
また、負担減のもう1つの策として、10〜12月の間は運用を週5日間とすることです。ローバ自体、冬の期間に入っていてエネルギーの消耗が激しいことから、1月になって状況が回復するまでは、ゆっくり運用しようということです。

なお現在のところ、「スピリット」はコロンビア・ヒルの西側の尾根を上っているところです。「オポチュニティ」は、エンデュランス・クレーターの探査を続行しており、「バーンズ・クリフ」(Burns Cliff)と名付けられた岩の露出場所に向かっています。

「合」がやってくる (2004年9月22日17:10)
※9月1日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

地球からみて、惑星が太陽の向こう側に回る現象を、「合」(ごう)といいます。この時期、惑星は太陽の向こう側に行っているため、地球からはみることができなくなります。
さて、火星は9月16日に合を迎えます。太陽が間に入ってしまうと、太陽周辺の電波環境に邪魔されて、火星との通信がしにくくなってしまいます。そのため、地球とローバの通信も、数日間にわたって途絶えることになります。
今のところ、ローバチームでは、太陽から2度以内の角度にあるときに、通信ができなくなると予想しています。計画されている通信停止期間は、「スピリット」が9月8日から、「オポチュニティ」が9月9日(いずれもアメリカ現地時間)から、それぞれ12日間となっています。
もちろん、その間ローバはぼけっとしているわけでも寝ているわけでもありません。あらかじめ送られる指令をもとにして、大気観測やメスバウワースペクトロメータによる観測を行います。ロボットアームは動かしませんが、カメラが搭載されたマストは動かすことになりそうです。また、2001マーズ・オデッセイ探査機との交信は毎日行うほか、地球との直接交信も試みることになります。

削る、削る、… (2004年9月22日17:00)
※9月1日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

前回のトピックスでお知らせした、「オポチュニティ」の岩石研磨装置の故障は、その後無事回復しました。岩石研磨装置の刃を逆回転させて、はさまっていた小石を取り出すことで、無事任務復帰と相なりました。
「オポチュニティ」の岩石研磨装置は、これまでに18回岩石に穴を開け、5回にわたって岩石を削りました。「スピリット」の岩石研磨装置は、9回穴を開け、28回削りました。今回の探査では、この装置が大活躍したといえるでしょう。

やはりグセフ・クレーターに水は存在したか? (9月22日16:20)
※8月18日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

なかなか「水に恵まれない」スピリットですが、今度もまた「ひょっとすると」水に関連したものかも知れないという証拠をみつけました。
「スピリット」は、現在コロンビア・ヒルという丘の調査をはじめています。手始めとして、グセフ・クレーターの平原から9メートルほど高いところにある、「クロビス」(Clovis)という岩の領域を調査しています。
クロビス さて、このクロビス(左の写真の岩)に、かつてグセフ・クレーターに水があったらしいという証拠が残されていました。スティーブ・スクワイヤーズ博士によると、「この岩は平原にある岩とは異なっている。おそらく少量の水によると思われる岩脈や岩の被覆などがそうであった。そして今、この岩には、さらに水による変成があったことが分かった。」ということだそうです。
クロビスがどのような過程をたどって今に至ったのかを知るためには、クロビスの「前」の姿を知らなければなりません。しかし、スクワイヤーズ博士に言わせれば、「私たちは『後』の姿しかみていない。もし運がよければ、このまわりのその『前』に相当する岩をみつけられるだろう。」ということです。
この水による変成作用は、アルファ粒子・X線スペクトロメータにより発見されました。岩の内部に、高い濃度で臭素や硫黄、塩素などの元素が濃集していたのです。また、岩自体が非常に柔らかく、玄武岩(火山岩)のように固くないことから、非常に強く(水による?)変成を受けたことがわかります。
果たして水がこのクロビスという岩にどのように作用したのかは、今後の調査を待たなければなりませんが、ひょっとすると、水に直接つながるような証拠が、今後発見できるかも知れません。期待しましょう。

オポチュニティ、またもブルーベリーに遭遇 (2004年9月22日15:40初回更新、2004年10月18日17:30最新更新)
※8月18日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

ローバ2号機「オポチュニティ」は、機器のトラブルがあるものの順調に調査を進めています。
この15日(アメリカ現地時間)に、岩石研磨装置が動かなくなるというトラブルに遭遇した「オポチュニティ」ですが、技術者たちは解決に楽観的です。どうやら、研磨用の刃の間に小石が挟まったものと思われ、逆回しにすれば問題は解決しそうだからです。もちろん、こういった問題には慎重に対処しなければいけませんが、まだいくつか解決策はあるということで、恐らくは大きな問題にはならないと思われます。
さて、オポチュニティは、エンデュランス・クレーター南側の岩が露出している領域の横断に成功しました。いちばん下にある(つまりいちばん古い)露頭である「アクセル・ハイバーグ」(Axel Heiberg)(カナダの北極海諸島の島の名前にちなむ)などを調べた結果、層毎に違う科学組成を持つことがわかりました。中央の層では、塩素の量が3倍になっているのに、マグネシウムや硫黄の量は古い層で少なくなっています。つまり、この2つの元素が水に溶けてなくなってしまったことが推測されるのです。
ブルーベリーとポップコーン そして、例によって出てきた小球、ブルーベリーが、このエンデュランス・クレーターでもたくさん見つかりました。これは灰色の小さな球で、「オポチュニティ」が着陸したイーグル・クレーターでも見受けられたものです。このエンデュランス・クレーターでは、赤い色をした石板部分「バイロット」(Bylot)で見つかりましたが、これはイーグル・クレーターのものと少し異なっています。中の組織が粗く、サイズのばらつきがより広く、灰色ではなく岩の色をしています。いくつか浸食されたと思われる小球があり、科学者たちは水の作用があったのではないかと考えています。ただ、なぜこのようなばらつきがあったかは「いまだミステリー」(調査にあたっているコーネル大学のズー・ラーナー(Zoe Learner)氏)です。
また、この「ブルーベリー」よりも色の明るい小球が見つかり、科学者たちはこれを「ポップコーン」(また食べ物の名前ですね)と呼んでいます。写真をみると、「ブルーベリー」の中にも、この「ポップコーン」の物質で覆われているものがあることから、両者は密接な関係にあるものと思われます。

火星探査用ソフトウェアがNASAの賞を受賞 (2004年9月22日15:00)
※8月12日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

NASAでは、火星探査に利用されているデータ可視化用のソフトウェアパッケージを、NASAで開発された今年最高のソフトウェアとして選定しました。
このソフトウェアは「科学活動プランナー」(Science Activity Planner)と名付けられていて、JPLのソフトウェア技術者たちによって開発されました。単にデータを可視化するだけではなく、ローバの運用計画の策定や、能力のシミュレーションまでできるというソフトウェアで、さらには流体力学への応用や、一般への広報目的にまで利用することができるものです。
実際、教育・アウトリーチ目的でリリースされている「マエストロ」というソフトウェアは、この科学活動プランナーをもとにして、さらにトレーニング機能などを追加したものなのです。

この科学活動プランナーは、JPLの科学者や技術者が毎日のように利用しています。毎日のローバの運用をどのようにするかはこのソフトウェアが元になっています。2台のローバを合わせて、350日にも及ぶ順調な運用を支えてきたのは、このソフトウェアだともいえるでしょう。「受賞と聞いてわくわくしている。ローバを支えるチームの一員であることを誇りに思っている。」と、JPLのソフトウェアチームのリーダであるジェフ・ノリス (Jeff Norris)氏は語っています。

国際協力でリレー中継 (2004年9月22日14:40)
※8月10日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

火星で、アメリカとヨーロッパが見事な共同作業を行いました。NASAのローバの画像をヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機が中継して、地球へ伝送したのです。この実験は、将来、両者に夜共同ミッションが行われた際に、データの伝送などがうまくいくことを確認するために行われました。
8月4日(アメリカ現地時間)、ローバ「オポチュニティ」から送られた15枚の画像データは、ヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」で中継され、ドイツ・ダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙通信センター(ESOC)で受信されました。さらにその画像は、そこから、ローバ運用の本拠地である、アメリカ・カリフォルニア州のジェット推進研究所(JPL)へと送られました。
また、マーズ・エクスプレスは、2台のローバと2つのネットワークモードについて中継試験を行っています。
2月にもマーズ・エクスプレスを利用した中継試験が行われましたが、このときにはそう新スピードが遅く、大量のデータを送ることができませんでした。今回は、約5MBのデータをマーズ・エクスプレスを通じて送ることができました。この実験の最後の方では、電波のドップラー変化のデータも取得することが計画されています。

基本ミッション期間の成果が論文発表へ (2004年9月22日14:20)
※8月5日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

「スピリット」の基本ミッション期間(1〜4月)の成果が、8月6日に発行される「サイエンス」誌に掲載されることになりました。120人の著者が名を連ね、11の論文が掲載されるという大特集です。
この中には、「スピリット」が行ってきた岩石の分析や、クレーターの調査、地下の水の痕跡に関する調査などや、岩からみつかった過去の水の証拠などについて書かれています。
「これは最初の一群の論文に過ぎない。」と、コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士は意気盛んです。「もっと大量の論文がこの先数ヶ月間にわたって出ることになるだろうし、何年にもわたって成果が出版されるだろう。2台のローバが動けば動くほど、科学的な成果がどんどん入って来るのだから。」
この新しい論文では、「スピリット」は(最初の3月で)湖に関連した堆積物はみつけられなかったと述べています。「このような堆積物は、グセフ・クレーターには確実に存在すると思われるのだが、溶岩に埋もれてしまったか、衝突によって飛散してしまった可能性がある。」というのが、11の論文の最初を飾る、スクワイヤーズ博士他49人の著者が名を連ねる論文です。
他の論文では、調査した岩についての分析結果が印され、調査領域の岩の多くがカンラン石を含む玄武岩であったことが印されています。また、以前のトピックスでも取り上げた、「スピリット」がみつけた水の証拠などについても触れられています。

「オポチュニティ」にも不調 (2004年9月8日20:30)
※8月4日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

2号機「オポチュニティ」は、エンデュランス・クレーターのさらに深いところへと進もうとしています。既にクレーターの中に20メートルほど入り込んでおり、もし行けるようであれば、科学者たちはクレーター斜面を時計回りに回り込んで、クレーターの中の砂丘やれき、崖の下などを調べたいと考えています。
ところが、ここにきて「オポチュニティ」にも不調が発生してしまいました。顕微鏡カメラで写真が撮影できているにもかかわらず、「失敗」という結果が地球に返されてくるのです。原因として考えられているのが、ロボットアームの中を走っているケーブルの劣化です。将来に備え、ローバチームではロボットアームをなるべく動かさないように運用していくことにしています。
「この問題に関しては私たちは非常に用心深く対応している。なぜなら、機器を危険にさらすことはしたくないからだ。」と、アメリカ地質調査所フラッグスタッフ支所のケン・ヘルケンホフ(Ken Herkenhoff)博士は述べています。
2台のローバとも問題が出てくるのは仕方ないといえば仕方ないのですが、心配ではあります。JPLのローバのミッションマネージャであるジム・エリクソン(Jim Ericsson)氏はこう語っています。「間違いなく、今後より多くの問題が発生するだろう。ローバが動ける限り、できるだけ多くの成果を得るため、我々はできることは何でもする。しかし、ローバは永遠にもつようなものではないのだ。」

「スピリット」にさらなる不調が発生 (2004年9月8日20:20)
※8月4日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

1号機「スピリット」は、コロンビア・ヒルの尾根近くにある、基盤岩のあたりへと走行しています。ここは、ローバがずっと走ってきた平原より約9メートルほど高い位置にあります。 ここまで、右前輪にトラブルを抱えつつ何とか走っている「スピリット」ですが、時間が経つにつれて、不調の範囲が広がってきています。8月1日(アメリカ現地時間)には、半導体部品に故障が発生し、小型熱放射スペクトロメータが動かなくなるという障害が発生しました。
ローバチームで調べた結果、この障害は、複数の半導体間での信号のやり取りのタイミングが予定していたより数マイクロ秒前だったために発生したものとわかりました。もし実際にそれが原因だった場合には、同じ問題が起きることが考えられ、そうすると小型熱放射スペクトロメータが使えなくなります。そのため、ローバチームでは、問題が解決するまで、毎日の運用方針を決める際、小型熱放射スペクトロメータ、メスバウワースペクトロメータアルファ粒子・X線スペクトロメータの3機器については運用に含めないこととしました。
「スピリット」は、現在「クロビス」(Clovis)と名付けられた地域を調べており、また、ここからのパノラマ写真も撮影しています。

上るものあれば下るものあり (2004年9月8日19:10初回更新、10月18日17:10最新更新)
※7月16日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

「スピリット」は上っていますが、「オポチュニティ」は下っています。エンデュランス・クレーターの下の層を探るため、「オポチュニティ」はクレーターをさらに下りています。層を降りるにつれて、含まれる塩素の量が増え続けていることに、科学者は一様に驚きの様子をみせています。
ナガスクジラ このように塩素が増え続けるのかどうかを確かめるため、「オポチュニティ」はあと数日ほどかけてクレーターを下り続ける予定です。また、左の写真にある、「ナガスクジラ」(razorback)と名付けられた、歯のような形をした構造も調べることにしています。この地形は幅が1センチメートルほどのものですが、何かが流れたようなあとであることは間違いありません。科学者たちは、この「ナガスクジラ」が、メリディアニ平原の水の謎を解く鍵を握っているのではないかとにらんでいます。
火星の冬はだいたい9月半ば頃が中心となります。その頃になると、ローバのエネルギーを賄う太陽光が弱くなり、太陽電池による充電により長い時間が必要になってきます。このような状態でも動けるよう、ローバは休止状態や「熟睡」状態などをより長くとるようにしています。また、ローバ(の太陽電池)を北向きに向けることで、より多くの光を当てることができるようになります。さて、2台のローバは、火星の冬を乗り越えられるでしょうか?

前輪の不調を克服する「回り道作戦」 (2004年9月8日19:00)
※7月16日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

人間も機械も酷使すれば調子が悪くなるものです。迫りくる火星の冬を前に、「スピリット」の総走行距離は、既に想定距離の6倍を超える3.5キロにも達しています。以前から調子が悪かった右側の前輪について、修復を試みようとはしているのですが、部分的にしかうまくいっていないようです。
そこで、ローバの運用者が考えたのが、「回り道作戦」です。残った5つの車輪でバックしながら、調子の悪い車輪を引きずって走るというものです。6輪で走らないため、距離は長くなりますが、もっと長い間走ることができるようになります。
7月15日(アメリカ現地時間)には、「スピリット」は8メートル後退することに成功しました。調子の悪い車輪は、その間の1割ほどだけ働き、岩を乗り越えるのに役立ったほか、引きずることによって溝を作ることができました。
この後退の途中で、「スピリット」は、このあたりでいちばん古い地層と思われる板状の岩をみつけました。今は後ろに下がる、つまり北へ向けて走っていますが、最終的に「スピリット」は、東に向けて、6つの車輪全てを使って後ろ向きに丘を上ることになります。
車輪が1つ動かないということは、ローバが思った方向に走れないことも意味します。しかし、地上のローバ運用チームは、このずれをある程度自動的に修正するプログラムも作り、対応しています。

「オポチュニティ」は下の地層へ (2004年9月8日18:50初回更新、10月18日17:00最新更新)
※6月25日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

2号機「オポチュニティ」は、エンデュランス・クレーターへの降下を行っています。目標としている領域に、手、というかロボットアームが届くあたりまで降りることができました。
クレーター内の地層 「オポチュニティ」が発見した地層は、硫黄に富む層の下にありました。左の図をご覧ください。5つの層が識別できています(下からA, B,...Eと印が打たれています)。このうち、Aの層は、着陸したイーグル・クレーターでみつかった層によく似ています。B, C, Dと上がるにつれて、粒径が細かくなってきますが、EになるとまたAに似てきます。さらに、AからDまでの層は、硫黄分に富んでいることもわかりました。
「硫黄に富む層」となると、「オポチュニティ」が着陸したイーグル・クレーターでもみつかっていますので、その層の下側の層である可能性がますます高まったことになります。
コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士は、「我々は、硫黄などを含む層の下に玄武岩の(基盤)層がみつかると思っていた。しかし実際みつかったのはより硫黄を含む層だ。下に行けばいくほど、含まれる塩分が濃くなっている。これは、もともとあった水の量が(想定されていた)より多いことを意味している。」と述べています。

「スピリット」も赤鉄鉱を発見 (2004年9月8日18:30)
※6月25日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

赤鉄鉱(ヘマタイト)といえば、「オポチュニティ」がいるメリディアニ平原に大量に存在し、水と関わりがあるとして注目されている鉱物ですが、この鉱物が、「スピリット」の探査によっても発見されました。
「スピリット」は現在、コロンビア・ヒルという丘陵域を調査していますが、その調査の過程で、ヘマタイトを含む岩石を発見しました。
1号機「スピリット」が着陸してから、もう間もなく半年になろうとしていますが、このーバは想定期間をはるかに超えて活動を続けています。仕様では総走行距離が1キロ程度と考えられていたのに、現在までの総走行距離は既にその3倍を超えています。
もちろんさすがに全てが順調というわけではなく、「スピリット」も、車輪のうち1つがうまく動作していません。それに、太陽光が弱くなる火星の冬が近づいているため、ローバチームでは、太陽光をできるだけ得られる場所を探そうとしています。
ヘマタイトがみつかった岩は、先日のトピックスでもご紹介した「ポット・オブ・ゴールド」という岩です。大きさはソフトボールくらいということでそれほど大きくはないようですが、なかなか奇妙な形をしているそうです。コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士が形容するその形は、「誰かがじゃがいもを持って、それに楊枝が刺さっていて、楊枝の片方の端にジェリービーン(小さな丸いお菓子)がついているよう」なのだそうです。何でこんな妙な形になったのか、また水に関係するヘマタイトがこの岩になぜ存在するのか、科学者たちは非常に興味を持っています。
しかし、このヘマタイトが本当に水に関係してできたのかどうかは、これからの調査にかかっています。科学者の1人によれば、「『オポチュニティ』がいるメリディアニ平原のヘマタイトは、確かに水によってできたことはわかった。こちら(『スピリット』)の方はこれから調べなければならない」と、かなり慎重なことを言っています。
「スピリット」は、しばらくこの岩をはじめ、周辺の興味深そうな岩石の調査を行う予定です。

テネシーへ向かう「オポチュニティ」 (2004年8月26日18:00)
※6月16日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

テネシーとはいっても、アメリカの州ではありません。「オポチュニティ」の最初の探査目標です。
テネシー エンデュランス・クレーターの中に下りることになった2号機「オポチュニティ」は、約5メートルほど下りました。最初の探査目標は、36センチ×15センチほどの岩「テネシー」です。もちろんその岩の形から名付けられたのですが。
この層は、地質学者たちが、硫黄に富むと考えている層で、「オポチュニティ」が着陸点付近で、水の証拠を発見した層と同じと考えている層にあたります。ローバの科学チームメンバーでニューヨーク州立大学のスコット・マクレナン(Scott McLennan)氏は、「次は、ローバをより下に走らせて、これまでと違う堆積層の最初のクローズアップ写真を撮影することだ。色の違いから考えて、少なくとも3つの堆積層があると考えられる。」と述べています。
これらの層は不安定な状態にあると考えられています。最初、科学者チームは、これらの層が砂のようにゆるく固まったものと考えていました。しかし、近づいて調べてみたところ、層はもう少し固まっていて、クレーターの中に行くにつれて固さが増していることもわかってきました。これは、おそらく他の惑星ではじめてみる堆積層ではないかと思われます。
「オポチュニティ」は、地球上の地質学者が、地層に出会ったときに行うようなことを、今まさに火星で行っているのです。

「スピリット」、コロンビア・ヒルに到着 (2004年8月26日17:50)
※6月16日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

「2台のローバとも新しい場所の探検をはじめた。」JPLのミッションマネージャ、マーク・アドラー (Mark Adler)博士はこう述べて、延長されたミッションも非常に成果が豊富であることを強調しています。
フードをかぶったコブラ 延々とドライブを続けてきた1号機「スピリット」は、ついに目的地のコロンビア・ヒルに到着しました。先週末から、コロンビア・ヒルへ登りはじめ、何枚かの写真を送ってきました。その中には、科学者が大喜びしそうなものも含まれています。写真の中には、明らかに風化したとみえる形の岩もあります。中が柔らかく、外が固いタイプの岩もあるようです。ローバ科学チームの一員で、アメリカ地質調査所(USGS)フラッグスタッフ支所のラリー・ソーダーブローム(Larry Soderblom)博士によると「いちばん不思議なのは、私たちが『フードをかぶったコブラ』と呼んでいるものだ(左上の写真)。表面は明らかに固い岩でできているのだが、その岩がある場所は、ちょうどひさしのような場所の上なのだ。」

ポット・オブ・ゴールド もう1つ、科学者が「ポット・オブ・ゴールド」(金の壷。突然転がり込んだ幸福という意味もある)と呼ぶ岩(左の写真)も、固い表面と柔らかい中味を持っているようです。科学者たちはこの岩を、コロンビア・ヒルでの最初の探査対象に選び、調査を行うことにしています。
コロンビア・ヒルは、平原から高さ90メートルにわたってそびえ立つ(というとちょっとおおげさですが)丘です。科学者たちは、この丘の中にさまざまな種類の岩が存在し、火星のかつてのさまざまな環境の痕跡を残した岩も含まれているだろうと期待しています。延々とここまで来たのですから、「スピリット」にはぜひ、大発見を期待したいところですね。

「スピリット」、硫黄に富んだ砂をみつける (2004年8月26日17:10)
※6月8日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

1号機「スピリット」は、既に総走行距離が3.2キロメートルにも達しています。ただ走るだけではなく、車輪を使って地面を掘ったりして、調査も行っています。その掘った砂の中に、硫黄とマグネシウムに富んだ砂が見つかりました。
しかもこの砂は、掘削を行った別々の場所で見つかりました。ということは、この特徴ある砂が、かなり広く分布していることになります。
コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士は、この発見について、「地下に水が徐々に浸透して鉱物を溶かしこみ、その後水が蒸発して鉱物だけが残ったと考えられる。」と述べています。

行って戻って (2004年8月26日17:00)
※6月8日(アメリカ現地時間)付けのプレスリリースをもとにしています。

2号機「オポチュニティ」は、エンデュランス・クレーターに慎重に下りようとしています。その下準備として、まずクレーターに下りていき、その後戻って、その車輪のあとをみながら、安全に下りられるかどうかを判断しようというのです。
「NASAは慎重な決定をした。クレーターに降りることによる科学的な探査価値は、戻れなくなる危険と同じくらいの価値があるものだ。」と述べているのは、NASAの火星探査プログラムマネージャーのフィルーズ・ナデリ (Firouz Naderi)博士です。もちろん、ぶっつけ本番でローバをクレーターに下ろすわけではなく、NASAは地上…つまり、地球にある同形機を使って実験を繰り返し、危険性を確かめた上で、今回の決定をしたというわけです。
今回の探査の主任研究者であるコーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士も、「クレーターに下りて得られる成果は非常に大きなものだと期待している。」と語っています。

今回「オポチュニティ」が調べることになる領域は、水の存在の発見につながった地層の下あたりにあたります。岩に違いがあれば、当然、堆積したときの環境に違いがあったことになります。それらを比べることによって、火星の環境がどう変化したかを知ることができます。
今回の探査目標となっている地点は、クレーターの縁にある「カラテーペ」という場所から7メートルほどしか離れていません。ローバチームは、ここまでローバを走らせて、数日間にわたって探査を行ったあと、クレーターの縁に戻る予定になっています。砂の混じったクレーターの中に降りるのは危険性が高いと判断されました。
地上での実験を通して、25度の傾斜がある岩でもローバが安全に上れることが実証されています。降りるコースはほとんどが傾斜20度以下なので、ローバチームは今回は安全にローバが下りられると考えています。

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